ヒハツ
ヒハツはコショウの仲間
ヒハツ(学名:Piper longum)は、コショウ科コショウ属のツル性常緑樹。「インドナガコショウ」とも呼ばれます。
英名が「ロングペッパー」のヒハツは、その名のとおりコショウの仲間ですが、黒コショウや白コショウとは異なる種類です。
ちなみに、黒コショウは果実が熟す前に収穫し、乾燥させて作られます。白コショウは熟した果実の皮を除去して、乾燥させたものです。
ヒハツは「黒コショウ」や「白コショウ」とは、少し違った辛味と風味を持ちます。インドが主産地で、古くからヨーロッパやアジアで料理などに利用されてきました。国内では沖縄地方で栽培され、地域の伝統料理に用いられています。最近では、ヒハツの成分を配合したサプリメントも人気です。ヒハツの基礎知識と健康効果を見ていきましょう。
アジアでは古くからカレーや肉料理などに使用
ヒハツの果実は乾燥させて、スパイスとしてさまざまな料理に使用されます。アジア各地では古くから、カレーや肉料理、茶などに用いられてきました。
ヒハツの歴史は古く、インドでは紀元前1,000年ごろから利用されてきたと伝えられています。ヨーロッパに伝わったのは紀元前5世紀ごろ。当時は薬として注目され、ヒポクラテスがギリシャに紹介したと言われています。
ヒハツの原産地は南アジア~インド、スリランカ、東南アジアなどが主要産地
ヒハツの原産地は南アジア。主な産地として、インドを筆頭にスリランカ、インドネシアやタイをはじめとする東南アジア諸国、ブラジルなどがあります。
黒コショウや白コショウと同様に、ヒハツのパウダーも手軽に入手できます。インド産、スリランカ産、カンボジア産、インドネシア産など、さまざまな産地の製品が流通しています。
ヒハツは日本国内でも、沖縄地方で栽培されています。スパイス原料のほとんどは海外からの輸入に依存していますが、ヒハツについては国産品も販売されています。
沖縄地方でヒハツは「ヒバーチ」「ピパーチ」「島胡椒」などと呼ばれます。沖縄そばの薬味として、またゴーヤチャンプルーや肉料理の調味料として使用されています。
産地によって風味は多少異なりますが、ヒハツは一般的にシナモンのような甘い香りを持ちながらも、刺激的なピリ辛感が特長。黒コショウや白コショウとは風味が異なることも、ヒハツが注目されている理由の1つです。
話題の成分…「ヒハツ由来ピペリン類」とは?
ヒハツに含まれる成分で注目されているのが、ピペリン類(ピペリン、イソピペリン、イソシャビシン、シャビシン、ピペラニン)です。
ピペリン類はコショウ科植物の果実に含まれる辛味成分の1つで、アルカロイド(窒素を含む有機化合物)に分類されます。ヒハツや黒コショウがピリッと辛く感じるのは、この成分が含まれているからです。
また、近年、ヒハツに含まれるピペリン類が話題に上るようになったのは、風味の良さだけでなく、健康への効果がわかってきたからです。
冷えによる血流の正常化、一時的な足のむくみの軽減も
ヒハツに含まれるピペリン類は、感覚神経に発現する辛味受容体と呼ばれる「TRPV1」を活性化する作用を持ちます。体が冷えることで低下する血流を正常に整え、皮膚の表面温度の維持に役立つ作用があると報告されています。
これまでに実施されたヒト試験では、被験者の手を冷水に浸して負荷をかけ、ヒハツ由来ピペリン類を含む食品を摂取したグループと、プラセボ食品を摂取したグループの末梢血流量と皮膚表面温度を比べて、その効果を確認しています。
ヒハツ由来のピペリン類については、足のむくみを軽減する作用も報告されています。足のむくみは健康な人であっても、長時間立ちっぱなしの仕事などを行うと、夕方ごろに一時的に生じることがあります。
ヒハツ由来のピペリン類は、病的なむくみに対する効果は期待できませんが、一過性の足のむくみに対しては、これまでの研究によって一定程度の効果が確認されています。そうした研究成果を活用した機能性表示食品が国に届け出され、多数の関連製品が登場しています。
日々の家庭料理にヒハツを上手に取り入れてみよう!
このようにヒハツには、冷えによって低下した血流を改善して皮膚表面温度を維持する作用や、一時的な足のむくみを軽減する作用が期待されています。さらに、仕事や勉強でくたびれた時には、ヒハツを使った刺激的な風味の料理でパワーアップも。家庭で作る料理に、調味料としてヒハツを上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、「刺激物が苦手」という方にとっては、ヒハツの摂取は苦痛に感じるかもしれません。そうした方の強い味方となってくれるのが、ヒハツ由来ピペリン類を配合したサプリメント。機能性表示食品を中心に市場が形成されつつあります。あなたの健康を守る上で、ヒハツの機能性表示食品の活用も有効な手段となるでしょう。