吸収されやすいポリフェノールと吸収されにくいポリフェノールがあるって本当?
健康志向の高まりとともに機能性成分のポリフェノールが注目され、さまざまな種類のポリフェノールを含むサプリメントが登場。その一方で、「ポリフェノールは体に吸収されるの?」という疑問も。近年の研究により、吸収されやすいポリフェノールと、吸収されにくいポリフェノールの存在がわかってきました。
フレンチ・パラドックスはポリフェノール効果?
「フレンチ・パラドックス」という言葉をご存じでしょうか。フレンチ・パラドックスとは、フランス人の肉の消費量が世界でもトップクラスにあるにもかかわらず、心臓病による死亡率がほかの先進国よりも低いという矛盾を意味します。死亡率が低い要因として、フランス人の赤ワインの摂取量が多いことがあります。赤ワインはブドウの皮や種も使用して製造され、ブドウの皮・種に豊富に含まれるポリフェノールが、動脈硬化を抑制しているのではないかと推測されています。
ポリフェノールとは、植物が光合成によってつくり出した色素・苦味・渋味のもとになる成分。植物は紫外線や害虫などから身を守るため、ポリフェノールをつくり出しています。
ポリフェノールは8,000種類以上もあることが判明しています。ポリフェノールはフラボノイド系とフェノール酸系に大別することができます。
フラボノイド系のポリフェノールの代表格は、緑茶のカテキンや大豆のイソフラボン。このほかにもチョコレートのカカオポリフェノール、そばのルチン、ブルーベリーのアントシアニン、タマネギのケルセチンなどが知られています。
フェノール酸系のポリフェノールには、ウコンのクルクミン、コーヒーのクロロゲン酸、ゴマのセサミン、イチゴのエラグ酸などがあります。
ポリフェノールのさまざまな効果
ポリフェノールとひと口に言っても、種類によって化学構造や働きが異なります。抗酸化作用が強いポリフェノールを中心に、食品に用いる機能性成分としての研究が行われています。
緑茶のカテキンには抗ウイルス作用、コレステロール低下作用、抗アレルギー作用などがあることが、これまでに行われた研究によって確認されています。
また、コーヒーのクロロゲン酸には内臓脂肪を減らす作用や血圧低下作用など。大豆のイソフラボンには女性ホルモンに似た作用、ウコンのクルクミンには肝臓を保護する作用があることが報告されています。
吸収されやすいポリフェノールと吸収されにくいポリフェノール
ポリフェノールをめぐっては、従来から「人の体内で吸収されるの?」という疑問がありました。全般的に言えば、ポリフェノールの吸収率はあまりよくありません。
ただし、近年の研究により、ポリフェノールのなかには吸収されやすいものもあることがわかってきました。化学構造の違いによって、人の体内での働きも違ってくることが明らかにされつつあります。
野菜やサプリメントで摂取されたポリフェノールは、人の腸で作用します。代謝によって腸管から吸収されるものもあれば、吸収されずに腸内にとどまるものもあります。
吸収率の良いポリフェノールは、カテキン、イソフラボン、カルコン、フラバノール、クロロゲン酸など。およそ5~30%の吸収率であると報告されています。吸収されたポリフェノールは血中に取り込まれ、各組織に運ばれて作用すると考えられています。
一方、アントシアニンやタンニンなどは吸収されにくく、吸収率は0.1%程度。吸収率が悪いポリフェノールの場合、そのほとんどが腸内にとどまります。だからと言って、人の健康に役立たないというわけではありません。
吸収されないポリフェノールは腸内にとどまり、脂肪の吸収抑制や腸管粘膜の炎症抑制などの働きによって健康増進に寄与するのです。
また、ポリフェノールは一般的に水に溶けやすく、体内で即効性を発揮します。摂取後に短時間で作用する傾向にありますが、効果を長時間にわたって持続することはできません。およそ3時間程度で効果は激減。このため、朝・昼・夕と一定時間ごとに摂取すると効果的です。
ここまで見てきたように、ポリフェノールのなかには吸収されやすい種類と、吸収されにくい種類があります。その一方で、吸収されにくいものも含めて各種のポリフェノールには、さまざまな健康効果があることが確認されています。この矛盾を「ポリフェノール・パラドックス」と呼ぶ人もいます。
現在のところ、体内でポリフェノールがどのように働くかというメカニズムの詳細は解明されていませんが、ポリフェノールに対する関心は高く、今後も研究が進展すると見込まれています。