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コロナで農業が変わる?食料自給の大切さや雇用が見直されるとき

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YOKARE編集部
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コロナで農業が変わる?食料自給の大切さや雇用が見直されるとき

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、給食の停止や営業の自粛により、農業関係者にも大きな混乱や影響が出ています。また、移動制限などにより、食料貿易にも大きな影響が出ています。
そこで、各国の農業や食糧事情に、新型コロナウイルスがどんな影響を与えているか調べてみると、シンガポールやフランスでは大きな課題に直面し、改善に乗り出し始めたことがわかりました。

特にシンガポールでは食料自給率が低く、10%を切っていて、新型コロナウイルス感染症拡大により、輸入先での食料生産の減少や物流の寸断が起き、価格上昇や供給不足に直面しました。輸入に依存していましたが、コロナで食糧自給率を上げよう!と目標が掲げられました。 自国で生産した食糧で国内の需要をどれくらい賄うことができるかというのは、健康的で豊かな食生活を持続する上で重要な課題となりました。

新型コロナウイルスで露呈した食料自給率が低いことのリスクとは

日々の食卓に並ぶ食事の材料には、海外で生産されたものがたくさんあります。海外で作られた食材のおかげで私たちは豊富な種類の食材を低価格で手に入れることができますが、生産を海外にばかり頼っていると、万が一食料輸入が止まってしまった場合に食糧不足になってしまいます。今年発生した新型コロナウイルス感染拡大のようなパンデミックや、気候変動による不作、今後予想される世界人口増加に伴う需要増など、食料の確保には不安定な要素が数多くあります。
パンデミックにより多くの国や地域が外出制限や都市封鎖を行った際、住民が混乱して食料品を買いに走り、スーパーマーケットの商品棚が空になった様子は記憶に新しいと思います。食料自給率が低いということは、ある日突然、遠く離れた国や地域の事情で明日の食料が確保できなくなるかもしれないリスクに晒されているということです。


コロナで輸入卵20%値上がり?!シンガポールが直面した食料価格高騰

4月後半、シンガポールでは輸入卵の価格が20%値上がりしたことがニュースになりました。この原因は卵を供給する隣国マレーシアが国境封鎖を発表したことを背景に品薄状態になり、卸値が上がったことです。マレーシアはシンガポールにとって最大の食料供給国で、卵の他に鶏肉や油、加工食品などの依存度高くなっています。
東京23区ほどの面積であるシンガポールは、小国家ながらマレー系、中華系、インド系など様々な人種・宗教が共存し、食文化も多様で豊かです。
しかし国土面積が小さい上に都市化されているため、農業を行える土地が限られており、食品の大半を世界各地から輸入してきた経緯があります。近年シンガポールは国内自給率をあげるためテクノロジーを活用した農業に力を入れていますが、パンデミックを経験し今後は自国での食料生産力がより差し迫った課題となりそうです。
シンガポールに限らず、食料自給率が低い国は輸入元の国の事情によって食品価格が高騰してしまったり、在庫が尽きてしまったりするリスクがあることを頭に入れておきましょう。

コロナで農業は人手不足?農業が失業者の受け皿に。日本・フランスの例

フランスの食料自給率が日本に比べて高いのですが、自給率の高いフランスでも農業の課題が発生しています。
新型コロナウイルスの影響で、フランスの農業生産者は深刻な労働力不足の問題に直面しました。ヨーロッパの国境が封鎖され、フランス国外の季節労働者の方々は移動するできなくなったことが原因です。
ポーランドからの農業人材に頼ってある農園を営んでいた人は、国境封鎖によって突然スタッフ不足に陥りました。ハイテク化が進んだ現在でも多くの農家は人手を必要としているのが現状です。
このような状況下、フランス政府は地域で失業中の人たちに支援を求めました。例えば高級レストランでシェフをしていた人など、パンデミックのため一時的に店舗営業ができなくなった人などがこの呼びかけに応え、農業に従事する選択をしました。

日本でも外国人技能実習生の入国制限発生で人手不足に陥る農家が出ています。農林水産省は新型コロナウイルスの影響でホテルやレストランの営業ができず雇い止めになった方など、他の産業に関わる人たちが農業に就きやすくするため、農業研修や設備導入の費用、さらに人材の居住費や人件費などを助成金として事業者に支援する「農業労働力確保緊急支援事業」を実施しています。

日本の食料自給率って何%なの?

日本の食料自給率(2018年度)はカロリーベースで37%、生産額ベースで66%となっています。日本の農林水産省は2030年までにカロリーベース総合食料自給率を45%、生産額ベース総合食料自給率を75%まで高める目標を掲げています。日本では自給率の高い米の消費量が年々減少している一方で、飼料や原料を海外に頼る畜産物や油脂類の消費が増加したため、長期的にみて自給率は低下傾向でしたが、近年は同レベルで推移しています。
都道府県別にカロリーベースの食料自給率をみてみると、東京、神奈川、大阪などの大都市圏は1~2%と低水準である一方、北海道や東北、北陸、九州地方の各県などは50~100%超えの高水準となっています。

出典:農林水産省 日本の食料自給率

世界の主要な国と日本の食料自給率を比べてみましょう。カナダ、オーストラリアは非常に高い自給率を誇り、次いでアメリカ、フランス、ドイツなどとなっています。日本はイギリス、イタリア、スイスなどよりも低水準で、主要国の中でも自給率が低いことがわかります。


出典:農林水産省 世界の食料自給率


新型コロナウイルスが流行する以前から、日本の農業は従事者の高齢化が進行して人材不足が課題となっていました。その課題を解決するためのひとつの方法が外国人技能実習生でしたが、今回は移動制限でその策が絶たれ、再び日本の農業の未来、食料自給のあり方について見直される時を迎えました。「アグリテックの力で農業を活性化!日本での事例を紹介」でご紹介したように、今後はテクノロジーの力で農業を活性化する取り組みなどに一層の注目が集まりそうです。また、今回の自粛期間中に自分で食料を育てるため家庭菜園をはじめる人や、食品廃棄を減らすための行動を取る人の発信が増えてきたように感じます。SDGsの達成期限2030年まであと10年。社会の変化を冷静に捉えながら、未来の自分のために今できることからはじめてみましょう。

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