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ゴールデンエイジでの運動機会損失が及ぼす影響

食育
倉持江弥
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ゴールデンエイジでの運動機会損失が及ぼす影響

コロナ禍になってこれまで以上に運動機会が少なくなってしまいましたが、これまでも子供の運動能力低下は問題にされてきました。2019年12月にスポーツ庁から発表された「令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査(※1)」によると、全体的に数値が低下しており特に運動をしていない子としている子の差が顕著に大きかったと報告されています。子供の運動機会が少なるとどんな影響が出てくるでしょうか。

ゴールデンエイジについて

まず、正しい発育発達を促す上でゴールデンエイジ理論をひもといていきましょう。ゴールデンエイジ理論は徐々に見直されてきておりますので、理論に惑わされずに子どもにとって何が大切かという根本を知るようにしましょう。

ゴールデンエイジとは

ゴールデンエイジ理論とは簡単にいうとスキルの習得や運動神経の発達に適した時期を逃さないようにしましょうというもの。1928年に人類学者のスキャモンが唱えた発育曲線が元になっていると言われています。

神経系器官の発育が著しいと言われる子供の頃、特に9〜12歳の時期に神経器官の量がほぼ成人レベルに達するので複雑な運動もこの頃に習得するのがベストであるという考え方です。 いろいろな誌面でも紹介されることもありご存知の方も多いのではないでしょうか。ただし、このゴールデンエイジの考え方も少しずつ変わってきているので先に紹介させてください。

ゴールデンエイジの落とし穴

現在、いわきスポーツクラブやドームアスリートハウスのアカデミー部門でアドバイザーを務める小俣氏によると、そもそもゴールデンエイジ理論の元になっているスキャモン博士の研究はスポーツのための研究ではなかったということ。そして、神経の量だけにフォーカスしていて「神経の質」を考慮に入れていないということです。(「スポーツ万能」な子どもの育て方やり抜粋) 神経の質というと難しいように聞こえますが、運動の感覚は人それぞれなので体を自在に操る能力やコツをつかむことが大切ということです。

これはいくら神経の量が増えたところで、「跳ぶ」「走る」「投げる」といった基礎となる運動ができないとなかなか動きのコツはつかめません。 なので、ゴールデンエイジと言われる期間に難しいスキルを習得したり高度はテクニックを練習するよりも、まずは基礎となる動きを繰り返すことで「動きのコツ」をつかむことが大切です。

近年では、専門スポーツの低年齢化とともに早い段階で専門的なことばかり教えて基礎がおろそかになってしまうことに注意しましょうと提唱されています。

子どものロコモティブシンドローム

2014年4月にN HKのクローズアップ現代で放送された「子どもの体に異変あり〜広がる“ロコモティブシンドローム“予備軍〜(※2)」では、しゃがめない、バンザイができない、手首を十分に反らすことができないという小学生が取り上げられていました。 これまで高齢者の問題とされてきたロコモティブシンドロームですが、子どもの運動機会が少なくなることで子どもにも大きく影響しているということができます。

ゴールデンエイジに運動量が減ると何が起きる?

では実際にこの時期に運動量が減ると何がよくないのでしょうか?さまざまな弊害が出てくるわけですが、大きく分けると「姿勢」「体型」「怪我」の3つに影響があると考えられます。

1.姿勢が悪くなってしまう

運動をしないことで起きる大きな問題が姿勢の悪化です。今や肩こりや腰痛は大人だけの問題ではなく、子供にもよく出てくる症状の一つです。 2012年に東京都教育委員会が行った調査(※3)によると、小学生の1日の平均歩数は11,382歩だったそうです。

 

これを見ると「意外と多いじゃん」と思われるかもしれません。大人に比べると歩幅も狭く、体育なども定期的に行われている小学生では15,000歩が必要と言われています。 歩くことが少なくなることによって重心をコントロールすることが苦手になってしまいます。重力にまけて体幹がキープできない、股関節を動かさないので体が固くなるといったところから徐々に姿勢が悪くなるのです。

2.体重の増加

運動量が低下することで起きるもう一つの問題は体重の増加です。これまでも運動量の低下とともに、食生活の影響で肥満傾向の子供が増えていることは問題になっていました。 運動量が低下することで体は食べたものを消化できないので、体内に溜め込みやすくなります。その上、外に出なくなるとついつい甘いお菓子やジュースに手が伸びてしまう。小学生でもこれは同じことです。 特に、まだ筋肉が発達していない小学生の頃に肥満傾向になってしまうと、大人になっても肥満から抜け出せなくなると言われているので注意しましょう。

3.ケガをしやすくなる

運動の機会が少なくなることでもう一つ影響が出るのが体のセンサーが低下すること。自分の体がどのように動いているか、空間における自分の体はどこにあるのか、というのがいわゆる体のセンサーと思ってください。 転んだ時に手首を骨折する、歩いていて人にぶつかってしまう、片足でバランスがとれない、ボールを頭上に投げて捕れない、などなど。 地面との距離感がつかめなくてドンと衝撃を受けてしまったり、人を避けたと思っても実は距離が合わずにぶつかってしまったり。当たり前にできるようなことができなくなってくると、当然ケガをするリスクも高まります。 骨折に関していうと、運動していないことで骨がもろくなっている、日光に当たらないことで骨が弱くなっていることも考えられるので一概には言えません。が、運動機会が少ないことでケガをしやすくなることに変わりはありませんので気をつけてください。

参考資料

※1 令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果

※2 子どもの体に異変あり~広がる“ロコモティブシンドローム”予備軍~|NHK

※3 小学生の歩数が3割減少 全国初の大規模歩数調査|一般社団法人 日本生活習慣病予防協会

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