メニューを閉じる
メニューを開く
  • 食・料理
  • 美容
  • カラダ
  • 食育
  • SDGs

温度を感じるセンサー「TRPチャネル」で温活?!

カラダ
YOKARE編集部
プロフィール画像
温度を感じるセンサー「TRPチャネル」で温活?!

最近まで神経細胞が熱や触覚を感知する仕組みは正確にはわかっていませんでした。
デビッド・ジュリアスとアルデム・パタプーティアンは温度と触覚を感知するタンパク質であるTRPチェネルとPIEZOイオンチャネルの発見、2021年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。
この2021年のノーベル生理学医学賞の対象となった「温度と触覚の受容体の発見」で注目されるようになったのがTRP(トリップ)チャネル。

TRP(トリップ)チャネルとは

TRP チャネルは、熱、寒さ、痛み、ストレス、視覚、味覚などのさまざまな感覚反応を担っており、さまざまな刺激によって活性化されます
TRPチャネルはヒトでは27種類あり、進化的・機能的特徴に基づき6つのサブファミリー(TRPC、TRPV、TRPM、TRPA、TRPP、TRPML)に分類されています。このうち、温度感受性を持つTRPチャネルは主にTRPV、TRPM、TRPAサブファミリーにまたがっており、現在10種類が知られています。

たとえば、辛味成分であるカプサイシンが刺激する「TRPV1」や、冷感を引き起こすメントールに反応する「TRPM8」などが代表的です。

温度感受性を持つTRPチャネル 活性化温度範囲 主な刺激因子 主な役割や特徴
TRPV1 43℃以上(高温) カプサイシン、酸性刺激(pH低下)、熱 辛味(唐辛子成分)感知、痛覚の伝達、炎症反応への関与
TRPV2 52℃以上(極度の高温) 機械刺激、熱 高温感知、痛覚と免疫応答の調節
TRPV3 31~39℃(温感) 温熱、植物由来化合物(カモミールオイルなど)、バニリン 温感受容、皮膚の温度感知、表皮バリアの調節
TRPV4 27~34℃(温感) 温熱、機械刺激、低張液 体温調節、浸透圧感知、血管機能の調節
TRPM8 25℃以下(冷感) メントール、低温、ユーカリオイル 冷感受容、体温調節、痛覚緩和
TRPA1 17℃以下(極度の冷感) アリルイソチオシアネート(わさび成分)、シナモンアルデヒド、冷温 刺激的化学物質や冷感の感知、痛覚伝達、炎症応答


TRPチャネルの働きは、「温活」にも活用できると期待されています。たとえば、体を温めるための食品やサプリメント、外部刺激を活用した温熱療法が挙げられます。カプサイシンを含む食品や、温感クリームを利用することで、TRPチャネルを活性化させ、体温調節や血流促進を図るなど。

TRPチャネルに着目した研究や商品

TRPチャネルに着目した研究や商品開発を進められています。

マンダンから発売のハッピーデオ ボディシート&フェイスシート、ギャツビー スペースシャワーペーパー

マンダムでは化粧品の機能や使用感の向上を目指して、皮膚における感覚刺激に着目。皮膚感覚センサーであるTRPチャネル(トリップチャネル)を用いた研究し、心地良い使用感を徹底追及するマンダムの独自技術「Kai-tech技術」を開発しています。「Kai-tech技術」により、もっと快適に感じるクール感を実現しています。

「ギャツビー スペースシャワーペーパー」は、2022年10月~2023年3月の若田光一宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションで初めて搭載されました。

ギャツビー スペースシャワーペーパー

ISS内では安全な環境を保つため、エタノールの使用は厳しく制限されています。Kai-tech技術をベースに、アルコールが使用できない環境でも清涼感を感じられる技術を開発し、エタノールフリーでも快適な心地よさを実現することに成功しました。

かゆみ止め成分もTRPチャネルのTRPV4の活性化を抑制

クロタミトンは、長い間かゆみ止めとして使われている成分ですが、かゆみを抑える詳細な作用機序は不明でした。
クロタミトンは、かゆみに関わる温度感受性を持つTRPV4の活性化を抑制することにより、かゆみを止めていると考えられます。
ノーベル賞受賞者デイビッド・ジュリアス博士の研究グループが世界で初めて温度の受容体を発見した当時の研究メンバーの富永真琴先生とムヒでお馴染みの池田模範堂の共同研究により解明したものです[※1]。

TRPV4を活性化が肌のバリア機能に作用

ポーラ・オルビスグループでも2007年から富永真琴先生と共同で研究を行い、皮膚における温度の受容体のはたらき解明に取り組んでいます。
皮膚の細胞ひとつひとつが温度を感じる能力を持ち、30度以上の温度が直接的に皮膚のバリア機能に作用することがわかりました。TRPV4は、30度以上の体温付近の温かい温度域で活性化し、バリア機能が保たれます。また、バナバ(オオバナサルスベリ)の葉から抽出したエキスにTRPV4 を活性化する作用があることも突き止めました。

肌の冷受容体であるTRPM8を活性化し、シミのシグナルを抑制

ナリス化粧品は、2018年に、シミの原因となるメラニン合成を促進するシグナルである「プロスタグランジンE2」を抑制する成分を発見し、特許出願しました。
プロスタグランジンE2の抑制は、肌の冷受容体であるTRPM8を活性化することで可能となります
「リノール酸メントール」と「カワラヨモギエキス」の複合成分により、表皮におけるTRPM8を活性化させることがわかりました。

カワラヨモギエキス

TRPチャネルは私たちの体がどのように外部環境を感知し、それに応じて反応しているかを理解する上で欠かせない存在です。また、その知見を応用することで、健康促進や疾病予防、さらには新たな治療法の開発にもつながる可能性があると期待されています。

参考資料

※1かゆみ止め成分クロタミトンの作用の仕組み|生理学研究所

SHARE