農業と酪農はどうつながっている?循環型農業をわかりやすく解説

朝ごはんにコップ一杯の牛乳。
お皿にはサラダとトースト、ゆで卵。
そんな何気ない食卓に並ぶ食材は、実は見えないところで密接につながっています。
野菜を育てる農業と、牛を育てる酪農。一見すると別々の産業に思えますが、実際にはお互いを支え合う関係にあります。
この記事では、農業と酪農がどのようにつながり、どんな形で循環しているのかを、身近な例を交えながらわかりやすく解説します。
循環型農業とは?
循環型農業とは、「出てきたものをムダにせず、次につなげていく農業」のことです。
ポイントは、単にゴミを減らすことではありません。
「もう使えない」と切り捨てるのではなく、「まだ役割がある資源」として活かす考え方にあります。
たとえば家庭でも、野菜の皮や芯を捨てずにスープに使ったり、着なくなった服を誰かに譲ったりといった行動は、自然と行われています。
循環型農業も、日常生活での「もったいない」という感覚と同じ発想です。
農業や酪農の現場では、どうしても余るもの、使い切れないものが出てきます。
それらを処分するのではなく、別の形で役立て、次の生産へとつなげていく。
その積み重ねが、循環型農業を成り立たせています。
農業と酪農は「エサ」と「肥料」でつながっている
農業と酪農の関係をシンプルに表すと、次のようになります。

畑で育てられた作物の一部が牛のエサとなり、牛から出たふん尿は堆肥となって再び畑へ戻ります。
この行き来によって、農業と酪農はお互いを支え合っています。
農業から酪農へ。畑の作物は「牛のごはん」になる
畑で育てた作物は、すべてが人の食べ物になるわけではありません。
たとえば、稲作で出る稲わらや野菜の外側の葉や、規格に合わなかった部分。
これらはスーパーに並ぶことはありませんが、牛にとっては大切な日常のエサです。
もし、こうした作物残渣をすべて廃棄すると、処分の手間やコストがかかります。
そこで「牛のエサ」として活用することで、牛乳やお肉という形に変わっていきます。
人の食べものにならなかった作物が、次の食べものを支える。
これも循環型農業の大切な仕組みのひとつです。
酪農から農業へ。牛のふん尿は「堆肥」にして畑へ戻す
牛から出るふん尿は、そのまま畑にまかれるわけではありません。
水分やにおい、病原菌の問題があるため、一定期間発酵させる「堆肥化」という工程を経ます。
時間をかけて発酵した堆肥は、土の中に空気や水を含みやすくし、土壌環境を整えます。
いわば、肥えた土壌や良い土にする役割なのです。
土がフカフカになることで、農業にメリットがあります。
- 根が伸びやすくなる
- 水はけと保水のバランスがよくなる
- 微生物が活発に働く
上記の効果が期待でき、野菜は育ちやすくなります。
このように、作物づくり(耕種)と家畜飼育(畜産)が連携する取り組みは「耕畜連携」と呼ばれ、地域の中で資源を循環させる仕組みとして広がっています。
飼料用作物と堆肥で回る「地域のループ」
最近では、地域全体で循環をつくる動きも広がっています。
- 農家が堆肥を使って飼料用作物を育てる
- その作物を酪農家が牛のエサとして使う
- 牛のふん尿が再び堆肥になり、畑へ戻る
この流れが地域の中で完結すると、輸入飼料や外部資材への依存を減らすことができます。
価格変動の影響を受けにくくなり、結果として農家の経営安定にもつながります。
北海道の酪農×農業の循環モデル
日本最大の酪農地帯である北海道では、酪農と農業が密接に連携した循環型モデルが地域産業として長く続いています。
代表的な地域として十勝地方では、以下のような取り組みが進んでいます。
飼料作物生産と自給
飼料用トウモロコシや牧草を大規模に栽培し、酪農家自身がエサを確保します。
これにより、輸入飼料への依存を抑えています。
サイレージの活用
刈り取った牧草やトウモロコシはサイレージ[※1]として発酵保存され、冬季の家畜エサとして長期保存されます。
堆肥の地域循環
家畜ふん尿は堆肥となり、近隣の畑へ還元され、土づくりに活かされています。
牛乳と野菜は、別々の場所で作られていますが、実は「エサ」と「堆肥」を通じて深くつながっています。
畑と牧場を行き来するこの循環が、私たちの食卓を支えています。
参考資料
※2…サイレージとは、刈り取った牧草やトウモロコシなどの飼料作物を細かく刻み、サイロやラップフィルムで密封して乳酸発酵させた保存飼料のこと。