梅(ウメ)
梅はアンズやスモモの仲間
梅はバラ科の落葉高木の果実。アンズやスモモの仲間です。特に梅とアンズはとても似ています。梅は生のままで食べませんが、熟したアンズは生で食べることがあります。
日本では昔から、梅を梅干しや梅酒に加工して利用してきました。梅の独特の風味を生かして、和食や菓子、ジャムの原材料としても利用されます。
梅の花はピンク色で、丸っぽい形をしています。上品で鮮やかな色彩のため、観賞用としても人気があります。毎年2月頃になると、全国各地で梅の花見や梅祭が行われます。
梅は中国から渡ってきたという説と、日本でも自生していたという説があります。奈良時代末期に編集された和歌集『万葉集』では、梅に関する多数の歌が詠まれています。遅くとも奈良時代には、各地で栽培されていたと考えられます。
梅には「花梅」と「実梅」の2種類がある!
梅の品種は、鑑賞用としての「花梅」、食用として良質な実をつける「実梅」に大きく分けることができます。「花梅」と「実梅」の境界線は曖昧で、品種によっては鑑賞用としても美しい花を咲かせ、実も食用として使えるものもあります。
梅の種類はおよそ300以上と言われています。南高梅、白加賀梅、古城をはじめ、カリカリ梅に使われる竜峡小梅や甲州小梅が実梅として有名です。
「梅雨」のシーズが収穫時期
梅の収穫時期は5月から7月にかけて。地域によって異なり、早いところでは5月中旬からスタートします。九州では6月上旬から、北海道では7月上旬から収穫が始まります。
全国的に収穫時期のピークとなる6月は、梅雨(つゆ)のシーズンに当たります。毎日のように降り注ぐ雨で梅の実が熟していくことから、この時期を「梅雨」と呼ぶようになったという言い伝えもあります。
国内収穫量の半分以上が和歌山県産
農林水産省の調べによると、2020年産の梅の収穫量は全国で約7万1,100トン。20年産は2月~3月の開花期間中に、低温や降雨によって受精不良となり、着果数が少なかったと報告されています。これに加えて、4月~6月の果実の肥大期も、少雨の影響で肥大化が抑制される傾向が見られました。この結果、前年産に比べて1万7,000トン(19%)減少しました。
梅の産地でもっとも有名なのが和歌山県です。主要産地である和歌山県日高地域は、土壌などの条件が稲作に向いていなかったため、痩せた土地でも育つ梅の栽培が進められてきました。この結果、日本を代表する梅の産地へとつながっていったわけです。また、和歌山県と言えば「南高梅」が代名詞。これは、地域に適した品種の選定に尽力した南部高校にちなんで命名されました。
20年産の都道府県別の収穫量を見ると、1位は和歌山県(4万1,300トン)で全体の58%を占めています。2位は群馬県(5,190トン)、3位は福井県(1,500トン)、4位は青森県(1,440トン)でした。
収穫された梅の実の用途は、およそ7割が「梅干し・梅漬け用」です。残りは「青梅用」がおよそ2割、「梅酒などの飲料用」がおよそ1割の内訳となっています。
梅の栄養的な特徴
カリウム、鉄、ビタミンE、クエン酸・・・
梅の実には、カリウムや鉄などのミネラル類、ビタミンEをはじめとするビタミン類が豊富に含まれ、栄養価の高さが特長です。
また、梅干しや梅エキスが酸っぱいのは、クエン酸が多く含まれているからです。このほか、リンゴ酸やカテキン酸なども含んでいます。
梅の効能効果
疲労・食欲不振にオススメ、肌の健康や血流の改善にも
特に梅はスポーツの合宿などで疲れた時、食欲がなくなった時にオススメです。梅の酸味の正体であるクエン酸は唾液の分泌を促進し、食欲を増進させます。
クエン酸は新陳代謝を良くし、老廃物の排出を促進するので、アンチエイジングやむくみ、美肌にも効果があると言われています。
また、梅に含まれるクエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、糖代謝を活性化させ、エネルギーに変化させる働きがあります。疲労回復に加え、腰痛や肩こりの緩和も期待できます。
このほかにも、梅はアルカリ性食品のため、血液やリンパの流れを良くします。体は酸化してしまうと、血液がドロドロになり疲労物質が溜まりやすくなるので、アルカリ性食品である梅を摂るとよいでしょう。
さらに、梅にはポリフェノールやビタミンEなどの抗酸化成分も含まれていて、健康の維持・増進に役立ちます。
梅は健康面で優れた食品
日本人は古くから、弁当やおにぎりに梅干しを使用してきました。これは、おかずとしてだけでなく、昔から食当たりを防ぐために梅干しを食べる習慣があったのです。各種の研究により、梅に含まれる有機酸には菌の抑制作用があると報告されており、古くからの言い伝えが科学的に裏付けられた形です。
梅は健康面で優れた食品。食卓の必需品として、梅の加工食品を日頃の食生活に利用してみましょう。