食を通じて、カーボンニュートラルを実現する方法
カーボンニュートラルとは、CO2など温室効果ガスの排出を減らし、吸収・除去した全体としてゼロとする目標として知られています。あらゆる分野で温室効果ガス排出量を削減する必要があり、食品も例外ではありません。ここでは食を通したカーボンニュートラルの取り組みを考えていきます。
カーボンニュートラルの実現に向けた国際的な動き
カーボンニュートラルへの取り組みが活発になった大きな契機はパリ協定です。パリ協定は2015年12⽉のパリにおけるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されました。
気候変動に対する国際的な取り組みとして重要な枠組みが定められました。
パリ協定では、下記の⽬標を掲げています。
- 世界の平均気温上昇を、産業革命前の水準に比べて2℃よりも十分に低く保ちつつ、可能な限り1.5℃に抑える努力をする
- 世紀後半において、温室効果ガスの排出量と吸収量をネットゼロにする
日本は2020年に菅内閣総理大臣が、2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。
我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
温室効果ガスとは、温室効果ガスは、地球の大気中に温室効果をもたらすガスです。
日本における温室効果ガス別排出量は下記になります。環境省及び国立環境研究所から公表された「日本の1990-2021年度の温室効果ガス排出量データ」 (2023.4.22発表)です。
排出量* | 全体に占める割合(%) | |
---|---|---|
二酸化炭素(CO2) | 1064 | 90.90% |
メタン(CH4) | 27.4 | 2.30% |
一酸化二窒素(N2O) | 19.5 | 1.70% |
ハイドロフルオロカーボン類(HFCs) | 53.6 | 4.60% |
パーフルオロカーボン類(PFCs) | 3.2 | 0.30% |
六ふっ化硫黄(SF6) | 2 | 0.20% |
三ふっ化窒素(NF3) | 0.4 | 0.03% |
合計 | 1170 | 100% |
*四捨五入のため、合計が100%にならない場合があります
主な温室効果ガスには下記のように性質があり、過去の排出による温暖化の影響が消えるまでには長い時間がかかります。
二酸化炭素(CO2 )– 炭素と酸素の化合物。
数百年持続する温室効果ガス。
石炭や石油などの炭素を含む燃料を燃やすことで発生(電気や熱、車両の動力として化石燃料を燃やすなど)。
他には原油やガスの精製プロセス、発酵(アルコールや医薬品の製造など)、植物の腐敗で発生。
亜酸化窒素(N2O)
大気中に 100 年以上持続する強力な温室効果ガス。
窒素ベースの肥料に含まれます。
メタン(CH4 ) – 炭素と水素の化合物。
天然ガスの主成分。大気中に10年ほど持続する温室効果ガス。
家畜、森林や湿地の変化、ガス井やパイプからの漏れから発生します。
ただし、必ずしも温室効果は悪者というわけでもないのです。オゾンは厳密には温室効果ガスです。また、温室効果がなければ、気温は -18°C (-0.4°F) まで低下してしまい、寒くなってしまいます。
現在の温室効果ガスの問題は、温室効果ガスの放出量が劇的に増加したことにより、地球の自然な温室効果が変化していることです。成層圏のオゾンを分解し、オゾン層に穴を作ることも問題です。
食から取り組める?カーボンニュートラルの実現
温室効果ガス排出量を削減するために何ができるかという議論では、化石燃料からの脱却がフォーカスされます。もちろん最も優先されるべき事項ではありますが、あらゆる分野で温室効果ガス排出量を削減する必要があり、食品も例外ではありません。
世界の温室効果ガス排出量の3分の1は、食料の生産・流通・消費から生じていると言われています。[※2]
ここでは食を通したカーボンニュートラルの取り組みを考えていきます。
人間の健康を改善し、より持続可能なものにするために、食生活を変更したり、食品生産から消費までのシステムを改善したりする必要があることが指摘されています。
乳製品、肉、卵による排出量の割合が大きい
Joseph Poore と Thomas Nemecek によってScience 誌に掲載されたサプライチェーンのどの段階から排出が発生しているかを確認できる分析データです。
1kgの牛肉を生産すると、60kgの温室効果ガス (CO2換算) が排出されます。一方、エンドウ豆は1kgあたりわずか1kgしか排出しません。
牛や羊は草や植物を消化するときにメタンを排出します。牧草地での牛の排泄物や牛の飼料として作物に使用される化学肥料は、別の強力な温室効果ガスである亜酸化窒素を排出します。
オックスフォード大学Michael Clarlらも世界の食糧生産が気候に与える影響を分析し、Science 誌に掲載されました。食生活の変化や食料システムのその他の変化が地球温暖化に影響を与えるのに間に合う可能性があると指摘しています。
私たちはそこまでカロリーが必要なほど活動しているのでしょうか。適切な量と健康的な食生活を心がけましょう。牛肉は高級だから好きな人もいるのではないでしょうか。本当に体に必要で美味しいと感じるものは何か、体が求めているのは何かーー食を通したカーボンニュートラルの取り組みの第一歩かもしれません。
現在は、何をどれくらい生産して食べるのかを最適化することが、食を通じたカーボンニュートラルの実現への取り組みに対しては効果が大きいと考えられています。
食品の輸送、包装、食ロスなども
他には、食品の輸送、包装、食ロスなども課題とされています。
世界で生産される食料の推定 3 分の 1 が廃棄されています。食物が埋め立て地に送られて腐ると、二酸化炭素よりもさらに強力な温室効果ガスであるメタンが生成されます。
参考資料
※2 Food systems are responsible for a third of global anthropogenic GHG emissions