ランニングと貧血の関係?鉄分をしっかり摂取して快適なランを
定期的にランニングをしている人の中には「練習をしているのに、タイムがまったく伸びない」という課題を感じている人がいたら貧血かもしれません。 こまめに走っていても身体が重い状態が続くようなら、練習不足や加齢ではなく、貧血を疑ってみてください。 今回はランニングしている人に起こる貧血と貧血の診断方法、貧血を改善する食材などを紹介します。
貧血とはどんな状態のことを指すのか
私たちの身体は、血液が酸素を身体のすみずみまで運んでくれることで、健康な状態を保っています。 血液は赤血球・白血球・血小板の細胞成分と液体成分の血漿(けっしょう)で構成されており、赤血球の中にある血色素(ヘモグロビン)が酸素を運搬する役目を担っています。
このヘモグロビンが少なくなると、身体に酸素が行き渡らず酸欠状態に。これが貧血と呼ばれる症状で、身体にさまざまな影響を及ぼすのです。
下記の値に入っていれば、健康である目安になります。男性は13g/dl、女性は11g/dlを下回ってくると、貧血と診断されます。
- 男性:13.5~17.6g/dl
- 女性:11.3~15.2g/dl
ランニングをしている人が貧血になるとどういう症状が現れるのか
ランニングをしている人が貧血になると、貧血ではなかったときと比較して、軽快に走れなくなります。以下のような症状がスポーツ貧血の特徴としてあげられます。
スポーツ貧血の症状
- 疲れやすくなった
- 速く走れなくなった
- スタミナが続かなくなった
- 日中の眠気がひどい
- 寝起きが悪い(寝起きの身体が重い)
- 集中力が低下した
貧血になると現れる症状
- スプーン爪
爪は通常は指の形と同様に、内側にカーブしています。ところが貧血になると、爪の強度が低下して薄くなり、先端が反り返って、スプーンのような形になってしまいます。
- 氷食症
氷食症とは、その名の通り、氷をバリバリと食べてしまう症状のこと。なぜこのような症状が出るのか、はっきりした理由は分かっていませんが、貧血になると「氷が食べたくて仕方なくなった」という声が多く聞かれます。 - 口角が切れる
笑ったときや大きな口をあけたときに、口の端っこがピリッと切れることがあります。
ランニングをしている人が貧血になりやすい理由
ランニングを日頃からしていると、体力が十分にあって貧血など無縁だと思ってしまいがちです。しかし、実は貧血に陥りやすい理由がいくつもあるのです。
足の着地時の衝撃により赤血球が壊れる
「赤血球ってそんな外的な衝撃で壊れるの?」と思われるかもしれませんが、スポーツ貧血の最大の原因が、着地時の衝撃で起こる赤血球の破壊によるものです。 ランニングの着地時には、体重の約3倍の衝撃が足の裏にかかります。そのたびに足の裏で赤血球が壊れます。走る距離が長くなれば長くなるほど、赤血球が失われる恐れがあるのです。 対処法としては、衝撃の強さを緩和すること。普段の練習では、底の厚いクッション性のあるシューズを履くことで、足裏への負担を軽減できます。
発汗により血液中の鉄分が流れてしまう
ランニングは大量の汗をかくスポーツです。汗が体内から流れ出るときに、鉄分も一緒に喪失します。特に春から秋にかけての走りやすい季節は、大量の汗をかき、鉄分が失われがちになってしまうので、注意が必要です。
生理で毎月血液が失われてしまう女性ランナーは、より一層貧血に気をつけなければいけません。 生理の後、元気の出ない日が続いたりするようであれば、貧血の可能性が疑われます。
ランナーが貧血に気づきにくい理由
ランナーはこんなにも貧血に陥りやすい状況にあるのに、なかなか貧血に気づきません。なぜかというと、「ランニングで培った体力」と「徐々に貧血状態に対応していく身体」という2つの理由があるためです。 運動をする習慣のない人であれば、階段の上り下りなどで息切れをするようになり、体調の異変に気づくことができます。しかし、ランニングを日常的に行なっている人は、基礎体力と気力があるために、身体からのサインを見逃してしまいがちです。 ヘモグロビン値は急に下がるものではなく、徐々にゆっくりと下がっていくので、身体が低酸素の状態にその都度適応してしまうという側面もあります。
貧血かどうかを確かめる方法
あっかんべーで下まぶたの裏をチェック
貧血になっているかどうかを確かめる一番手軽な方法は、下まぶたの裏をチェックすること。鏡の前で、あっかんべーをするときのように、下まぶたの皮膚を引っ張ってみてください。 下まぶたの裏側は毛細血管が張り巡らされているため、健康な状態であればピンク~赤色をしています。貧血が進むと、血が行き渡らなくなり、白っぽい色になります。 普段から自分の下まぶたの裏の色をチェックしておくと、もしものときに確認しやすいですね。
血液検査をしてもらう
一番確実な方法はクリニックで血液検査をしてもらうことです。 内科を標榜しているクリニックならば、「スポーツをしているので、血液検査をしてほしい」と頼めば、どこでも対応してくれます。 採血の後、数日程度で血液数値がデータとなって出てきます。 血液検査の数値から貧血であることが判明した場合には、貧血の度合いによって、鉄剤等が処方されます。医師の指示に従って、服用するようにしましょう。
ランナーが貧血にならないための予防策
ランナーが貧血にならないために大切なのは、食事の中で鉄分をしっかり摂取すること。鉄分だけ摂るのではなく、たんぱく質とカルシウムも一緒に摂取することが大切です。そうすることによって、鉄分が効率的に体内に吸収されます。
成人男女の理想の鉄分摂取量は1日10mgとされています。鉄分を失いやすいアスリートは、その1.5〜2倍が目標量となる。15g~20gを目標にできるだけ食物から摂取するようにしましょう。
- 一般成人の推奨摂取量:10mg
- ランナーの推奨摂取量:15~20mg
鉄分を多く含む食材を摂取しよう
食材に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄にの2種類に分けられます。ヘム鉄は溶けやすいため、約30%が吸収される一方、非ヘム鉄は7%ほどの吸収率となっています。つまり、ヘム鉄で摂る方が効率的と言えるでしょう。 ただしバランスよく栄養を摂取するためには、非ヘム鉄も積極的に食べたいものです。
ヘム鉄を含む食材例
- 豚レバー
- 鶏レバー
- 牡蠣
- マグロの赤身
非ヘム鉄を含む食材例
- ひじき
- 高野豆腐
- 乳製品
- たまご
- しじみ・あさり
- ほうれん草・小松菜
サプリメントの力を借りてもOK
普段の食事だけでは理想の鉄分摂取量に届かない場合は、サプリメントの力を借りるのもひとつの方法です。 鉄分サプリは多く販売されているので、自分に合うものを探してみましょう。
鉄分摂取の注意点
貧血が改善されるとランニングは驚くほど楽になりますが、だからといって鉄分を過剰に摂取するのは危険です。過剰な鉄分摂取は、肝臓や心臓などの機能障害を引き起こす可能性があります。1日の鉄分摂取の上限量は男性で50mg、女性で40mgです。過ぎたるは及ばざるがごとし。適量を摂取するよう心がけてください。