トウキンセンカ
花壇や鉢植え、切り花として目にすることが多いトウキンセンカ。オレンジ色や黄色の花が印象的ですね。日本では主に観賞用として流通していますが、海外では古くから食用として、また薬用として利用されてきました。近年の研究により、肌への作用があることもわかり、トウキンセンカの成分を配合した化粧品やヘアケア製品が登場。市場の裾野が広がりつつあるトウキンセンカについて解説します。
春に咲くオレンジ色や黄色の花
トウキンセンカはキク科キンセンカ属の植物で、高さ15~60cmの一年草です。学名はCalendula officinalis。一般的にはキンセンカの名称で親しまれています。
キンセンカは「金盞花」と表記します。盞(さかずき)のような形状をした鮮やかなオレンジ色や黄色の花を咲かせることから、この名称が付けられたと伝えられています。また、学名のCalendula(カレンデュラ)は、「カレンダー」と同じ語源に由来すると言われています(真相は不明ですが…)。
トウキンセンカの原種は約20種類。分枝することが多く、全体に軟毛があります。葉は長さ5~18cmの単葉で、薄い緑色をしています。
3~5月になると、10cmほどのオレンジ色や黄色の花を咲かせます。花は一重咲き、八重咲きなどいくつかの種類があります。冬を越す宿根草タイプのものは、「冬知らず」の名称で流通しています。
古代から薬用や食用として利用
トウキンセンカは、古代ギリシャや古代ローマの時代から薬用や料理に利用されてきたと言われています。また古くから、トウキンセンカの花はチーズやバターなどの着色料として利用され、「貧乏人のサフラン」(サフランは高価なため)と呼ばれてきました。
EU諸国では、食用の野草としてスパイスやハーブのように使用されてきた歴史があります。一方、日本では主に観賞用として流通しています。
南ヨーロッパが原産地
原産地は地中海沿岸の南ヨーロッパ。主にアフリカ北部、北アメリカ、中央アメリカ、南ヨーロッパなどで栽培されています。
日本には中国を経由して伝わったという説も。現在、国内では千葉県の南房総などで栽培されています。
栽培は比較的簡単で、初心者でも育てやすいのが特長。栽培条件は日当たりと水はけが良いこと。あとは放っておいても花を咲かせてくれます。
秋に種をまくと、冬場に花が咲き始め、春には最盛期を迎えます。寒さに強く、ほとんどの地域では屋外で栽培できます。
トウキンセンカに含まれる成分
サポニン、タンニン、カロテン…
トウキンセンカの花から抽出されたエキスには、フラボノール、トリテルペン、トリテルペノイド系サポニン、タンニン、カロテン、キサントフィルなどの成分が含まれています。
トウキンセンカの効能効果
消炎作用、止血作用、コラーゲン産生促進など
トウキンセンカの効能効果としては、消炎作用や鎮痛作用、止血作用などが知られています。このため、外傷や湿疹などに用いる医薬品の原料として利用されることがあります。
トウキンセンカの花から抽出されたエキスは、コラーゲン産生を促進する作用があり、スキンケア製品などの化粧品の原料としても使用されるようになってきました。加えて、シャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品にも利用されています。
「睡眠不足」の状況にある肌への作用
トウキンセンカの花から抽出されたエキスについては、「睡眠不足」の状態にある人の肌に対する効果が示唆されたという研究報告もあります。
これまでの研究により、成長ホルモンは肌の皮膚線維芽細胞に働きかけて、インスリン様成長因子「IGF-1」の産生を介して、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進することがわかっています。また、表皮角化細胞に対しても、「IGF-1」の働きを介して細胞増殖や修復に関与していることが判明。加えて、成長ホルモンは深い睡眠時にたくさん分泌され、睡眠の質が低下すると分泌量が低下することが知られています。
これらの知見を前提に行われた実験の結果、「睡眠不足モデル」を用いた評価方法の下で、トウキンセンカの花から抽出されたエキスが、成長ホルモンの分泌量が低下した状況下の肌をサポートする可能性を見出したと報告。さらに、低濃度の成長ホルモンと同エキスを併用することで、皮膚線維芽細胞でコラーゲンとヒアルロン酸の産生が促進されたとしています。
健康と美容をサポート
天然の植物は、私たちが気づいていない多くの可能性を秘めています。トウキンセンカも近年の研究によって、その機能性が科学的に解明されつつあります。さらに研究が進展すれば、新たな機能性の発見や用途の開発も期待されます。
花壇や切り花で目にするトウキンセンカですが、食用として、また薬用としても役に立つ植物なのですね。トウキンセンカの幅広い用途を理解し、あなたの健康や美容のために活用してみてはいかがでしょうか。