2021.12.23

米ぬか（米ぬかエキス）

成分の話

YOKARE編集部

玄米を精米にするときに出る米ぬか（米糠）。長い間、その用途は米油や飼料・肥料などに限られてきました。しかし、近年の科学的な研究により、米ぬかに含まれる成分の有効性が解明され、健康・美容素材として注目を集めています。

米ぬかとは？

米ぬかは米の一部分です。収穫された米は殻が付いた「籾（もみ）」の状態。殻を取り除いたものが「玄米」ですね。玄米は薄い茶色で、健康に気を遣う方に人気があります。

玄米の表面を削ったものが「精米」。玄米を精米にするときに出る粉（副産物）が米ぬかです。米ぬかは重量ベースで玄米の5～10％を占めます。

詳しく説明すると、米ぬかは米の胚芽と糠層（果皮・種皮・糊粉層）を合わせたもの。残った胚乳と呼ばれる部分が、私たちが日頃の食事で口にする「ご飯」なのです。

裾野広がる米ぬかの用途先

長い間、米ぬかは主に米油の原料、糠漬け（糠床）、肥料・飼料に使用されてきました。

米油は米ぬかから搾油され、ロウ分や酸化した油などを取り除いて精製されます。ほかの食用油と比べて酸化しにくく、クセのない風味のため、料理に利用しやすいというメリットがあります。

糠床が広がったのは江戸時代。白米を食べる人が増え、米ぬかが大量に発生するようになったことから、その有効利用が進んだと伝えられています。

近年では、米ぬかに含まれる栄養成分や機能性に着目し、米糠エキスを用いた化粧品などが登場。シャンプー・リンス、洗顔料、ボディソープ、ヘアケア商品、メイクアップ化粧品などに使用されています。

食用では、健康面から家庭料理に使用する方も増えています。さらには、米ぬかを原料に使用した飲料や加工食品、米ぬかエキスを配合した健康食品も注目されています。

世界で年間5,000トンほど発生

米ぬかの原料である米は世界各国で栽培されています。精米ベースで見ると、世界の生産量は年間約4億8,000トンに上ります。

主な産地は中国・インド・インドネシア・バングラデシュをはじめ、ベトナム・タイ・ミャンマー・フィリピンといった東南アジア諸国、そして日本などです。

日本国内の米の産地としては新潟県・北海道・秋田県が有名。このほか、山形県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県が続きます。

精米の副産物である米ぬかは、世界で年間5,000トンほど発生するとみられています。

米ぬかの栄養的な特長
ビタミン、ミネラル、食物繊維がぎっしり

米ぬかにはビタミン、ミネラル、食物繊維がたくさん含まれています。

ビタミン類はビタミンB1、ナイアシン、ビタミンE。ミネラル類はリン、マグネシウム、鉄が豊富。食物繊維は精米の数十倍の含有量です。脂質やアミノ酸類も豊富に含んでいます。

実は私たちが日頃口にしている白米は、ビタミンやミネラル、食物繊維などの大半を削り取ったもの。とてももったいない話ですね。

このほか米ぬかには、フィチン酸、イノシトール、フェルラ酸、植物ステロールなどの成分が含まれています。

穀類や豆類に含まれるフィチン酸はリン酸の貯蔵物質。イノシトールは水溶性ビタミン様物質で、人の体内でも合成されます。フェルラ酸はイネ科植物の細胞壁に含まれるポリフェノール。また、植物ステロールは脂質の1種です。

米ぬかの効果・効能
血圧降下作用や整腸作用など

古くから米ぬかは健康に良いと言われてきましたが、近年の科学的な研究によってさまざまな効果が確認されています。

主なものを挙げると、血圧を下げる作用、便通を改善する作用、脂質異常症に対する作用、皮膚の炎症を抑える作用などが期待されています。

京都大学の研究グループは民間企業との共同研究で、米ぬかのタンパク質を酵素で分解して得られるペプチド混合物に、血圧降下作用があることを突き止めました。試験では、高血圧症モデル動物の「高血圧自然発症ラット」に米糠由来のペプチド混合物を継続的に与えました。その結果、血圧の上昇が抑制されることが確認されたと報告しています。

鹿児島大学の研究グループでは、米ぬかの外層を配合した飼料をラットに与え、糞便排泄の状況などを調査。その結果、糞便排泄が増え、糞便中への脂質排出も増加し、腹腔内脂肪の減少が認められました。これは、米糠の外層に多く含まれる不溶性食物繊維の働きと考えられています。

海外からも、米ぬか抽出物の脂質異常症に対する効果（ラット試験）などが報告されています。また、米ぬかに含まれるフェルラ酸には抗酸化作用や肌への効果があると指摘され、さらなる研究の進展が期待されています。