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貧困率の高い日本の子どもを救う「子ども食堂」。子ども食堂が始まったきっかけと現状

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YOKARE編集部
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貧困率の高い日本の子どもを救う「子ども食堂」。子ども食堂が始まったきっかけと現状

一時、メディアでも多く取り上げられ話題となったことで、「子ども食堂」という名前だけは聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?子ども食堂が実際にはどういう活動をしているのかはあまり知られておらず、漠然としたイメージによる誤解も多いのが現状です。

厚生省「国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率(※1)は、2012年は16.1%、2016年は15.7%となっています。2016年の調査で貧困率は若干減少しましたが、7人に1人の子どもは相対的貧困という状況です。また、大人が一人の世帯では相対的貧困率が50.8%(2016年)となり、シングルマザーやシングルファザーでの家庭で高くなることが伺えます。

(※1)相対的貧困とは
「所得の中央値の半分を下回っているか否か」です。相対的貧困の等価可処分所得は122万円以下、4人世帯で約250万円以下(2015年)です

こうした中で注目を集めたのが「こども食堂」です。

子ども食堂とは

子ども食堂とは、地域の子ども達に低額や無料で食事を提供している場です。子ども食堂の運営は、企業やNPO法人、個人などになりますが、そのほとんどが地域のボランティアの協力によって成り立っています。開催日数は週に1回~月に1回など、運営のスタイルもさまざまです。

子ども食堂の始まり

2012年、東京都にある「気まぐれ八百屋 だんだん」が発足となっています。そこから次第に拡がり、子ども食堂は2019年には全国で3,700か所を超える施設数となりました。

子ども食堂の目的

主に以下のような目的で運営されています。

貧困家庭の救済

貧困が原因で栄養のある食事を摂れない家庭や、一日に1~2食しか食事を摂ることができない家庭があります。このような家庭では、給食以外の食事が満足に取れていないことが多いのです。満足に食事が取れないような貧困家庭を救済するために、低額や無料で健康的な食事を提供しています。

孤食の子どもの居場所づくり

近年は核家族の増加に加え、共働き家庭やシングルマザーの家庭などで、親が仕事で不在となり、子供が一人で食事を摂っているケースも少なくありません。このように一人だけで食事を摂っていたり、家族がバラバラの時間に食事を摂っていたりする状態の事を「孤食」と言い、孤食は誰ともコミュニケーションを図れない状態で、精神面にも負の影響を及ぼすと考えられています。

孤食の子ども達が、一人でも安心して来られる場所として子ども食堂は重要な場所となっています

子どもと大人の繋がり

子ども食堂は子ども一人や親子での参加はもちろん、なかには一人暮らしのお年寄りの参加ができるような場所もあります。普段接することがないような子どもと大人が一緒になり、繋がりを持つきっかけとなります。

地域のコミュニケーション

ボランティアスタッフには、地域住民の他に学生などが参加しているケースも多く、利用者も含めた地域のコミュニケーションの場としての役割も担っています。今までは年配の運営者やボランティアが多かったのですが、学生など若い世代の参加で、子ども自身にとっても兄弟に近い存在ができ、より気軽に利用しやすい場となっています。
食を通じて参加される地域の人たちとのつながりが芽生え、社会性を身につけることができます。

子ども食堂の活動とは

子ども食堂は、貧困家庭の親子や孤食の子どもに食事を提供するところとして知られていますが、実は食事を提供する以外にも多くの活動が行われています。

子ども食堂は、食育の観点からも重要な存在になっています。孤食が珍しくない昨今、誰かと一緒に食事をする「共食」の機会の提供や、食文化の継承なども行っているところがあります。これは食育の観点からも重要で、子ども食堂がただ食事を提供する場だけではなく、食を通して心の発達に繋げることを目的として積極的に行っています。

さらに、子ども食堂は、自習の場所としたり、低額で勉強を教えたり、学習支援の取り組みを行っているところもあります。このような場合、国や地方公共団体の支援の対象となっている事もあります。

子どもの食堂の今後の課題

全国に3,700か所以上の子ども食堂が存在することから、子どもが安心して通うことができる場所として、今では必要不可欠なものとなっています。しかし、まだまだ子ども食堂は課題が多いのが現状です。ここからは、今後の課題について説明していきます。

食材や資金

食事に使う材料や資金は、地域の商店からの食材の援助や、地域住民からの寄付により賄われています。最近ではクラウドファンディングで資金を集める団体もいますが、全体的にはまだまだ足りていない状況です。

衛生面

飲食店では保健所への届け出や営業許可などの申請が必要です。しかし、子ども食堂では必ずしも必要というわけではなく、子ども食堂のある県や市などにより決まっています。調理をする以上、衛生管理には十分注意しなければなりません。

場所の確保

調理や飲食できるスペースが必要な為、場所の確保が難しい状態です。企業や飲食店などに使用していない曜日や時間帯などで、場所の提供を呼びかけているケースも多々あります。しかしながら年々子ども食堂の需要は増えており、場所の確保が追いついていません。

人材

子ども食堂は賃金の発生しないボランティアで成り立っており、なかなかスタッフの人材確保が難しい状況です。また、子ども食堂の活動は食事の提供だけではない場合も多く、イベント活動としてのスタッフの確保も必要となってきます。

大人の貧困

「子どもの貧困」が問題として、子ども食堂がここまで大きく広がってきました。しかし、問題なのは子どもだけではなく、その親である「大人が貧困である」ということ。大人の貧困問題を変えなければ、解決しないということです。最近ではワーキングプアと呼ばれる人も多く、働いているにも関わらず貧困である状態の人が多くなっています。

現在、新しい取り組みとして「大人食堂」という場所を提供している団体もあります。そのように、大人も相談できる場所が必要な時代になってきているのです。

私たちにできること

無料や低額で運営している子ども食堂では、食材、寄付金、ボランティアスタッフなど、様々なものが不足しがちです。食材や寄付金としての援助など、私たちにできることはいろいろあります。しかし、その子ども食堂がどのような支援を求めているのか、事前に調べ、知ることが重要です。支援する際はあらかじめ連絡するのも忘れてはいけません。ボランティアスタッフとして参加したい場合は、募集している団体や施設を確認し、そこでの子ども食堂の目的を十分理解したうえで参加することが重要です。

子ども食堂は、本当に必要としている人と実際に利用している人にギャップが生じている事も少なくありません。そのような場合、本当に必要としている人が利用しやすいような工夫が必要です。子ども食堂は、決して貧困家庭だけが利用するだけの場所ではありません。貧困家庭を支援する目的で発足した団体もあれば、誰でも気軽に参加してほしいというところもあります。
貧困家庭のみが利用する場所であるイメージが強い為、子ども自身が周りの目を気にしたり、親である大人も支援が必要であるにも関わらず、利用するのに抵抗があったりする人もいます。利用したい人が利用できなければ本末転倒。その為にも、子ども食堂に対する正しい知識と理解が必要です。

参考資料
平成28年 国民生活基礎調査の概況
平成24年 国民生活基礎調査の概況

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