カラフルな野菜「スイスチャード」の栄養とレシピ
赤、ピンク、オレンジ、黄色のカラフルな茎を持つ野菜「スイスチャード」。そんな彩り豊かなカラフルなスイスチャードはレインボーチャードとも呼ばれています。日本ではまだなじみのない野菜ですし、家庭の食卓に上ることもあまりないかもしれません。 しかし、それぞれの色の素となる色素にも、人の健康に対する保健効果があることや、「スイスチャードのおにぎり」を筆頭に、新しい和食への利用などで注目を集めています。 国内でも手に入りやすくなったスイスチャード。ここでは、カラフルな野菜の未来についお話しします。
スイスチャードって何?
スイスチャードとは、ヒユ科の野菜で、原種はチャードといいます。古代ギリシア・ローマ時代から、薬草としても重宝しています。日本には17世紀前後に伝わったと考えられています。 ほうれんそうに似た味で、よりクセがなく甘みがあります。別名をシー・スピナッチ(海辺のほうれんそう、sea spinach)と言います。
スイスチャードの収穫時期
日本の四季の変化にも柔軟に適応して、通年の栽培が可能ですが、寒い時期は生育が遅いので、収穫に注意が必要です。
スイスチャードの特徴
スイスチャードを見たことがある人はわかると思いますが、最大の特徴は茎の色の豊富さ。
目にも鮮やかな装飾的な野菜で、葉の柄が白、黄、橙、紫、赤色など、眺めるだけでも美しく、料理に花を添える食品です。 スイスチャードに含まれる赤や紫色の色素はベタシアンニン、黄と橙色はベタキサンチンという物質です。両者ともベタレインという色素のひとつです。野菜に含まれる色素には、ほかにもカロテノイドという色素や、トマトの赤色に含まるリコピンなどがあります。
スイスチャードの色素と栄養
白、黄、橙、紫、赤色などの美しい色をした野菜や果物や花などには色素が含まれています。 色素は、野菜や果物、花などの植物の色合いを出している成分です。 色素は、野菜の自然の料理に彩りを加えます。 私たちにとってはその植物の印象を決める役割を持っていますが、植物にとっては自身を守るための物質でもあるのです。 つまり、極端な暑さや寒さに耐えて生育してきた証でもあるのです。 身を守るために生成された成分が、抗酸化物質として健康に取り入れているのです。
現在は、植物の生育が極限環境でなくても、容易に発色できる品種改良や栽培法が検討されています。生産は海外だけでなく、日本の広い範囲で行われています。
スイスチャードに含まれる色素の正体
スイスチャードに含まれる赤や紫色の色素はベタシアンニン、黄と橙色はベタキサンチンという物質は、まとめてベタレインと呼ばれます。 ベタレインは、ベタイン系色素のひとつです。ベタレイン系色素は、限られた植物しか産生しないと考えられている貴重な色素です。植物のベタレインには、殺菌効果があり、かつて薬草に用いられた理由ではないかと考えられています。
スイスチャードに含まれる色素「ベタレイン」の効能・効果
スイスチャードに含まれるベタレインは、脂質の酸化を抑制する抗酸化作用で注目されています。ベタレインの脂質の酸化を抑制する抗酸化作用は、人の健康においても機能評価の報告がされています。
ベタレインはビタミンCより優れた抗酸化作用?!
抗酸化作用の話によく出てくるビタミンCよりも、ベタレインの方が作用に優れているといわれています。
未熟のスイスチャードでも抗酸化作用はある?!
未熟の白いスイスチャードにも成熟したスイスチャードにもベタレインによる抗酸化作用があると言われています。 研究の過程で、成熟したスイスチャードは抗酸化作用にベタレインの発色が必要です。 しかし、未熟のスイスチャードの抗酸化作用には、発色が関与していないことが分かっています。 つまり、未熟の白いスイスチャードには、発色していないベタレインが存在していて、抗酸化作用が期待できるということです。 抗酸化作用を期待して購入するときは、成熟している白いスイスチャードは、抗酸化作用が他の色のものよりも弱いことを自覚しておかなければなりません。 草丈20~30cmのスイスチャードは、成熟している本葉期として市販されていいます。
スイスチャードはマルチ?!
「色のついた野菜を食べましょう」というフレーズを目にしますが、同じ色なら同じ色素というわけではありません。 同じ色でも違った色素を持つ野菜をレパートリーに加えておく必要があります。 スイスチャードは、2種類のベタレインと葉の緑色素クロロフィル、1束に3種類以上の色素を含み、マルチな機能を持つ野菜なのです。
スイスチャードを使った料理のレシピ
スイスチャードの栄養価
スイスチャードには、色素以外の抗酸化物質であるビタミンEとCも豊富に含まれています。さらに、ビタミンKの含有量が多いのも特徴です。ミネラルに関しては、鉄、カリウム、マンガンが豊富です。そして、食物繊維の補給源にも優れている野菜です。 調理の際には色素の失活を避けなければなりません。ベタレインは、水溶性の物質で酸や光に影響を受けにくいですが、熱には弱いという特徴があります。 スイスチャードの味は、茹でたり炒めたりすると良くなりますが、加熱するとベタレイン以外の抗酸化物質も失活してしまいます。もし、加熱するならスチームの方がよく、できるだけ少ない熱エネルギーで満足できる風味が出る加減をおさえておきましょう。 ゆず塩でもかけて生で食べるのが良いと思いますが、漬けて食べることも良いでしょう。スイスチャードをどんなレシピで食べるかアイデアを練るのも楽しめます!
スイスチャードおにぎり
出典:https://www.instagram.com/kukat_ja_linnut/(@kukat_ja_linnut)
スイスチャードパスタ
出典:https://www.instagram.com/naoko_iwanaga/(@naoko_iwanaga)
スイスチャードサラダ
出典:https://www.instagram.com/masami192/(@masami192)
カラフルな野菜の未来
これまでスイスチャードを用いて、色素の保健効果を説明してきました。 スイスチャードをオススメしているのは、一種類の野菜で複数の色素を摂ることができるということです。カラフルでマルチ機能な野菜にアンテナをはるのも、新しい野菜の選び方です。
スイスチャードの他にカラフルな野菜は?
スイスチャード以外にカラフルな野菜としては、「トマト」などが思い浮かびませんか。
現在のトマトは、基本の赤色以外にも、黒、黄、緑色ものが市販されて、ずいぶん変わってきたと思います。 赤色やピンク色のトマトには、リコピンという色素が含まれています。 リコピンに加えて、黒色のトマトにはアントシアニンが、黄色のトマトにはベータカロテンという色素が含まれています。 緑色のトマトにはリコピンはありませんが、他の栄養素が劣っているわけではありません。 スイスチャードは、異なる色でも同じ品種ですが、トマトは色が違えば品種も異なることがあり、その品種も日本国内だけでも60種類もあります
- 赤色のトマトは、甘みが強く、皮が薄く、みずみずしい。
- 黒色のトマトは、爽やかな甘酸っぱさで、皮はやや固く、とてもみずみずしい。
- 黄色のトマトは、さっぱりした甘さで、青臭さがない。
- 緑色のトマトは、すっきりとしたほのかな酸味で、肉厚で食べごたえのあるサクサクとした食感で、青臭さがない。
トマトに、カラフルなマルチ機能野菜として期待するのは、食べるまでの下処理が簡単だということです。 ミニトマトは洗うだけで料理としてほぼ成立します。 それは、酸素に触れることで、
- 体の中での活性をロスしてしまう
- トマトに含まれる抗酸化物質を守る
ということから個体のスモール化が確立しているからです。 品種改良が進み、野菜のスモール化が進んだり、芽キャベツやスプラウトがカラフルになる日が来るかもしれません。