鰹節の種類と旨味の秘訣。わざわざ鰹節にカビ付けする理由は?
和食料理には、基本となる五法・五味・五色・五適・五覚があります。
味覚を意味する五味は、甘味・酸味・辛味・苦味・塩味の五つの味のことを指しますが、料理の「おいしさ」には加えて旨味が必要です。
鰹節はこの旨味を出すので、鰹節は昆布と一緒に出汁を取るなど和食料理に欠かせない存在です。 今回は旨味を出し、料理を美味しくする役割を果たす「鰹節」について種類や使い方などを紹介します。
鰹節の作り方
水揚げされたカツオを三枚におろします。一匹のカツオから4本(背節2本・腹節2本)の鰹節ができます。
鰹節ができるまでの流れ
- 1時間程、釜で煮ます。 釜から取り出して骨・皮・ウロコ・皮下脂肪・汚れを取り除きます。
- 焙乾(ばいかん)といって、燻して乾かす作業を繰り返します。内部の水分を蒸発させて腐りにくくします。乾燥を終えた カツオ節の水分は28%ぐらいまでに減少しています。この時点で出来上がった鰹節を「荒節」と呼びます。
- 荒節の表面のタール分を削り、整形し、浸み出す脂肪分を取り除いたものを、カビ室に入れます。
- 最初についたカビを「一番カビ」と言い、カビがついたら「日乾」します。 「二番カビ」以上ついたカビ付きの鰹節を「枯節」といいます。「三番カビ」以上つけたものを「本枯節」と言います。
本枯節になると含有水分量は12〜15%となっていて、重量も水揚げされた時の1/6くらいになっています。
鰹節のカビをつける理由
鰹節を作る過程で何回も繰り返しつけられるカビ。鰹鰹節のカビは何のためにつけられるのでしょうか。
鰹節につく優良種のカビの働き
- カビ付けによって付着したカビがカツオ内部の水分を吸い上げ、均一に乾燥させることができる
- カビ付けの際に生成された旨味成分や100種類以上の化合物によりカツオの香りが増す
- 脂肪を水溶性の脂肪酸に、たんぱく質をアミノ酸に分解し、旨味成分を増やす
- カビが脂肪分解酵素を分泌して中性脂防を分解し、出汁をとったときに濁らずに透明になる
- カビの抗酸化作用により酸化しずらい
鰹節のカビは優良種のカビです。出来上がった鰹節は水分量も少なく、腐敗する心配はありません。優良種のカビもまた、水分の少ない、乾燥したところにしか発生しません。 湿度が多く、気温の高いところに置いておかない限り、腐敗しないので、保存の仕方もそれほど難しくはありません。冷蔵庫の中で保存しておくと良いでしょう。
鰹節の旨味の正体
料理の美味しさを引き出す「旨味成分」の代表的な物質は、グルタミン酸、イノシン酸、ゲアニル酸などが挙げられます。 カツオ節にはイノシン酸とおよそ20種類のアミノ酸が含まれています。旨味成分の主成分であるイノシン酸とアミノ酸によって旨味が相乗効果により、カツオ節の旨味を出しています。 また昆布にはグルタミン酸が含まれていて、昆布と鰹節を合わせて出汁をとることで、相乗効果が生まれます。椎茸の旨味成分はグアニル酸で、椎茸も出汁をとる際に使われる原料です。
鰹節の仲間
カツオ節はカツオを原料にして作られますが、カツオ以外の魚でも「節」は作られています。 鰹節以外の節は、雑節(ざつぶし)と言われます。
- 宗田節(ソウダブシ)
ヒラソウダ、マルソウダ、スマソウダが原料。関東の蕎麦屋で使われています。味が濃厚かつ色がつく。 - むろ節
ムロアジが原料。中部地区のきし麺の出汁に使われます。鯖よりもさっぱりし、冷めても臭みが出ない。 - 鯖(サバ)節
ゴマサバが主な原料。そば・うどんのかけ汁に使われます。冷めると臭みが出る。 - 鰯(イワシ)節
カタクチイワシが主な原料。苦味や臭みがあり味噌汁に使われます。 - 鮪(マグロ)節 キメジ(キハダマグロの幼魚)が主な原料。荒節が主体だが、鰹節と同様にクセがない味で高級料理に使われる。
ご家庭でカツオ節を削ってみては?
ビニール袋でパッケージされた鰹節を使っているご家庭がほとんどになっているでしょう。ビニール袋の鰹節は、荒節の周囲を削り取った節を原料にしています。酸化を防止するように工夫はされていますが、ご家庭で本枯れ節(本節)の香りや旨味も楽しんでみてはいかがでしょうか。本枯れ節(本節)はおよそ120日間も手間暇をかけて作られていますので、試してみる価値はあるでしょう。