牡蠣(カキ)
寒い季節になると鍋料理やフライなどで牡蠣を食べる機会が増えます。ぷりっとした食感と独特の風味を持つ牡蠣は、世界中の人々を虜にしてきました。おいしさだけでなく、栄養満点の食材としても注目されています。近年では、牡蠣を原材料に使用した健康食品や化粧品が開発され、健康・美容に気を遣う層の支持を集めています。牡蠣の魅力について解説します。
「海のミルク」の別称も
牡蠣は食用としての歴史が古い貝の一つ。ウグイスガイ目イタボガキ科やベッコウガキ科に属する二枚貝の総称です。
日本ではプランクトンが豊かに存在する海面下およそ1~6mくらいの海中で養殖されます。全国各地で主に「真牡蠣」や「岩牡蠣」が収穫されています。私たちがスーパー店頭で目にする商品の多くは「真牡蠣」で、その大半は養殖されたものです。
昔から牡蠣は栄養満点の食材として重宝されてきました。含まれる栄養成分が多様なことから、「海のミルク」と呼ばれています。
お菓子の「グリコ」では、グリコーゲンが豊富に含まれる牡蠣エキスをキャラメルに加え、商品化しています。子どもたちのエネルギー源として欠かせないグリコーゲンをお菓子に加えた「グリコ」の愛情を感じますね。
牡蠣は世界各国で食用をはじめ、化粧品や医薬品の原材料としても使われています。日本でも牡蠣(牡蠣肉・牡蠣殻)の抽出物が健康食品や化粧品の原材料として人気を集めています。
主産地・広島県では300年前から養殖
牡蠣の産地は北海道から九州まで全国各地に散らばっています。そのなかで、もっとも有名なのが広島県。広島湾では300年ほど前から養殖が始まったという記録が残っています。大正時代に「垂下式養殖法」と呼ばれる手法が開発され、全国的に普及したと言われています。
広島県産牡蠣の殻は小さめで、黒紫色をしています。殻は小さめですが、身は大きくて食感が良く、風味も濃厚です。広島県産の旬は1~2月頃です。
広島県以外では、宮城県や岡山県などが名産地として知られています。このほか、出荷量は多くありませんが、九州(福岡県・長崎県・佐賀県など)や兵庫県、島根県、三重県、石川県、岩手県などでも収穫されます。
農林水産省によると、2020年の牡蠣の養殖収穫量は全国で合計15万8,900トン。トップ3は広島県の9万6,000トン、宮城県の1万8,200トン、岡山県の1万5,300トンです。
従来は秋口から5月頃まで出荷されていましたが、近年では夏場でも出荷されるようになり、年間を通じて手に入ります。
栄養満点!
良質なたんぱく質、亜鉛・鉄、ビタミンB群、グリコーゲン…
牡蠣は栄養価が高い食材として、特に冬場の鍋料理などには欠かせないものとなっています。
日本食品標準成分表によると、養殖の生牡蠣(可食部)100gあたりにたんぱく質6.9gが含まれています。牡蠣は全ての必須アミノ酸(アミノ酸はたんぱく質の最小単位)を含んでいます。必須アミノ酸は私たちの体内で作り出すことはできないので、食事から摂取する必要があります。このように牡蠣からは、必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質を摂取できるわけですね。
ミネラル類やビタミン類が豊富なことも特長。ミネラル類は亜鉛や鉄など、ビタミン類はB2やB12などを多く含んでいます。また、タウリンが多いことも知られています。
栄養面で特筆すべき点として、グリコーゲンが多いことも挙げられます。グリコーゲンは多数のブドウ糖がつながった多糖類の一種。「動物デンプン」とも呼ばれます。グリコーゲンは肝臓や筋肉に存在し、血糖値を維持したり、筋肉を動かす際のエネルギー源になったりします。
期待される効果・効能
肝機能改善、中性脂肪・コレステロール低減、貧血予防など
牡蠣にはさまざまな健康効果があります。そのうち代表的なものを紹介します。
牡蠣に多く含まれるタウリンには、肝臓に働きかけて、アルコールの分解を助ける作用があります。
また、近年の研究により、牡蠣を酵素分解したペプチドに、中性脂肪やコレステロールを低減させる作用があることが報告されています。
ヒト試験によって肝機能の改善効果を確認した研究成果も発表されています。肝機能検査値が高めの男女74人を対象に、牡蠣エキスを含有した食品を摂取するグループとプラセボ食品を摂取するグループに分けて、12週間続けて摂取してもらいました。その結果、牡蠣エキスのグループでは、γGTの有意な低下やALTの低下傾向が認められたとしています。
これらのほかにも、牡蠣はタウリンを豊富に含むことから疲労回復に役立ち、鉄を含むことから貧血予防にも役立つと言われています。
健康と美容の維持に
ここまで見てきたように、牡蠣は良質なたんぱく質、ミネラル・ビタミンをはじめ、さまざまな栄養成分を含んでいます。
あなたの健康のために、「海のミルク」と言われる牡蠣を使った料理をたっぷりと楽しんでくださいね。