腸内環境を整える食物繊維とは?水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いとは?
大腸がんのリスクを下げ、生活習慣病の予防のためには腸内環境を整えることが大事とされています。そこで注目されてきたのが第6の栄養素と言われている「食物繊維」です。食物繊維とは消化酵素によっても消化・吸収されない成分の総称のことです。お腹の調子を整え、便秘解消に大きな役割を果たしています。 この食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類あり、その特徴やメリットが違います。 今回は、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の違いとそれぞれが多く含まれている食品を紹介します。
食物繊維とは
お腹の調子を整え、便秘解消に大きな役割を果たしているのが食物繊維。昔は、体内で消化されない食物繊維は、役に立たないものだと考えられてきました。後になって有用性が分かるようになり、現在では、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素に続いて、「第6の栄養素」と言われています。 食物繊維とは、消化酵素によっても消化・吸収されない成分の総称のこと。英語ではdietary fiberと呼ばれています。 食物繊維は体内に吸収されずに通過します。 食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、いずれか一方ではなく、両方をバランスよく摂取することが大切です。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の特徴
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、水に溶けやすく、腸内でジェルのような状態になるのが特徴です。
水溶性食物繊維を多く含む食品
- 熟した果物
- 海藻
- きのこ
- イモ類
水溶性食物繊維を含む野菜
鍋で煮たときに、煮くずれしやすいのが特徴です。
- 人参
- 大根
- 玉ねぎ
- トマト
- キャベツ
- ほうれん草
- じゃがいも
- 里いも
- 長いも
水溶性食物繊維を摂取することのメリット
血圧を下げる
腸内でナトリウムイオンとカリウムイオンの反応が起き、ナトリウムを一緒に排出する作用が発生します。ナトリウムが排泄されることで血圧が下がり、生活習慣病の予防につながります。
コレステロールの吸収を抑制する
吸着性があるため、コレステロールを原料とする胆汁酸に吸着し、体外に排泄します。
血糖値の上昇を防ぐ
粘着性が高く、ゆっくりと胃から小腸へ移動するため、食べ過ぎを未然に防ぎます。ブドウ糖の吸収がゆるやかになるので、血糖値の急激な上昇を抑えます。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維という名前の通り、水に溶けないタイプの食物繊維です。水に溶けずに、そのまま消化器官を通過します。 野菜などに多く含まれていて、ザラザラした食感が特徴です。
不溶性食物繊維を多く含む食品
- 穀物
- 熟していない果物
- こんにゃく
- 豆類
- きのこ
- ココア
- 海藻
不溶性食物繊維を含む野菜
鍋で煮たときに、煮くずれしにくいのが特徴です。
- れんこん
- ごぼう
- たけのこ
- ふき
- セロリ
- ブロッコリー
- とうもろこし
不溶性食物繊維を摂取することのメリット
便秘を予防する
不溶性食物繊維は、水分を吸収することで容量が増えて、腸の運動を活発にさせます。それによって便の量が増え、排便の回数が適正になることで、身体に有害な農薬や食品添加物が排出されやすくなります。
大腸がんを予防する
近年大腸がんが急増している理由に、食生活の変化があげられます。欧米型の食事をする機会が増え、食物繊維の摂取量が減ったため、 腸の病気が多くなってしまいました。食物繊維は腸の中で善玉菌の栄養になるため、大腸がんの発生を減らすという研究結果が出ています。
肥満を防止する
不溶性食物繊維を食べる時には、咀嚼の回数が増えます。たくさん噛むことにより、つい食べ過ぎてしまうことを防ぎます。不溶性食物繊維は、胃の中に長く滞在することもあり、満腹感が継続しやすいのもメリットです。
食物繊維の摂取量の理想と現実
食物繊維の理想の摂取量は、成人男性で1日あたり20g以上、成人女性で18g以上となっています。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方をバランスよく摂取するのが理想です。 かつて日本の食卓は食物繊維を多く含むもので成り立っていました。しかし食生活の欧米化に伴い、食物繊維の摂取量は著しく減ってきています。2010年の食物繊維摂取量は、1950年に比べてなんと約半分です。 加えて、国民健康栄養調査の結果によると、現在あらゆる年代と性別の中で10代~40代の女性の食物繊維摂取量が特に低いとのこと。理想とされる目標量の7割程度の摂取量となっています。
【食物繊維の1日あたりの目標摂取量】
- 成人男性…20g以上
- 成人女性…18g以上
食物繊維の摂取量を増やす方法
食物繊維の摂取量は、特別難しいことをしなくても、調理方法や食べ方を少し変えるだけで簡単に増やすことができます。以下のような方法を試してみてください。
- 朝食に食物繊維(オーツ麦、ナッツ、ドライフルーツなど)を豊富に含んだシリアルを食べる。
- 野菜や果物を皮付きのままで食べる(農薬の少ないものを選びましょう)。
- 白米を大麦や玄米入りのお米に変える。
- パンやパスタを購入するときに全粒穀物のものを選ぶ。
- おやつは、チョコレートやスナック菓子ではなく、種子やナッツを選ぶ。