管理栄養士が教える!バリア機能を維持する60代からの腸を守る腸活ガイド

60代を迎えると、「便秘しやすくなった」「お腹が張る」「食欲が出ない」など、小さな体調の変化を感じる方が増えてきます。
その原因のひとつとして注目したいのが、“腸のバリア機能の低下”です。
60代以降は腸のバリア機能が弱まりやすい年代。食べ物を消化・吸収するだけでなく、体内への“異物の侵入”を防ぐ働きが、加齢とともにゆるみやすくなり、さまざまな不調を引き起こすことがあるのです。
60代からの腸の変化と、バリア機能を守るために今すぐできる腸活のポイントをご紹介します。
60代から腸のバリア機能が弱まりやすくなる理由
年齢とともに腸のぜん動運動(腸を動かして便を出す働き)が低下していきます。
これにより便秘やお腹の張りを感じやすくなり、腸内の老廃物が溜まりやすくなるのです。
また、食生活の偏りや運動不足、薬の影響も腸の状態に影響を与えます。腸内が善玉菌よりも悪玉菌や日和見菌が優勢になり、腸内フローラも乱れやすくなってしまいます。
さらに、腸の粘膜も徐々に薄くなっていき、細胞同士のすき間(タイトジャンクション)が緩むと、「リーキーガット」という“腸漏れ”の状態となり、本来なら排出されるべき有害物質や未消化のタンパク質などが腸から体内に侵入してしまうことも。
腸のバリア機能が落ちるとどうなる?
バリア機能が落ちると「リーキーガット」のリスクが高まり、慢性疲労・肌トラブル・アレルギー・炎症の原因になるとも言われています。
食べ物の栄養が十分に吸収されにくくなったり、薬やサプリメントの実感がわきにくくなる、感染症にかかりやすくなる、認知機能や精神面までも影響する可能性がでてくるのです。このように、腸の老化は全身の不調につながってしまいます。
腸を守る!60代からの4つの食習慣
腸のバリア機能を維持するためには、「粘膜を守る」「菌を育てる」「炎症を抑える」ことが大切です。以下のような食習慣を心がけてみましょう。
①粘膜を修復・保護する栄養素を摂る
ビタミンA、亜鉛、グルタミンが粘膜を守るには有効な栄養素です。
- ビタミンA
全身の皮膚や粘膜の保護に役立ち、腸の粘膜保護にも。
例)にんじん・かぼちゃ・ほうれん草など - 亜鉛
細胞の新陳代謝を促してくれるため、細胞の修復に。
例)牡蠣・ナッツ・大豆製品など - グルタミン
アミノ酸の一種で、たんぱく質が多い食品に含まれます。体を構成するアミノ酸の中でも多くの割合を占め、実は腸粘膜の再生にも役立ちます。
例)肉類・大豆・海藻など
これらを毎日の食事に少しずつ取り入れることで、腸の壁をしっかり保つサポートになります。
②発酵食品×食物繊維のW効果
納豆、ぬか漬け、味噌、ヨーグルトなどの発酵食品で善玉菌のエサを増やします。
さらに、野菜や海藻、オートミール、そばなどの水溶性食物繊維で腸内の菌バランスを整えましょう。
味噌汁+納豆ご飯の組み合わせのようにして、「菌を入れる+育てる」を意識した食事がおすすめです。
③オメガ3脂肪酸で腸の炎症予防
青魚、亜麻仁油、えごま油などにオメガ3脂肪酸は含まれます。
オメガ3脂肪酸は抗炎症作用があり、腸内の炎症やバリア機能の低下を防ぐサポートをします。
特に、亜麻仁油は熱に弱い性質のため、加熱せずそのままヨーグルトやサラダにプラスして摂ると◎
④よく噛んで胃腸に負担をかけない
胃腸全体の働きが低下しやすいため、よく噛んで食べることで、唾液の酵素が消化吸収を助け、腸を守る味方にもなります。そのため、柔らかいものばかりに頼らず歯ごたえのある食材も意識して取り入れ、唾液の分泌を促すことも大切です。
食事以外にも!日常でできる腸活
食事に加えて、以下のような生活習慣も腸の健康に良い影響を与えます。
①軽い運動で腸の動きを活性化
運動は腸のぜん動運動を促進し、便通の改善にもおすすめなので、ウォーキングやラジオ体操など、無理のない範囲で習慣化することが大切です。
②水分補給をこまめに
年齢とともに「喉の渇き」を感じにくくなるため、朝起きたらコップ1杯、トイレの後に、など意識的にタイミングを決めるなど水やお茶を飲む習慣をつけましょう。食事にも水分は含まれているので、飲料として目安は1日1.2~1.5リットルくらいが良いでしょう。
③腸と自律神経はセット。リラックス習慣を
睡眠やストレスも腸は大きく影響を受けます。湯船にゆっくり浸かる、朝日を浴びる、自然に触れるなど、リラックスできる時間をつくり体も心も休めてあげましょう。
小さな積み重ねが健康な腸に
年齢を重ねるごとに腸の力は少しずつ衰えていきますが、少しの小さな積み重ねが、より長く健康な腸を保つことにつながっていきます。始めることに「遅い」はありません。人生100年時代、健康の土台として“腸のバリア機能”を守る食生活を一緒にスタートしましょう!
最近では、スマート乳酸菌にもリーキーガット(腸もれ)改善効果が確認されました。機能性表示食品で腸のバリア機能を改善できる日も近いかもしれません。