アグリテックの力で農業を活性化!海外での事例を紹介
日本での農業×テックのプロダクトは前回の「アグリテックの力で農業を活性化!日本での事例を紹介」で説明しましたが、海外でも農業を活性化するための技術やソリューションの開発が進んでいます。いくつか事例を見てみましょう。
フランスNaio Technologies社「ブドウ農家向けの自動除草ロボット」
ワイン大国フランスのNaio Technologies社は、ブドウ農園向けの自動除草ロボットを販売。作物を健康に育てるためには雑草を取りのぞく除草が必須ですが、近年EUでは多くの除草剤の使用が禁止されています。しかし労働力不足が厳しい中で、人の手による除草作業を必要とする状況は農家にとって重大な課題となってしまいました。それを解決するのが「自動除草ロボット」。除草剤も人の手も使わずに除草してくれるこのロボットは、サステナブルな農業のことを考え設計されており、土壌の圧縮を避けるためにロボットの重量は最小限(900㎏)に抑えられています。
スペインFaromatics社「自律型スマート養鶏ロボット」
スペインの農業テック企業Faromatics社が販売するのは、自律型スマート養鶏ロボット「CHIKIN BOY」。これは養鶏場の屋根から吊るす形のロボットで、養鶏場内の空気の質、鶏の健康状態、福祉的な心理状態、場内の汚れなどを24時間365日モニタリングし、一定の基準を検知した場合はアラームで農家や獣医に通知を行います。Faromatics社は動物福祉の精神を大切にしており、ロボットを使った養鶏管理は農家の負担を軽減するだけでなく、動物のニーズをすばやく察知し、新鮮な水と食事の提供、不快感のない適切な環境、病気の予防と迅速な治療による痛みからの解放などを常に提供できるようになるため、動物のストレスを軽減するサポートにもなることをアピールしています。
これまではスペインとオランダで展開していましたが、2020年はイングランド、ハンガリー、ウクライナの3つの市場に進出予定です。
アメリカPrecision Hawk社「ドローンで広大な農用地をチェック」
農業は広大な農地に作付けした後も、日ごとに変化する農作物の育成状況や害虫のチェックをするために広い農地を足で歩き、作物を目で見て回る作業が必要です。特に気温が高い・低い日や、悪天候の日は一層大変。単純に見えるようで、とても重要で骨の折れる仕事ですが、前日に問題点をチェックした位置を正確に把握しておくことや、日々の変化をすべて記録することは難しく正確性に欠けてしまう点が課題でした。
アメリカのPrecision Hawk社は、ドローンと専用のソフトウェアを使用することで、農場全体の様子を一ヵ所のモニター上に表示して農作物の育成状況を室内でチェックできるしくみを開発しました。ドローンカメラによる遠隔での農作物チェックと、Web上のプラットフォームでの作物育成データ管理によって、今までのアナログな手法でかかっていたデータ収集・管理の労力と時間を大幅に削減することができます。
これからのスマート農業
今までの常識にとらわれず、最新技術を農業に取り入れる取り組みが日本でも世界でも盛んになっている事例をご紹介しました。国連が策定したSDGs(2030年までの世界共通の持続可能な開発目標)では、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」ことを掲げていますが、その実現には農業分野における最新技術の活用が不可欠です。今は食卓に並ぶ食料は人の手で作られているという認識が当たりまえですが、そう遠くない将来、作付けから育成管理、収穫まですべてをロボットが担った食品を口にする日がやってくるかもしれません。日進月歩のスマート農業、これからもその動向から目が離せません。
参考資料
農業人口不足の克服手段としての自動農業|アイルランド政府商務庁
Naio Technologies(フランス)
Faromatics(スペイン)
Precision Hawk(アメリカ)