農薬は本当に危険?食べ物の安全性について
スーパーで売られている野菜や果物に対して、「農薬は体に悪いのでは?」と不安に感じたことはありませんか?メディアで農薬の危険性が報じられる一方で、安全性を強調する情報も多く、混乱する人も少なくありません。
しかし、そもそも農薬とは一体どのようなもので、安全管理はどのように行われているのでしょうか?
この記事では、理系&現役ファーマーによる農薬の基本的な仕組み解説します。
農薬の真実を正しく理解し、健康で安心な食生活を送るための知識を身につけましょう。
農薬とは何か?種類はあるの?
主な農薬の種類には、殺虫剤、殺菌剤、除草剤があります。
除草剤は雑草の成長を抑え、農作物の栄養競争を防ぎます。
殺虫剤は害虫から作物を守ります。
殺菌剤は病原菌による被害を防ぎます。
これらの農薬によって、農作物を病害虫や雑草から守り、食料生産の安定供給と品質維持に貢献しています。
一方で、環境や健康への影響が懸念されることもありますが、法律により農薬の使用基準が厳しく管理されているため、適切に使われる限り、リスクは最小限に抑えられます。
農薬の安全基準とは?
農薬の安全性は、国際機関(WHO・FAO)や国内規制当局(農林水産省・厚生労働省)によって細かく管理されています。
主に「残留基準」「ARfD(急性参照用量)」「ADI(1日許容摂取量)」の考え方が、食品の安全性を評価する重要な指標です。
- 残留基準とは、農作物に含まれる農薬の許容濃度の上限を指します。この値は、食品の種類ごとに異なります。
たとえば、葉物野菜、果物、根菜など、作物の特性や食べる部分によって、農薬の付着や吸収量が異なるため、作物別に厳密な基準が設けられており、消費者の健康への影響がないよう設定されます。
また、最新の科学的データに基づき、農薬の使用量、使用タイミング、収穫時期などを考慮して決められます。
- ARfD(急性参照用量)とは、「急性参照用量(Acute Reference Dose)」の略で、短期間の摂取による健康影響が生じない1回当たりの許容量を指します。
たとえば、ある農薬が付着した野菜を1回食べた場合に、その農薬の摂取量がARfDを超えなければ健康リスクはほぼありません。
動物試験による「無毒性量(NOAEL)」をもとに、安全係数をかけて計算されます。
- ADI(1日許容摂取量)とは、「1日許容摂取量(Acceptable Daily Intake)」の略で、毎日摂取しても健康に影響を及ぼさない量 のことです。
同じくNOAELから算出され、ヒトへの適用に際して安全係数を考慮して設定されます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000059523.pdf
参考文献:
急性参照⽤量(ARfD)を考慮した⾷品中 の残留農薬基準の設定について|農林水産省
残留基準値超過時の対応と対策
食品から基準値を超える農薬が検出された場合、その食品は市場から即座に回収され、流通が停止されます。生産者には指導が行われ、出荷停止処分と再発防止のための対策が徹底されます。
国内流通における抜き取り検査は、常に地方自治体の食品衛生監視員が実施して監視しています。
輸入品の場合は、全国の港や空港にある検疫所で検査が行われており、違反の可能性の高い食品については、厚生労働大臣の検査命令による検査が行われています。また、食品の種類毎に輸入量、違反率等を勘案して計画的な検査が行われています。
未然防止策としては、国内で登録、使用される農薬については、残留農薬基準等を超えないような使用方法が決められ、個々の農薬のラベルに記載されるようになっています。この使用方法に従って農薬を使用すれば、収穫された農産物中の残留農薬の量は残留農薬基準を超えることはまずありません。
安全な食のために
農薬は「危険」なものではなく、適切に管理されている限り、食の安全を守る重要な存在です。
生産者側は、”基準値”を守ることが責任です。
消費者(加工業者含む)としては、「有機JAS認定食品」や「GAP認証品」を選ぶことが、今後の主流になっていくのかもしれません。