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リンパ管は中枢神経、つまり脳にもある?

カラダ
YOKARE編集部
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リンパ管は中枢神経、つまり脳にもある?

これまで脳内には老廃物を排出するためのリンパ機能を担う構造が存在しないとされてきました。近年になり、脳にもリンパ管は存在することがわかってきました。

ジョナサン・キプニス博士は、博士研究員の Antoine Louveau による2015 年のNatureの論文は「Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels (中枢神経系に存在するリンパ管の構造的機能的特徴)」というタイトルで発表されました。

リンパ管の役割と、脳内でのリンパ管の役割について紹介します。

リンパ管の役割

リンパ管とは循環器の一つです。循環器とは、血液やリンパ液などの体液を身体に循環させるための器官の総称で心臓・動脈・静脈・毛細血管・リンパ管で構成されています。

それぞれ循環器には役割があります。

  • 心臓は全身に血液を送りだすポンプのような役割
  • 動脈は血液を心臓から身体の各部分に送り出す血管
  • 静脈は血液が全身の臓器から心臓に戻っていく際に通る血管
  • 毛細血管は動脈と静脈の間をつないでいる極めて薄い壁でできた非常に細い血管
  • リンパ管はリンパ液が流れる管のこと

それでは循環器の一つであるリンパ管について詳しくみていきましょう。

リンパ管は、リンパ液(リンパ液の主成分は血液中の液体成分である血しょう)が流れる管で、全身に分布しています。
動脈と静脈をつなぐ非常に細い毛細血管よりは太いものの、ほとんど細い静脈よりも細くなっています。ほとんどのリンパ管には、静脈にみられるような弁が備わっていて、凝固する可能性のあるリンパ液が心臓に向かって一方向に流れるようになっています。リンパ管は全身の組織からリンパ液を排出する役割を担っています。
リンパ液には以下のようなものも含まれています。

リンパ液に含まれるもの

  • 水分(血しょう成分)が大部分
  • タンパク質、ミネラル、栄養素など、組織への栄養補給につながる物質
  • リンパ球、電解質、脂肪、老廃物、疲労物質などを含むほか、ウイルス、細菌、がん細胞

リンパ球は白血球の一部で、さらにB細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)、NK(ナチュラルキラー)細胞などに分類することができます。


 
リンパ管は、静脈と似た構造ですが、静脈よりも壁が薄く、透過性が高いため、大きな分子のタンパク質や病原体など通常血管には入らないものを通します。

細くて網目状の毛細リンパ管が合流し、集合リンパ管、そして主幹リンパ管となり、太くなっていきます。リンパ液はリンパ管から集合管に流れ込み、さらに鎖骨の下にある2本の鎖骨下静脈に入ります。2本の鎖骨下静脈は合流して上大静脈となり、上半身の血液を心臓へ送ります。
リンパ節(リンパ液が集まる多数の拠点)では、リンパ液から損傷した細胞、がん細胞、異物がこし取られます。このように、リンパ系は損傷した細胞を体から排除し、感染やがんの拡大を阻止するという重要な機能を果たしています。

主なリンパ系の役割

  • 戻らなかった水分(組織液)を血管へ送りかえす
    血液の量を大きく増減させることなく、循環できるようにしている
  • 免疫反応
    免疫細胞の1つであるリンパ球は外敵から体を守る
  • 有害な生物や老廃物を濾過
    リンパ管はタンパク質、細菌やウイルス、細胞の代謝から生じた老廃物を集めて運ふ、リンパ節内の免疫細胞が攻撃する、リンパ液はきれいな状態で静脈へと戻っていく。

リンパ管は血管と比べ研究が遅れていましたが、2000年頃から基礎研究が進み、色々なことが分かってきました。国内外を問わず、様々な研究が続けられています。

2015年の大発見となった脳のリンパ管の存在

ジョナサン・キプニス博士は、博士研究員の Antoine Louveau による2015 年のNatureの論文は「Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels (中枢神経系に存在するリンパ管の構造的機能的特徴)」というタイトルで発表されました。

実は脳にも機能を備えたリンパ管があって、それは髄膜に存在し、これらが脳脊髄液から髄液と免疫細胞の両方を輸送できることを示しました。

さらに、Nature 2018年8月9日号では、「Functional aspects of meningeal lymphatics in ageing and Alzheimer’s disease.(「加齢およびアルツハイマー病における髄膜リンパ管の機能的側面)」では、髄膜のリンパ管が、認知機能の維持にも、脳を流れる体液中(脳間質液や脳脊髄液)のタンパク質恒常性(タンパク質を適正レベルで維持すること)にも役立つことを明らかにしました。

「髄膜リンパ管の機能を増強することが、老化に伴う神経疾患の予防または発症遅延のための有望な治療標的だ」とジョナサン・キプニス博士たちのグループは考えているそうです。

Functional aspects of meningeal lymphatics in ageing and Alzheimer’s disease. 
Article |25 July 2018

Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels
Article |01 June 2015


 

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