シルバーバイン(マタタビ)
シルバーバインは、日本ではマタタビと呼ばれます。これまでネコが「酔いしれる」と言われてきましたが、最新の研究により、ネコがマタタビを体に擦りつける行動は「蚊を避けるため」であることがわかってきました。実はネコだけでなく、シルバーバイン(マタタビ)は私たちの健康や美容にも役立つのです。その有効成分と効果を知り、「ネコにマタタビ」という固定概念を払拭しましょう。
シルバーバインの果実は生薬・酒・化粧品などに利用
シルバーバインはマタタビ科マタタビ属の葉つる性植物。意外かもしれませんが、キウイフルーツの仲間なのです。山地に自生し、水はけが良く、適度な湿り気のある土壌を好みます。
初夏(6~7月頃)になると、白くて小さな花を咲かせます。葉は楕円形の単葉で、長さは8~15cmほど。花が咲く頃に、枝の上方の葉は白っぽくなります。
果実は黄色く、ドングリに近い形状で、3cm前後の大きさになります。収穫の時期は、黄色~白色のしま模様が入る10~11月にかけて。熟すと特有の芳香と辛味を持つようになります。
熟していない果実は辛味が強いため、果実酒(マタタビ酒)や漬物などの保存食に利用されます。十分に熟してくると、そのまま食べることができます。また、シルバーバインの果実を原料に使用した加工食品も販売されています。
果実にマタタビアブラムシやマタタビミタマバエが寄生すると、コブのような形(虫えい)になります。これを熱湯で殺虫して乾燥させたものが、生薬として用いる「木天蓼(もくてんりょう)」です。
このほかにも最近では、果実から生成したエキスを用いた化粧品が開発されています。
当然ながら、ネコのペット用品としてシルバーバインは定番。果実を原料としたペットフードや、枝を利用した商品が販売されています。
日本では北海道をはじめ全国的に分布
シルバーバインの原産地は日本や朝鮮半島。シベリア東部や中国などにも生息しています。日本では北海道・本州・四国・九州と全国的に分布しています。
国内の生産量は北海道がダントツのトップ。北海道では網走市が最北限の栽培地とされていて、市内には栽培畑があります。
網走市は、シルバーバインの完熟した果実を「フルーツマタタビ」と名付けて特産化。市の研究所で「マタタビピューレ」や「マタタビドライフルーツ」を開発し、地元の企業がこれらを使用した加工食品を商品化しています。
シルバーバインの栄養的な特徴
ネペタラクトン、イリドミルメシン、ビタミンC…
シルバーバインの特徴的な成分は「ネペタラクトン」「イリドミルメシン」「イソイリドミルメシン」。これらの3成分を総称して「マタタビラクトン」と呼ぶこともあります。
ネペタラクトンはイヌハッカから単離された有機化合物。蚊などの忌避剤としての働きがあります。イリドミルメシンは殺虫作用や抗菌作用を持ちます。イソイリドミルメシンはイリドミルメシンに類似した構造の物質です。
このほか、ビタミンCなどの栄養素も含んでいます。
シルバーバインの効能効果
血流改善、疲労回復、肌の酸化ダメージ抑制など
シルバーバインの代表的な効果として、血流の改善が知られています。このため、古くから冬場の冷えに悩む方に有効とされてきました。
疲労回復も代表的な効果の一つ。和名のマタタビという名称の由来については“諸説あり”ですが、疲れた旅人がマタタビの果実を食べて元気が出て、「また旅」に出たという話から名付けられたとも言われています。もちろんこれは逸話であって、真偽は不明です。
生薬として用いる「木天蓼」は煎じて服用します。体を温めて血行を良好にする作用が報告されています。冷え性をはじめ、神経痛や腰痛、滋養強壮などに有効とされています。
シルバーバインの果実から生成されるエキスは、肌への効果が期待されています。人の肌の角層を用いた試験では、自動車の排気ガスやブルーライトによって誘導される「カルボニル化」(肌の酸化ダメージの指標)について検証。その結果、同エキスに「カルボニル化タンパク質」の生成を抑制する作用があることが確認されています。
シルバーバインについてはヒト試験がまだまだ少ないことから、今後の学術研究の蓄積が期待されています。
研究の進展に伴って広がる用途先
シルバーバインは「ネコの大好物」というイメージが強すぎて、私たち人間の健康や美容に役立つことはあまり知られてきませんでした。
今後、科学的な研究の進展に伴って、シルバーバインを活用したさまざまな健康志向食品やサプリメントなどが開発されるようになるでしょう。さらに、肌への効果も解明されつつあり、シルバーバインを原料に使用した化粧品が注目を集めているように、その用途先も広がっていくと予想されます。
従来の「ネコにマタタビ」というステレオタイプの概念を捨てて、健康・美容素材の一つとして捉えることが大切です。