マシュマロウ
健康に役立つアサイ科植物・マシュマロウ
ビロードのような肌ざわりがするアサイ科植物のマシュマロウ。「お菓子の『マシュマロ』はよく知っているけど…」と思う方も多いことでしょう。日本では馴染みが薄いものの、ヨーロッパではマシュマロウは古くから薬用植物として親しまれてきました。私たちの健康の維持・増進に役立つマシュマロウについて解説します。
お菓子の「マシュマロ」との関係は?
マシュマロウ(和名:ウスベニタチアオイ)は、アオイ科タチアオイ属の多年草です。成長すると、1~2メートル近い背丈となります。
夏から初秋にかけて薄いピンク色の花を咲かせ、私たちの目を楽しませてくれます。葉は柔らかい細かな毛が密生していて、ビロードに似た感触があります。このために「ビロードアオイ」とも呼ばれています。
ところで、お菓子の「マシュマロ」と名称がそっくりですよね。古い時代に、マシュマロウの根を「マシュマロ」の原料として使用していたことが、菓子「マシュマロ」の名称の由来とされています。現在は「マシュマロ」を製造する際にゼラチンを使用しますが、当時は粘液性のあるマシュマロウの根を使っていたわけです。
ヨーロッパではおよそ2,000年前から薬用植物として利用
私たち日本人にとっては、お菓子の「マシュマロ」に比べて、植物のマシュマロウはそれほど馴染みがありません。しかし、原産地のヨーロッパでは、古い時代から薬用植物として利用されてきました。
というのも、およそ1,000種類もあるアサイ科植物のなかでも、マシュマロウは特に薬効が強いと評価されてきたからです。このため、ヨーロッパを中心に2,000年ほど前から薬草として親しまれ、利用されてきたと伝えられています。
マシュマロウは根だけでなく、葉も花も利用できます。花はサラダに用いると、栄養価の向上に加えて、料理の見た目も映えます。葉は茹でて、スープなどの具に使用します。
マシュマロウの根や葉、花を乾燥させて、お茶(ハーブティー)として飲用する方も多いです。さらに、根を煮て軟膏・湿布の材料として利用することもできます。
原産地はヨーロッパ、湿り気のある土壌に自生
マシュマロウはヨーロッパが原産地。沼地や湿地帯などに多く自生しています。日当たりが良くて、湿り気のある土壌を好みます。
「湿地」を意味する英語の「marsh」と、アサイ科植物のマロウ「mallow」から、マシュマロウと呼ばれるようになったと言われています。
マシュマロウの栄養成分
ペクチン・タンニン・アスパラギン酸が豊富
マシュマロウに含まれる主な成分として、ペクチン、タンニン、アスパラギン酸などがあります。
ペクチンは、植物の細胞壁を形成しているコロイド性の多糖類で、食物繊維の1種。ほかの成分と結合して細胞をつなぐ役目を果たしています。一般的には、コレステロール値を低下させる作用や、お腹の調子を整える作用があるとされています。
タンニンはポリフェノールの1種。抗酸化力が強く、コレステロールの酸化を防ぐ作用が報告されています。また、肌を守る作用も確認されています。タンニンは緑茶やワインなどにも豊富に含まれています。
アスパラギン酸はアミノ酸の一つ。名称からわかるように、アスパラガスに多く含まれています。私たちの体内でエネルギー・窒素の代謝に関与することが知られていて、エネルギー源として利用されやすい栄養素です。
のどの痛み、胃のムカムカなどに対する作用
マシュマロウの健康への効果として真っ先に挙げられるのが、気管支に対する作用です。気管支の粘膜を保護し、炎症を抑える効果があります。のどが痛い、痰(たん)がからむなど、のどの調子が気になる場合に、マシュマロウをお茶にして飲むことで症状を緩和できると言われています。
お茶として利用する場合には、乾燥させた根や葉を使用します。マシュマロウは粘液性のため、時間をかけて熱湯で煮出すと、とろみが出てきます。
食べ過ぎて胃がムカムカする場合に、マシュマロウはその症状を抑え、胃の状態を良好に保つ作用があると報告されています。
このほか、腸内環境を整える作用もあり、便通が気になる方にも適しています。
鑑賞用植物としてもオススメ、夏場にピンク色の花を楽しもう!
現在、販売されているお菓子の「マシュマロ」は、水飴・砂糖・コーンスターチ・ゼラチンなどが主な原材料であり、今日では植物のマシュマロウとは距離感があります。
一方、マシュマロウには、ここまで見てきたように健康に役立つ成分が豊富に含まれていて、ハーブティーや食材として利用されています。
鑑賞用として育ててみるのもオススメです。夏から初秋にかけて開花し、薄いピンク色のかわいらしい花を楽しむことができます。寒さにも強く、育てやすいことも魅力です。ただし、湿り気のある土壌を好みますので、乾燥しないように注意してくださいね。