海の環境を守る、地球にも肌にもやさしい日焼け止め
私たちの肌を太陽の紫外線から守ってくれる日焼け止め。特に海に入る時には欠かすことのできないアイテムです。その日焼け止めが実は海の環境に悪影響を及ぼしてしまう可能性があることをご存じでしょうか。
2021年1月から米国ハワイ州で日焼け止め規制がスタート
日本人にも人気のハワイ。美しい海と一年中温暖な気候に惹かれてたくさんの人がハワイを訪れます。気候の良さはハワイの魅力の一つですが、日差しが強いため肌を守るための日焼け止めは滞在中の必須アイテムです。そんなハワイで近年問題になっているのが海洋環境問題。たくさんのサーファーや観光客が海でのアクティビティを楽しめる場所である一方、人が使用する日焼け止めの成分が海の環境に与える影響も懸念されています。
ハワイ州では、2021年1月1日からサンゴ礁に有害だとされる成分を含む日焼け止めの販売を禁止する規制法をスタートさせる予定です。対象となるのは紫外線カット成分の「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」が含まれる日焼け止め。なお、この規制はあくまでも有害成分を含む日焼け止めの「販売・流通」を禁止するもので「使用」は対象外です。
太平洋の島国パラオは国全体で有害成分の日焼け止め禁止
パラオは地球最大の海洋保護区を持つことで知られる島国。そのパラオでは有害成分10種類を含む日焼け止めやスキンケア製品の販売・使用を禁止する法律を制定し、2020年内に施行される予定です。パラオの法律は米国ハワイ州よりも厳しく、日焼け止めだけでなくスキンケア用品も対象。さらに販売だけでなく「使用」も禁止しており、違反者には罰金が科されることになっています。
その他にもメキシコの自然保護区や、カリブ海オランダ領ボネール島などの国や地域でも日焼け止めに関する規制が取り決められています。
日本のサンゴ礁の現状
日本周辺の海にもサンゴ礁は生息しています。しかし近年では沖縄などを中心にサンゴの白化や死亡の報告が相次いでいる現状です。2016年には奄美群島から八重山諸島にかけての広い海域で夏の高水温が主な原因と考えられる大規模なサンゴの白化現象が発生しました。また日本最大のサンゴ礁海域である石西礁湖では、90%以上のサンゴが白化し、その多くが死亡するなどの報告が上がっています。
2017年4月、環境省はこの大規模なサンゴ礁被害について話し合うため、サンゴ大規模白化緊急対策会議を開催しました。この会議では、有識者や関係機関等が白化の現状と対策に関する知見の共有や意見交換が行われ、「サンゴの大規模白化に関する緊急宣言」がまとめられています。
ハワイやパラオの海だけでなく、日本のサンゴ礁にも影響が出ていることを知っておきましょう。
日焼け止めが海の生態系に及ぼす影響
海の環境に有害とされる成分が含まれる日焼け止めをつけて海に入ると、化学物質が海水に溶け込み、サンゴ礁が吸収してしまいます。このような物質はサンゴ礁の繁殖や成長サイクルを狂わせてしまう可能性があり、サンゴの白化につながります。
サンゴ礁が失われてしまうと海の生態系が変化し、今までの海洋環境を維持できなくなる恐れがあります。サンゴ礁を住処にしていた生物は住む場所を追われ、その生物を捕食していた魚たちは食料を失うことになります。私たちの食卓に海の恵みが届かなくなる日が来るかもしれません。生態系が変わってしまうということは、私たちの暮らしにも密接に関係しているのです。
世界の人気観光スポット付近のサンゴ礁は特に高いリスクにさらされていて、特にオーストラリアのグレートバリアリーフ、米国ハワイ州、米領バージン諸島、イスラエルなどは深刻です。
肌にも海の環境にもやさしい日焼け止め
日頃から肌にやさしく地球環境も守る成分の日焼け止めを使いたい方におすすめの商品をご紹介します。
大正薬品「コパトーン プロテクションUVプラス ミルク」
日本でもおなじみの日焼け止めコパトーンから、紫外線吸収剤「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」不使用の商品が出ています。SPF50+、PA++++の高い効果で肌もしっかり守ってくれます。
出典:https://www.instagram.com/gin.jpskincare/
Munnah(ムナー)「日焼け止めボディクリーム サン・オブ・ムナー」
スペインのオーガニックコスメブランド「Munnah(ムナー)」の日焼け止めは、高い品質が認められ2019年にスペイン国内のオーガニック・クリーン・アワードでベストプロダクト賞を受賞した商品です。日光による肌の乾燥や酸化によるダメージをケアしながら肌を保湿。子どもや敏感肌の方も安心の化学物質不使用、天然由来成分使用。海外のサンゴ礁保護規制にも対応しています。
出典:https://www.instagram.com/munnahnatural/
Little Hands Hawaii
日焼け止め規制がスタートするハワイでは、地球環境の持続可能性を考慮した日焼け止め商品が増えてきています。この商品はオーガニックのココナッツオイルやホホバオイル、シアバター、蜜蝋などが主成分。十分な日焼け止め効果を得るために、80分ごとまたは海に入ったり汗をかいたりするごとに塗り直すことが推奨されています。
出典:https://www.instagram.com/littlehandshawaiijapanofficial/
海の環境にも肌にもやさしい日焼け止めを選ぶことの意味
サンゴ礁の白化は日焼け止めだけが理由ではなく、地球温暖化による海水温の上昇が最も大きな要因とされています。その他にも大量の降水に伴う淡水・土砂流入、強すぎる光などもサンゴのストレスとなり、それを受け続けることで白化が進行してしまいます。次の世代に地球の生態系や美しい環境を受け継ぐことができるかどうかは、今を生きる私たち一人ひとりの日々の選択次第です。
私たちが地球環境を守るためにできる行動の一つが、有害な成分を含まない日焼け止めを選ぶこと。今年の日焼け止めは肌だけでなく、地球環境のことも考えて選んでみてはいかがでしょうか。
参考資料
ハワイの日焼け止め規制法が成立、サンゴ礁に有害な成分を禁止|CNN
パラオ、有害成分含む日焼け止めを全面禁止 世界初|BBC
National Geo Graphic
国立環境研究所地球環境研究センター
サンゴ大規模白化緊急対策会議|環境省
サンゴ礁の働きと現状|農林水産省水産庁