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腸内細菌と肥満は関係あり?!肥満を抑制するポリフェノール由来の成分「HMPA」が生成され、腸内で機能するメカニズムとは

食育
YOKARE編集部
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腸内細菌と肥満は関係あり?!肥満を抑制するポリフェノール由来の成分「HMPA」が生成され、腸内で機能するメカニズムとは

HMPA(3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸)とは、米ぬかを乳酸菌で発酵させてできる機能性表示食品の機能性関与成分。

HMPAには、以下の機能性が報告されている。

  • BMIが高めの方の腹部の脂肪を減らす
  • 食後血糖値が高めの方の食後に上昇する血糖値を元に戻しやすくする
  • LDLコレステロールが高めの方のLDLコレステロールを下げる

2026年3月に開催された「HMPAフォーラム2026」では、京都大学大学院生命科学研究科の木村郁夫教授が、短鎖脂肪酸受容体を介したHMPAのエネルギー代謝作用について研究成果を紹介した。

腸内細菌は肥満に影響する。肥満の人のウンチから腸内細菌を移植したマウスは肥満になるのはなぜ?

2006年Jeff Gordon(ジェフリー・ゴードン博士)の研究を皮切りに、腸内細菌と疾患が密接に関係していることが明らかになってきた。
痩せている人の腸内細菌はバクテロイデス(Bacteroidetes)という菌の比率が高く、太っている人はファーミキューテス(Firmicutes)という菌の比率が高くなっている。
2013年Jeff Gordonの研究において、遺伝的な背景は同じものの、生活環境の違いで1人だけ太っている双子の便を利用した実験が行われた。無菌マウスに双子の便を移植した結果、同じ餌を与えたにも関わらず、太っている方の便を移植したマウスは肥満になった

 
この研究から腸内細菌が肥満に直接的に影響することがわかるが、「腸内細菌の種類が変わることが、なぜ生理機能に影響するのか」という疑問は残る。

「腸内細菌が私たちの生理機能に影響を与えるメカニズムには、何かしらの伝達物質が関係しているのではないか。その伝達物質が受容体に認識されることが、生体にどのように作用するかを明らかにすることが重要になってきています。」(木村教授)

腸内でHMCAがHMPAに変わることが重要

木村教授がHMPAやポリフェノールに関して研究を始めたのは10年くらい前のことだ。当時はポリフェノールに機能があることはわかっていたが、どういうメカニズムで効果を発揮しているかまではわかっていなかったそう。食品科学の観点からコーヒーに含まれる代表的なポリフェノールはクロロゲン酸と言われているが、同じくコーヒーに含まれるポリフェノールであるカフェ酸が重要なのではないかと考え、特にコーヒーに着目して研究していた。
「コーヒーに含まれるカフェ酸は加熱されることで構造が変化し、フェルラ酸(HMCA)になります。さらにHMCAは、腸内細菌の働きによってHMPAになります。」(木村教授)
 
木村教授は、HMCAを肥満マウスに与える実験を行った。
通常の肥満マウスでは劇的に肥満が抑制されたが、抗生物質を与えて腸内細菌を少なくした肥満マウスでは、肥満が抑制されない結果となった。

腸内でHMCAがHMPAに変わることが大事ではないかと考えて、次にHMCA とHMPAの盲腸中の量を確認した。

通常の肥満マウスでは、HMCAを食べさせても、盲腸中からHMCAは検出されなかった。つまり、通常の肥満マウスの腸内では、ほとんどのHMCAがHMPAに変換されていた。しかし、抗生物質を与えて腸内細菌を少なくした肥満マウスではHMCAをHMPAに変換できないために盲腸中からHMCAが検出された。

そこで、抗生物質を与えて腸内細菌を少なくした肥満マウスにHMPA自体を食べさせた。その結果、抗生物質を与えて腸内細菌を少なくした肥満マウスでも劇的に肥満が抑制されたことから、HMPAが肥満の抑制に関与することがわかる。

HMPAに反応するのは短鎖脂肪酸の受容体でもあるGPR41

さらに研究を進めるうちに、短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41とHMPAに親和性があるということがわかった。

短鎖脂肪酸とは何か。脂質を構成する脂肪酸は「エネルギー」に利用されるだけではない

脂質を構成する脂肪酸は一般的に「エネルギー源」として知られているが、木村教授は次のように説明する。
「脂質を構成する脂肪酸はエネルギーとして利用されるわけですが、すべてがエネルギーとして利用されるわけではありません。脂肪酸は、生体のシグナル分子であり、様々な受容体が存在していて、生理機能と密接に関わっています。」

脂肪酸には短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸とあり、HMPAの生成には短鎖脂肪酸が関与している。

「食物繊維が短鎖脂肪酸の基質になります(食物繊維が腸内細菌のエサとなり、短鎖脂肪酸を生み出す)。 食物繊維は多糖であるため、単糖に変えないと我々はエネルギーとして利用できません。多糖は大腸で腸内細菌が分解してくれて単糖に変わり、エネルギー源になるわけですが、最終的な代謝物として出てくるのが短鎖脂肪酸になります。」(木村教授)

短鎖脂肪酸によって活性化される受容体は、主にGPR41とGPR43がある。これら受容体はインスリンの分泌、免疫制御、神経制御など生理機能と密接に関わっている。

短鎖脂肪酸の受容体GPR41が体内にないと体重が減少しない

短鎖脂肪酸の受容体GPR41とHMPAは親和性があることがわかり、短鎖脂肪酸の受容体GPR41が存在しないマウスで実験をした。

通常の肥満マウスにHMCAを与えると劇的に痩せるが、GPR41が存在しないマウスでは体重が減少しなかった

最後に、今後は生体内に存在する腸内細菌の中からHMCAをHMPAに変換する菌を特定したいと展望を話した。
短鎖脂肪酸の受容体でもあり、HMPAにも反応したGPR41は、体内でどのような機能を発揮するのだろうか。
「ポリフェノールの体内動態、食物繊維からできる短鎖脂肪酸の体内動態は当然違います。受容体が同じで、受容体の効果が一緒だったとしても、発現する生理機能は違ってくると思いますので、食欲抑制ホルモンや腸管バリアにどのように関わっているのかを明らかにしていきたいと思います。」(木村教授)

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