メニューを閉じる
メニューを開く
  • 食・料理
  • 美容
  • カラダ
  • 食育
  • SDGs

フェアトレード・チョコレートを選ぶ時に知っておきたいこと

SDGs
YOKARE編集部
プロフィール画像
フェアトレード・チョコレートを選ぶ時に知っておきたいこと

甘くおいしいチョコレート。最近は「フェアトレード・チョコレート」の商品が増えてきています。この記事ではチョコレートの歴史からフェアトレード・チョコレートの選び方まで詳しく解説します。

世界で愛されるチョコレート、日本でも年間一人1.2kgを消費?

チョコレートは世界中の人から愛されています。世界的なチョコレートメーカーLindt社の2017年の年次報告書によると、チョコレート消費量がもっとも多い国の第一位はスイスで、一人当たり年間およそ8.8㎏のチョコレートを消費しています。

続いてオーストリア、ドイツ、イギリスなどヨーロッパの国々が並びます。日本は国民一人当たり年間1.2㎏のチョコレートを消費している計算で、ブラジルと同程度です。

チョコレートができるまでの甘くない歴史

チョコレートの原料であるカカオの原産地は中南米。チョコレートは、マヤ社会やアステカ社会では神秘的なパワーの象徴として神々への供え物として捧げられたり、金や銀とともに貨幣として用いられたりするほど貴重な品でした。

Rock with Mayan engraving of the cocoa ritual--ココアの儀式が掘られたマヤの彫刻

 

大航海時代にスペイン人が南米の国々を植民地化するとヨーロッパ中にカカオの存在が知れ渡りました。17世紀以降は貿易商品としてカカオをヨーロッパに運ぶルートが作られました。

当初のカカオ農園では南米大陸の原住民であるインディオの人々が労働力として利用されていましたが、1630年代に奴隷貿易でアフリカから黒人奴隷が連れてこられるようになりました。同時期に中南米でプランテーションが発展したサトウキビ(砂糖)とカカオは、ともにヨーロッパ社会で受け入れられ、需要が高まり続けました。カカオや砂糖から得た莫大な利益は白人の農園経営者が独占し、過酷な農場労働には奴隷が使われるしくみが長らく続きました。奴隷制度が撤廃された今も、カカオや砂糖の産業は不均衡な取引が続いています。

チョコレートを食べるようになってまだ100年?

現在のような固形のチョコレートが作られるようになったのは1847年の英国ブリストル。それまではココアドリンクとして親しまれていました。1876年カカオの加工技術が向上し、スイスで甘く美味しいミルク・チョコレートが発案されました。日本では1918年に森永製菓がミルク・チョコレートの販売を開始。日本人がチョコレートを嗜むようになってからわずか100年ほどだという事実は驚きです。

カカオ生産の裏側

チョコレートの原料であるカカオは60%以上がコートジボワールガーナで栽培されています。世界中の人がチョコレート愛してやまない一方、カカオ農家の生計は今も不安定な状況で、多くのカカオ農家が1日1ドル以下で生活しています。

カカオの需要は高いにもかかわらず、2016年から2017年のあいだに世界のカカオ価格は3分の1以上も下落しました。気候変動や政治的リスクなどが先物取引投機家の懸念を引き起こし、世界のカカオ価格はここ数十年で大きく変動しています。不安定な取引市場のためにカカオ農家は自分達が栽培したカカオ豆に対していくら支払われるのか分からず、生計が立てられなくなってしまうのです。


厳しい状況にあるカカオ農家では、労働力を確保するために子どもたちを働かせるケースが見られます。本来なら学校で勉強し知識を身につける時間を労働にあてて育った子どもたちは、十分な教育を受けられず将来の選択肢が狭まってしまう可能性があります。さらに成長期の大事な時期に過酷な肉体労働をしたことで体を痛めてしまうケースもあるといいます。


また、カカオ農家が栽培のために熱帯雨林を焼いて農園用の土地を広げていた実態もあり、森林破壊の深刻化につながる一因として指摘されています。
児童労働や森林破壊などの問題と深くかかわるチョコレート産業。その最終消費者は、日常的にチョコレートを食べている私たちです。甘くないチョコレート現実を知った今、チョコレートを購入する私たち一人ひとりの行動で、カカオ農家の現状を変えることができるかもしれません。その方法は「フェアトレード・チョコレート」を選ぶことです。

フェアトレード・チョコレートの選び方

フェアトレードとは「公正な取引」のこと。原料や製品の生産者に対して適正な価格を支払い継続的に購入することで、歪んだ取引構造を公平なものに近づけ、生産者の人々の生活改善や経済的な自立を実現することが目的です。私たち消費者の立場からできることは、フェアトレード商品を購入することです。最近はフェアトレードを謳う商品の数が増えてきていますが、私たち消費者が支払ったお金が、正当に受け取るべき人々の手に届くかどうか見極めることは簡単ではありません。その判断を手助けしてくれるのが「国際フェアトレード認証ラベル」です。

国際フェアトレード認証ラベルとは

国際フェアトレード認証ラベルは、その原料が生産されてから、輸出入、加工、製造工程を経て「国際フェアトレード認証製品」として完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです(引用元:FAIRTRADE JAPAN)

つまりこのラベルが表示されている商品は、サプライチェーン全体を通じて国際フェアトレード基準を満たしていることが認定されていることになります。さらにこの認証を受けた産品は、市場価格が大幅に下落した場合も「フェアトレード価格」での売買が保証されます。


この認定は「経済、社会、環境」の三本柱を軸に構成されています。経済面では生産者に対する最低価格の保証や、価格に上乗せするプレミアムの支払いが行われます。プレミアムはおもに生産地域や組合の環境整備のために使われる奨励金です。

社会面では17歳以下の子どもの労働禁止や、労働時間の規定や安全な労働環境が確保されていることを認証の条件としています。環境面では過度に農薬を使用しないこと、土壌や水源を守ることを約束しています。

フェアトレード・チョコレートの市場

チョコレートの原料であるカカオは、フェアトレード製品の中でも急速に成長しているカテゴリーです。2017年のフェアトレード・カカオの売上高は57%アップし214,000トン以上に急増。2018年は販売量が21%増加し、認定生産者に支払われたフェアトレード・プレミアムは4,400万ユーロに達しました。フェアトレード取引は拡大していることは素晴らしいことですが、いまだに西アフリカ地域を中心としたカカオ生産者の生計は苦しい状況です。

私たちにもできる、世界をより良くする行動。今年のバレンタインデーに、フェアトレード・チョコレートを選ぶことからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

参考資料
Lindt Annual Report 2017
FAIRTRADE FOUNDATION
CHOCOLATE’S DARK SECRET
FAIRTRADE JAPAN
FAIRTRADE INTERNATIONAL
チョコレートの世界史(武田尚子著、中公新書)

 

SHARE