アグリテックの力で農業を活性化!日本での事例を紹介
私たちが豊かな生活を送るために不可欠な「食」。この食を支える農業が今、テックの力で変わり始めています。
減り続ける農業人口
農業は重要な産業だと認識されている一方で、日本の農業人口は年々減少しています。2010年に260万人だった農業就業人口数は、2019年時点では168万人となりました。
平成22年 | 27年 | 28年 | 29年 | 30年 | 31年 | |
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農業就業人口 | 260.6 | 209.7 | 192.2 | 181.6 | 175.3 | 168.1 |
うち女性
|
130.0 | 100.9 | 90.0 | 84.9 | 80.8 | 76.4 |
うち65歳以上
|
160.5 | 133.1 | 125.4 | 120.7 | 120.0 | 118.0 |
平均年齢
|
65.8 | 66.4 | 66.8 | 66.7 | 66.8 | 67.0 |
基幹的農業従事者 | 205.1 | 175.4 | 158.6 | 150.7 | 145.1 | 140.4 |
うち女性
|
90.3 | 74.9 | 65.6 | 61.9 | 58.6 | 56.2 |
うち65歳以上
|
125.3 | 113.2 | 103.1 | 100.1 | 98.7 | 97.9 |
平均年齢
|
66.1 | 67.0 | 66.8 | 66.6 | 66.6 | 66.8 |
この傾向は日本だけにとどまらず、世界中の総雇用者数に占める農業人口は多くの国で減少を続けています。それと同時に農業に携わる人の高齢化も進み、先進国の農業従事者平均年齢は60歳と言われています。
このような農業の現状の中、光が射す側面も。労働力不足や高齢化を補うための技術の発展はめざましく、農業の効率性や生産性をより良くする「スマート農業」に注目が集まっています。
「スマート農業」とは?
スマート農業について農林水産省は下記のように説明しています。
ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精緻化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のこと
農業の現場ではいまだに人手に頼る作業や長年の経験者でなければできない作業が多いという課題がありましたが、テクノロジーで農業を活性化しようという動きが盛んになり、イノベーションが生み出されています。
テックの力で農業を活性化!日本国内の取り組み
日本国内では2019年に農林水産省が主導するスマート農業の実証プロジェクトがスタートしました。全国の農家と、機械メーカーやITベンダーなどの民間企業、研究機関などが連携し、ロボット、AI、ICT、ドローンなどの最新技術を農業分野で活用するための研究開発や実証実験が行われており、一部では実用化も進んでいます。現在、日本で行われているスマート農業にはどのようなものがあるのかチェックしましょう。
無人のアグリロボトラクターが自動農作業
農地を耕すためには人がトラクターを運転しながら耕耘操作するというのが従来の方法ですが、最新のアグリロボトラクターは農地内の土を掘り返したり、土の表面を平らにならしたりする作業を自動で行います。オペレーターは農地周辺でアグリロボトラクターを監視しながら、リモコンによる遠隔指示で作業開始・停止の操作を行います。1人あたりの可能な作業面積が拡大するため、広域農業で役立ちます。
株式会社クボタは、GPS農機『ファームパイロット(Farm Pilot)』シリーズとして、オペレーターが搭乗した状態での自動運転が可能な「アグリロボトラクタMR1000A」を発売しています。
AI×自動走行型アームロボがトマトの実を自動収穫
AIと自動走行型アームが装備された自動野菜収穫ロボットには、カメラや距離センサーが搭載されており、自動でビニールハウス内を移動しながらトマトを収穫することができます。AIのディープラーニングや画像認識によってトマトのサイズや熟れ具合を識別して収穫タイミングを判断します。小さくて傷がつきやすいトマトは収穫の難易度が高いと言われていますが、実証実験では1個当たり約15秒での収穫が実現しました。
重い収穫物の積み下ろし。アシストスーツで負担軽減
農業の収穫現場では腰に負荷がかかる中腰姿勢や、腕や肩の力が必要な動作が多いため、肉体的な負担が大きく体を痛めてしまう方が多いという現状があります。この悩みを解決するのが農作業用の「アシストスーツ」。スーツのように簡単に着脱でき、電動モーターが荷物の持ち上げ動作などをアシストしてくれます。装備されたセンサーが腰や関節の角度などを察知してコンピュータに伝達してくれるため、アシストスーツ装着時も違和感の少ない作業が可能です。
ICTで田んぼの給水を自動管理、スマホでチェック
稲作用の水田は点在していることが多く、すべてを見回りするには農家の方の多大な労力が必要です。新潟市で行われた水田管理システムの実証実験では、水田に設置したセンサーで水位や水温などを測定、1時間おきに更新されるデータをスマホ端末などで確認できるしくみ。さらに自動で水田の給水栓バルブの開閉を操作できる製品と組み合わせることで、水田の見回り回数は平均3~4割削減されることが実証実験で判明しています。
これからのスマート農業
今までの常識にとらわれず、最新技術を農業に取り入れる取り組みが日本でも世界でも盛んになっている事例をご紹介しました。今は食卓に並ぶ食料は人の手で作られているという認識が当たりまえですが、そう遠くない将来、作付けから育成管理、収穫まですべてをロボットが担った食品を口にする日がやってくるかもしれません。日進月歩のスマート農業、これからもその動向から目が離せません。
参考資料
農林水産省|農業就業人口および基幹的農業従事者数
スマート農業とは|農林水産省
スマート農業の社会実装に向けた具体的な取り組みについて|農林水産省(平成31年2月)
株式会社スマートロボティクスが、AI×自動走行型アームロボット「トマト自動収穫ロボット」の実証実験をビニールハウスで開始|PR times
新潟市「水田センサ」・「自動給水栓」を活用した遠隔操作による水管理実証プロジェクト