棚田オーナー制度を利用した米づくり体験
日本だけでなく、稲作が行われている地域であれば至るところにある「棚田」。
もともとは里山地域でも耕作面積を確保するための工夫の産物として、特に平野部の少ない日本では全国の至る所に棚田がありました。近年は農業の集約化・大規模化、就農人口の高齢化、地方の過疎化に伴う後継人不足などもあり、農家にとって棚田での稲作は敬遠される傾向が強くなっています。
その結果果樹園への転用や、耕作放棄地となる棚田も増えてしまいました。
一方で、1990年頃から棚田が持つ役割が見直され、棚田を保全していこうという運動が全国的に広まっていきました。
こちらでは棚田オーナーを通じて得られたことを綴っていきます。
棚田オーナー制度とは?
ある日野菜作りをしていることを知った友人から「こんなのがあるのだけどどう?」と紹介してもらったのは棚田オーナー制度という仕組みでした。
これは、棚田一枚につき年間のオーナー契約を行い、その棚田に月に1回程度通いながら田植え・草刈り・稲刈りを行い、最後の収穫したお米をいただくという制度です。お金を払えば棚田二枚でも三枚でも契約はできます。
田植えと稲刈りに関しては基本的にはオーナーは必ず参加するというのが決まりでした。
田植えの時期はゴールデンウィークあたり、稲刈りは9月15日頃です。棚田1枚あたりの広さにもよりますが年間2万円から4万円程度のオーナー料を支払い、50キロから90キロくらいのお米を得られるというような仕組みになっています。
棚田オーナーになって、初めての田植え
やはりなんといっても初めての田植えの経験というのは強烈な体験となります。
まだまだ少し水が冷たい時期ではありますが、ぬるっとした底なし沼のように思える泥地にすっぽりと足を入れてひとつひとつ稲を植えていくという作業を家族全員そして誘った友人ご家族と一緒に丸一日かけて実施するというのはとても得難い経験となります。
棚田の近くにある夏ミカンの果実をもぎ取って休憩中に食べたり、隣の棚田のオーナーのご家族とも一緒にお弁当を広げて皆で交流したりしながら、丸一日田植えをして過ごし東京に帰ってから飲むビールは最高の味わいでした。
炎天下での草刈り
田植えが終わると、9月の稲刈りまでは 月1回は草刈りにくるようにという指示を受けていました。6月から8月までの3ヶ月間は月1回程度の草刈りに行く必要があります。
梅雨から盛夏、そして晩夏への季節の移り変わりを感じることができます。
田植えのときはどっちになるのかわからなかったオタマジャクシたちはそれぞれサンショウウオになり、カエルになります。いずれ大きなアゲハ蝶に成長していく幼虫のイモムシが稲の周りの雑草の葉を食べていたりします。
田んぼにはアメンボやヤゴなどに加えてゲンゴロウなどの珍しい水生昆虫を見つけたりすることもあります。
こういった場所に子供を連れていくと興味深々、捕まえて小さい水槽に入れて持って帰って育てようということにもなります。そのうちなんとなく生き物や天気・里山の自然などに興味を持つようになり、そうしてやがて理科系の科目が好きになっていくというようなケースもありました。
みのりの秋、待ちに待った「稲刈り」
やがて9月後半になると頭を垂れた稲穂が枯れてきて収穫の時期を迎えます。
この収穫もまた手作業での刈り取りとなり、稲刈り鎌を使って刈り取っていきます。
稲刈り鎌で実った稲の根本をまさにザックザックと刈っていくわけですが、これはなかなかの重労働で、一日では終わらないんじゃないかと、最初の頃は焦りながらやっていたものでした。
収穫した稲を脱穀して収納して作業は完了します。
その後1ヶ月程すると籾すりして玄米となったお米がオーナーの自宅に届き、いよいよ収穫したお米をありがたくいただくということになります。
棚田のお米には美味しいお米が多い
棚田米の特徴として、山間部で昼夜の寒暖差・水温差の大きな田んぼで(気温や水温の寒暖差が大きいと米は澱粉質を貯めこもうとするため、美味しくなると言われている)、なおかつ山からの綺麗な水源をベースにして作られ(生活用水の流水が少ない)、さらに昔ながらの人手をかけた耕作によって作られるため、美味しいお米が多いと言われています。
今は日本全国の棚田で保存活動が進められており、オーナーの登録募集をしている棚田も数多くあります。是非皆様の自ら植えて自ら収穫したお米をいただいてみてはいかがでしょうか?
棚田までは・・・という方でも、道の駅などで是非棚田の新米を買ってその味を楽しんでみてはいかがでしょうか?