スポーツトレーナーが実感する「コロナでの行動制限による実態」
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言、ならびに外出制限によって外に出る機会が極端に減った方も多いのではないでしょうか。「通勤することがここまで運動になっていたとは」と思うビジネスマンの声を聞く機会も増えてきました。実際に整体院でお客さんと接する中で感じたことをご紹介します。
スポーツをしている方のケガが増えた
昨年のスポーツシーズンを見ていると、明らかに例年に比べてケガをする選手が増えました。これはプロスポーツ選手だけでなく、私がトレーナーをつとめているチームでも同じ状況です。
急激な運動量の増加によるケガ
活動が制限されている時にできる運動は限られており、できることと言えば筋トレやランニングが一般的です。ダッシュや急激な方向転換の練習、人と対面して行う練習、コンビネーションの練習などはなかなかできないのではないでしょうか。
瞬間的に力を出す時にはたくさんのエネルギーが必要となり、その瞬間に筋肉には大きな負荷がかかるため肉離れなどのケガが多発します。プロ野球やJリーグのデータを見ても、明らかに肉離れなどの筋肉系のケガが増えており、強度の高い練習が不足していたのではないかと推測できます。 また、対面やコンビネーションなどの練習の場合、周りの状況を目で見て判断する、とっさの動きに反応するという反射的な動きが必要になります。そのちょっとした反応が遅れたことで余計な接触が増えたり、足首をひねってしまうということもありました。これも練習時間の減少による弊害ということができます。
ビタミンD不足による骨折や肉離れ
順天堂大学から2020年11月に発表されたプロサッカー選手の血液データによると、ビタミンDの値が例年に比べて極端に低くなっていることがわかりました。[※1]
ビタミンDは食事からの摂取だけでなく、日光浴により体内で生成されることがわかっています。おそらく外出自粛によりチームでの練習時間が制限されてしまったことで、屋外でトレーニングを行えなかったことが原因ではないでしょうか。 ビタミンDが不足すると、カルシウムが骨に定着しなくなり骨折が増える、筋肉の反応が遅くなり肉離れを起こしやすくなると言われています。シーズン中にケガが増えたのも急激な練習量の増加だけでなく、ビタミンDの影響もあるのではないかと思われます。
[※1]新型コロナウイルスの流行下におけるビタミンD不足に警鐘! ~プロサッカー選手の血液データ解析から得られたこと~|順天堂大学医学部附属 順 天 堂 医 院
デスクワーカーの運動不足
スポーツ選手だけでなく、デスクワークなどを行っている方にも大きな影響が出ています。明らかに運動をする機会が少なくなり、体重の増加だけでなく、腰痛や肩こりを訴える方が増えました。
運動不足による体重の増加
店舗にくる方で一番多い相談が、歩く量が極端に減ったことで体重が増えたというもの。例えば、家から駅まで徒歩10分、駅からオフィスまで徒歩10分だとすると単純に考えても往復だけで40分は歩きます。だいたい1分間で100歩と言われていますので、40分で4000歩。それに乗り換えやお昼の休憩、途中の買い物なども含めると1日で6000歩くらいが平均ではないでしょうか。 それがリモートワークで家にいると、意識して外に出ないと1日1000歩くらいという方もたくさんいらっしゃいました。意識して5000歩を歩くのは「やるぞ」と気持ちを高めないとなかなかできないかもしれません。 では6000歩で消費できるカロリーはどれくらいかといいますと、だいたい200〜300kcal。これだけ見ると大したことなさそうですが、これが毎日となるとボディブローのように差が開いてきます。さらに筋肉を使うことで代謝も上がるので、日常生活で消費するカロリーはもっと差が出てきます。
運動不足による腰痛や肩こり
運動不足によるもう一つの影響が腰痛や肩こり。本当に体が凝り固まっていると感じる方が増えました。家でデスクワークをしているとあっという間に時間が過ぎるだけでなく、動く範囲も自分の手が届く範囲だけ。そうなると大きな動きができないので体が凝り固まります。 歩くことのメリットはカロリーの消費以上に、血流促進の方が大きいかもしれません。疎かにできない動きは足首の曲げ伸ばしを行うこと、腕を振ること。この2つの動きが血流の促進に欠かせません。 歩く時の足首の動きはカカトからついてつま先で蹴る。この二つの動きをすると足首を自然に動かすので、足に溜まりやすい血液を上半身に戻しやすくなります。また、腕をふることで肩甲骨まわりを動かすだけでなく、体も自然にひねるので腰痛対策としても万全です。
体を整えるには定期的な適度な運動が一番
スポーツをしている方にとっては、やっと動けるようになったからと急に運動量を増やすのは禁物。徐々にペースをあげていかないとケガをしてさらに動けなくなるかもしれません。 デスクワークの方は、定期的に動くクセをつけるようにしましょう。時間で区切って散歩をする、テレビを見ながら足踏みする、など通勤時間でできていたことを少しでも意識すると体も快調に整えることができます。