機能性表示食品の「可能な表現」と「NG表現」
さまざまな健康への効果をうたった商品が登場している機能性表示食品。国の許可は不要ですが、どのような効果でも表示できるかと言えばそうではありません。機能性表示食品で「可能な表現」と「NG表現」について解説します。
可能な表現とは?
機能性表示食品で可能な表現として、消費者庁のガイドラインには次の3点が挙げられています。
(2)身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する、または改善に役立つ旨。
(3)身体の状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化の改善に役立つ旨。
(1)には、「コレステロール」「中性脂肪」「血圧」「血糖値」「体脂肪」「尿酸値」などがあります。健康診断で測定するので、皆さんも馴染みがあると思います。機能性表示食品では、これらの数値がやや高めの方に適しているという表示が可能です。
具体例を見ましょう。
- 「血圧が高めの方の血圧を下げる機能があります。血圧が高めの方に適した食品です」。
- 「食後血糖値の上昇を穏やかにする機能があります。血糖値が高めの方に適しています」。
ここでポイントとなるのは、対象者が「高めの方」とされていること。専門的な言い方をすると、「高めの方」とは健常者と病人の境界域を指します。通院している人や医薬品を服用している人は対象外ですので、注意が必要です。
(2)は、「目のピントを調整」「肌の潤いを保つ」など体の特定部位の働きや調子を整えるといった表現です。
具体例を見ましょう。
・「ブルーライトなどの光の刺激から目を保護し、コントラスト感度を改善することにより目の調子を整えます」。
・「肌の乾燥を緩和する機能があります」。
目や肌のほかにも、骨・腸・膝関節・血管・胃・脳・歯茎などにアプローチしたさまざまな表現が登場しています。
(3)には、「疲労感の軽減」「睡眠の質の向上」「ストレスの緩和」などがあります。
具体例を挙げます。
- 「仕事や勉強などによる一過性の精神的なストレスや疲労感を緩和します」。
- 「睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の改善に役立つ機能があります」。
ここで注意すべきは、仕事などによる一過性の「疲労感」や「ストレス」の軽減に役立つこと。慢性的な「疲労感」「ストレス」は対象外で、NG表現となります。
「睡眠」については、「寝入り」をイメージさせるような表現は禁止されています。医薬品(睡眠薬)の効能効果に該当するからです。眠りの深さの向上や目覚めのスッキリ感といった表現にとどめる必要があります。
(1)~(3)以外にも、表示内容に「作用機序(体の中で効果が発揮される仕組み)」を含めることも可能です。例えば「抗酸化作用により…」といった表現を用いた届出があります。
機能性表示食品のNG表現
機能性表示食品でNGとなる表現には、主に次の4点があります。
1点目は、医薬品をイメージさせる表現。
病気の治療効果や予防効果があると暗示する表現は禁止されています。例えば「糖尿病の方に」「アルツハイマー病を改善」「風邪の予防に」「花粉症の季節に」など。このような表示を認めると、消費者は医薬品であると誤認するからです。
2点目は、健康の維持・増進の範囲を超えた表現。
健康の維持・増進の範囲を定義することは難しいのですが、逸脱した表現として、肉体改造に関する表現があります。例えば、「バストアップ」「背が伸びる」などは肉体改造に当たり、NGです。
また、「増毛」「美白」「白髪が黒くなる」といった表現も、健康の維持・増進の範囲を超えた表示となります。
3点目は、科学的な根拠による裏付けが乏しい表現。
例を挙げると、試験管内で行った試験や動物実験の結果を用いて、ヒトの健康への効果をうたうことは禁止されています。機能性表示食品として販売するためには、ヒト試験によって効果を証明することが必要となります。
4点目は、届け出た表示内容を逸脱する表現。
機能性表示食品の販売者は、必要な資料一式を消費者庁へ届け出なければなりません。届出資料には、効果に関する表示内容も含まれています。商品パッケージや広告に記載できる効果は、届け出た表示の範囲内に限定されます。
仮に、「高めの血圧を下げる機能があります。血圧が高めの方に適しています」という表示を消費者庁へ届け出たとします。それにもかかわらず、商品パッケージや広告で「高血圧を改善」とうたったり、単に「血圧を下げる」と表記したりすると“一発アウト”となります。うっかりミスによる表示であっても許してもらえません。
ここまで説明してきたように、機能性表示食品で可能な表現は、(1)医薬品と誤認されない、(2)健康の維持・増進の範囲内、(3)科学的な根拠に基づく、(4)届け出た表示内容の範囲内――などの要件をすべてクリアしたものとなります。
機能性表示食品は企業責任に基づく届出制度で、国の許可は不要ですが、このように厳しい要件を設定して消費者の誤認を防いでいるわけです。
機能性表示食品を利用する場合は、まず健常者を対象としたものであることを理解しましょう。そして、表示内容を過大評価しないことが大切です。正しく理解して上手に利用すれば、きっとあなたの健康な毎日をサポートしてくれるでしょう。