耳たぶのしわが心疾患を予測する?「フランク徴候」とは

個人差はありますが、耳たぶに45度の角度で現れる深いシワのことを「フランク徴候」と言います。フランクサイン(Frank's sign)とも呼ばれます。
「フランク徴候」は、冠状動脈疾患の皮膚科学的予測所見として 1973 年にサンダース T. フランクによって初めて報告されたことに由来しています。
皮膚から予見する冠状動脈疾患の仮説ーーフリーラジカル・活性酸素の増加、血流の減少によって弾性線維が失われ、斜めの耳たぶのしわができると仮説が立てられました。弾性線維とは、皮膚や全身のさまざまな組織に存在し、体の弾力性をもたらしています。例えば、血管が硬くなると、血管は拡張能力を失い、必要な血液を流せなくなることがあります。さらに、血管の収縮も妨げられます。
この弾性線維の損失が、耳たぶに現れるのではないかと研究が進められました。
耳たぶはもともと血管が少なく、末端動脈が閉塞されると容易に酸素欠乏状態になり、耳たぶにしわができやすくなります。毛細血管によって血流も豊富な柔らかい耳たぶは健康な証であり、しわのある耳たぶは血流の悪い証になるということです。
耳にシワがある人は冠状動脈性心疾患になりやすいのか?
2016年に中国江蘇省南京市の南京医科大学などで行われた研究は、36~91歳の連続参加者合計558名(男性402名、女性156名)を対象に行われました。
この研究では冠状動脈性心疾患の診断に関して、片側および両側の耳たぶの斜めにしわの有病率を調べました。その結果、耳のしわは 冠状動脈疾患を識別する簡単で実行可能な方法であると述べられています。さらに、年齢、性別、喫煙状況に関わらず、耳にシワの有無は注意すべきサインだという統計結果になりました。両側の耳にシワがある人は耳たぶにシワがない人に比べて5〜7倍の冠動脈疾患が高まることがわかりました。[※1]。
耳のしわの有無が、脳卒中などの虚血性脳血管障害を予測する?
2017年の研究では、急性脳卒中で入院した241名を調査したところ、およそ78%にフランク徴候が見られました。
さらに心血管危険因子と言われいる高齢・男性・2型糖尿病、高血圧が当てはまる人においては、高い頻度でフランク徴候が見られたことがわかりました[※2]。
このことから、フランク徴候が一過性脳虚血発作や脳卒中などの虚血性脳血管障害の「視覚的なサイン」として有用かもしれないと位置づけられています。
急性心筋梗塞の予後と耳のしわが関係する?
耳たぶの斜めのしわの存在と冠状動脈疾患との関連性は指摘されていましたが、急性心筋梗塞との関係性ついては不明でした。
2021年に、急性心筋梗塞後の生存率と耳たぶのしわとの関連性が調べられました[※3]。
この結果、耳たぶのしわが急性心筋梗塞の1年間の生存期間と関連していることが判明しました。循環器疾患の「予後マーカー」として、医療現場で耳たぶの観察が簡易的なリスク評価ツールとして活用される可能性が示されました。
耳たぶのシワがあったら、どんな対策は取れる?
耳たぶのシワは心筋梗塞などの冠状動脈疾患を予見するサインになるのではないかという研究データが多く揃っています。耳たぶにシワがあったら、不安になってしまいます。
冠状動脈疾患の危険因子は下記になりますが、生活習慣で改善できるものも多くあります。
- 高血圧
- 高コレステロール
- 喫煙
- 2型糖尿病
- 肥満
- コレステロール、トランス脂肪、飽和脂肪の多い食事
- 不十分な身体活動
- 大量の飲酒
- 心臓病の家族歴
- 老齢
食事の改善、適度な運動、過度な飲酒、禁煙などは自らの意思で変えることができるでしょう。
まずは、耳たぶのしわがないか、確認してみましょう。耳たぶのしわは、フリーラジカル・活性酸素の増加、血流の減少による弾性線維の損失が影響を与えていると考えられています。毛細血管のゴースト化を防ぐことも一つの改善策として挙げられるかもしれません。
※2 Diagonal Earlobe Crease (Frank’s Sign): A Predictor of Cerebral Vascular Events
※3 Diagonal earlobe crease and long-term survival after myocardial infarction