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SDGsへの支援をブロックチェーンで。オーストラリアのスタートアップ企業が実施する農業改革

SDGs(持続可能な開発目標)に対してもブロックチェーンを利用しようとする動きは国連をはじめ、近年押し進められています。SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標」で、「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。

今回は、生産と消費において、フェアトレードや流通の効率化などの課題を克服するテクノロジー として注目を集めている「ブロックチェーン×農業」についてご紹介します。「ブロックチェーン×農業」で躍進を遂げている、オーストラリアのスタートアップ企業の取り組みや日本での取り組みなどを取り上げます。

ブロックッチェーンとは
「仮想通貨」や「ブロックッチェーン」という言葉はニュースや雑誌でも取り上げられ、広く知られるようになりました。「ブロックチェーン」とは仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として発明された概念ですが、ブッロクチェーンは金融取引以外にも農業にも使用されています。

現代の農業が抱える問題

農業の流通をブロックチェーンで効率化するサービスを提供するオーストラリアのスタートアップ企業「AgriDigital」の創設者の1人であるエマ・ウェストン氏(Emma Weston)は「(現在の)農作物の供給システムは柔軟性がなく、効率が悪い」と語っています。インターネットの普及により日常のあらゆるものが簡易化されましたが、オーストラリアの農業界では技術的な導入が遅れ、大きな変化はもたらされませんでした。

それどころか、分業化が進みサプライチェーンが複雑化したことで、非効率な過程が増え、生産者と消費者が開いてしまい、生産元の不透明さという問題が生まれています。

ブロックチェーンを活用した農業改革とは

1.農業の流通における効率化のアップにも貢献

ブロックチェーンは簡単に言うと、情報を一箇所に貯めるのではなく、分散してユーザー同士で管理し合うシステムのことです。複数人で情報が管理されることからデータの改ざんが行いにくく、また個々のユーザーがデータを閲覧できることから、不正を防止する効果も生まれます。

ブロックチェーンの技術を農業に適応し、商品に関わる生産者から運送業者、倉庫業者、販売業者までを1つのプラットフォーム上でつなぎ、それぞれの取引を見える化することが可能です。これにより、サプライチェーンの全体像が明確になり、今までは見えていなかった不必要な工程にも気がつけ、全体で大幅な効率アップにつながりました。

2.適正価格での取引が容易に

農家は経済で重要な立ち位置にあるにも関わらず、サプライチェーンの末端にいることから適切な報酬が受け取れていないという問題もありましたが、出荷後の動きが追跡できることから、適正価格での取引が容易になりました。これにより取引へのストレスが解消され、よりスムーズな取引が実現されています。

3.農家の仕事の効率化

さらに各農家の仕事の効率化にも役立てることができます。全ての取引はクラウド上で管理すれば、農家は作物の運搬状況や支払いの経過をパソコンやスマホの画面で簡単に確認でき、搬送が完了した通知などもメールで受け取れる仕組みを作ることができます。完了した取引はクラウド上に保管されているので、データの管理もペーパーレスに行え、必要なときに簡単に取り出せるというのも大きな利点です。

4.生産者がわかるから農作物への信頼を高まる

生産者から消費者までの工程が複雑化し、食品偽装などが容易に起こっている昨今。誰がどこで何をしているのか分からないという不透明さが商品の信頼を傷つけていることは、農業の分野では深刻な問題です。

日本でも野菜のパッケージに生産者の写真を乗せるなどして、商品への信頼性を高めようという動きがある中、ブロックチェーンで農産物が消費者に届くまでの経路をオープンにし、虚偽を行いにくい環境を作ることができます

また、食品偽装などが発覚した場合も、商品の詳細を追跡して世界規模で原因元を特定できるので、1つの過程での誤りが商品全体の信頼を傷つけてしまわないよう、プロテクターの役割も果たしています。

同時に、ユーザー同士がこれまでの取引を参照できることから、信頼関係の構築を容易にしています。例えば、新しい取引先を探すときもプラットフォーム上に蓄積された信頼に関するデータを見れば、簡単にマッチングが行えます

9000人以上の農家がサービスを利用するAgriDigitalのプラットフォームとは?

そんな現状を打開しようと、前述のオーストラリアのスタートアップ企業「AgriDigital」ウェストン氏らが目をつけたのが「ブロックチェーン」。

南オーストラリア出身の企業家によって創設されたAgriDigitalは、クラウド上で商品の生産者から購買者までを繋ぎ、物の流れを明確にするプラットフォームを提供しています。2016年に世界で初めてブロックチェーンを介して販売経路を明らかにした農産物の販売に成功し、ブロックチェーンの実用性を証明しました。

現在は9000人以上の農家がサービスを利用しており、これまでに約20万件の穀物やコットンの取引を行ってきました。また、オーストラリア国内だけの取引に留まらず、アジアや北米など36か国との取引も行っており、グローバルな活躍が注目の企業です。

AgriDigital の2019年以降の動きと今後の展望

2016年の創設後、「農業×ブロックチェーン」で世界をリードしてきたAgriDigital。昨今はブロックチェーンに加え「仮想通貨」という新しい技術をサービスに導入しています。

AgriDigital内では独自の仮想通貨である「Agricon(アグリコン)」が使用でき、これによりタイムレスな取引が可能になりました。アグリコンは、1アグリコン=1オーストラリアドルとレートが固定されているので、仮想通貨に馴染みのない人にも使いやすく普及が広がっています。

また、アグリコンの導入によりリアルタイムで支払いの管理ができることから、スマートコントラクトの実用化にも近づきました。スマートコントラクトは、その名のとおり、コントラクト(契約)をスマートに行う仕組みで、つまり取引を自動化するシステムと言えます。今までは人間が行ってきた信頼の判断をコンピュータに任せることで、取引に関するコストの削減と効率化を同時に行うことができます。

AgriDigitalは、これまでに培ってきたブロックチェーンの技術と仮想通過の運用を掛け合わせ、今後は世界規模でスマートコントラクトを展開する予定だと語っています。

また、ファイナンスの分野でも改革を起こそうとしています。AgriDigital内の信頼度を投資家に対して公開することによって、農家が資金援助をしやすい制度を作り、農業を活性化させることが目的です。近年中にこのサービスは施行される予定です。

日本でも始まる?「農業×ブロックチェーン」

「農業×ブロックチェーン」の動きは日本でも始まっています。電通国際情報サービスは、2020年1月、農産品の生産履歴から出荷、流通、販売までをブロックチェーン技術を用いて記録するデータ流通基盤「SMAGt(SMart AGriculture Traceability)」を開発したと発表しました。開発の背景には、農産品のブランド化の助長や、食品偽装の防止が挙げられています。

商品に貼付されたQRコードを読み込むことで、生産者の顔や、消費者が安心して食べられる科学的なデータ、生産者の思いなどが受け取れる仕組みになっています。

2019年10月25日、11月8日に大阪の中之島フェスティバルタワーにて開催された、とっとり旬菜マルシェでの販売の様子

QRコード利用イメージ

現在は実証実験中ですが、近い将来、私たちのスーパーでも実用化されるかもしれません。


今回は、ブロックチェーンで農業を革新し続けるAgriDigitalを紹介しました。サプライチェーンの透明度を上げることで効率化を図るだけでなく、農業全体の信頼を取り戻し、産業の活性化に努めています。仮想通貨やスマートコントラクトなどの新しいサービスも導入しはじめ、その活躍の場を広げています。

現在は私たち消費者側からデータを検索することはできませんが、紹介した「SMAGt」のように私たちの消費と直接的につながる日もそう遠くないかもしれません。今後、世界にどのような影響をもたらすのか、楽しみです。

参考資料
ブロックチェーン技術で地域農産品の生産履歴と取引状況を可視化する、 スマート農業データ流通基盤「SMAGt」を開発|株式会社 電通国際情報サービス
ブロックチェーン技術で地域農産品の生産履歴と取引状況を可視化する、スマート農業データ流通基盤「SMAGt」を開発|PRtimes