トクホと機能性表示食品の違いとは?
特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品は、どちらも健康への効果をうたうことができる国の制度。同じように見えますが、実は多くの点で違うのです。トクホと機能性表示食品の違い、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
国の許可か、企業の届出か
もっとも大きな違いは国の許可が必要かどうか。トクホは消費者庁の許可が必要。これに対して、機能性表示食品は消費者庁への届出だけで済み、許可は不要です。
トクホの許可には「数年」の時間と「億単位」の費用がかかります。一方、機能性表示食品は、提出資料に不備がなければ「届出から50日を超えない期間」に公表され、開発費用もトクホと比べて格段に小さくなります。
またトクホは、人がバンザイをしているような「許可マーク」を製品に貼付できます。業界による公正競争規約も整備されていて、「公正マーク」を貼付した製品もあります。
機能性表示食品にはマークはありませんが、製品パッケージの正面に「機能性表示食品」と記載していますので、すぐに気づきます。
安全性の確認で大きな違い
トクホの安全性は、内閣府食品安全委員会が審査します。申請企業が提出した試験結果や資料について、1年程度をかけて多数の専門家が厳しくチェックします。なかには問題点が指摘され、トクホとして断念するケースもあります。
一方、機能性表示食品は届出者(販売者)が安全性を確認します。販売しようとする製品の喫食実績やデータベース上の情報を用いて、安全性を確認するケースがほとんど。そうした情報が不足している場合には、届出者が安全性試験を実施して安全性を確認することになります。
効果の評価方法もまったく違う
トクホの効果は、「プラセボ対照二重盲検比較試験」によって評価します。これは、試験の参加者を2つのグループに分けて、一方のグループに販売しようとする製品を食べてもらい、もう一方のグループにはそうでない製品(プラセボ)を食べてもらって、効果に差が出たかどうかを見る方法です。
試験期間は原則、12週間程度以上。さらに、4週間以上の「後観察」期間を設定しなければなりません(「お腹の調子を整える」など短期間で行う試験は除外)。
これに対して機能性表示食品では、効果を評価するために次のどちらかの方法を用います。
- 販売しようとする製品を用いたヒト試験の実施。
- 研究レビューの実施。
ヒト試験の内容はトクホと同様。ただし、一部の機能性を除いて「後観察」は必須ではありません。
研究レビューは機能性表示食品だけに認められたもの。これは、データベース上の研究論文を収集し、販売しようとする製品や含有成分の条件に当てはまる論文を選び出して、総合評価するという方法です。2021年6月6日現在で公表されている4,093件の届出のうち、9割強が機能性関与成分に関する研究レビューです。
トクホのメリットとデメリット
では、各制度のメリットとデメリットを整理しましょう。
トクホの最大のメリットは、国が許可しているという安心感。特に安全性については、前述したとおり国が厳しい審査を行い、少しでも疑問が出れば許可されません。このため、トクホについては過剰摂取しない限り、深刻な健康被害は出ないと考えられています。
効果に関する研究データの信頼性も高いと言えます。消費者委員会で多数の専門家が試験内容や試験結果を厳しくチェックし、クリアできたものだけが許可されるからです。申請者による“ごまかし”は通用しにくいわけですね。
反対に、トクホのデメリットは何でしょう?
販売者にとっては許可までに時間がかかり、製品開発のコストが高くつくこと。そのコストは商品価格に反映されるため、消費者にも少し痛手ですね。
消費者にとって最大のデメリットは、許可された効果の種類が少ないこと。ほしい製品が見当たらないなど、製品選択の幅が非常に狭いことがトクホの大きな課題となっています。
機能性表示食品のメリットとデメリット
次に、機能性表示食品のメリットについて説明します。
届出制のため、製品の発売までにかかる時間が短くて済みます。安全性や機能性の証明はデータベース上にある情報を活用できることから、製品開発のコストも小さくて済みます。これらは販売者にとって大きなメリットです。
消費者のメリットは、なんと言っても効果の種類がバラエティーに富んでいること。現時点でトクホにはない「認知機能」「睡眠」「ストレス」「目のピント」「尿酸値」「冷え」など、新たな効果をうたった製品が続々と登場しています。
こうしたメリットがある半面、機能性表示食品にはデメリットも少なくありません。
最大のデメリットは、トクホと比べて安全面の信頼性が低いこと。特に、これまで私たちがほとんど食べたことのない新規成分については、十分に安全性が確認されていないケースもあります。たった1~2年の短期間に健康被害が報告されていないことを安全性の根拠としている製品もあり、この点は早急に改善すべき課題です。
トクホと比べて効果の信頼性が低いことも、デメリットの一つです。機能性表示食品制度は企業責任に基づく「性善説」に立ったもの。販売後に試験データの欠陥が見つかり、届出を撤回するケースも後を絶ちません。
もちろん、安全性の確認も機能性の評価も、トクホと同じレベルで行っている企業もあります。また、これらの問題点については少しずつ解消される方向にあり、今後は機能性表示食品の信頼性が向上すると考えられています。
トクホと機能性表示食品には違いがあることを理解できましたか?それぞれのメリットとデメリットを知って、あなたに合う製品を選んでくださいね。