冬のウォーミングアップで気を付けること
スポーツの前に行うウォーミングアップ。大切だとはわかっていても、なんとなく面倒くさくて適当に流していませんか?私自身も学生時代は毎日のルーティンとして特に考えもせずに行っていた時期もありました。ところが、ケガも増えてしっかりと体と向き合うようになるとウォーミングアップの意味もわかり、自然とケガも減っていった経験があります。この記事ではウォーミングアップを行う目的であったり、夏と冬で内容を変えるべき理由などを紹介します。
ウォーミングアップの目的
なんとなく意味を感じにくいウォーミングアップ。その最大の目的は、筋肉の温度と体の深部の体温を高めてパフォーマンスの向上やケガの予防につなげることにあります。試合のスタートは動きが悪く、後半になってようやくエンジンがかかってくる、という方はアップ不足かもしれません。
筋温を上げる意味
私たちが脇の下で測る体温は平均して36℃前後で推移しており、表面に近い筋肉の温度もだいたい同じくらいで推移しています。さらに深部にある直腸などは37℃前後と言われており、深部の体温に関しては体の免疫機能を守るためにもよほどのことがない限り大きな前後はしません。
ウォーミングアップを行うことで筋温は39℃前後まで上昇し、関節が滑らかに動きやすくなったり、筋肉のパワーが上がったりとスポーツをする人にとってはいいこと尽くめです。ただし、筋肉の温度は上がりやすいものの、少し時間が空くと下がるのも早いです。ここで大事になってくるのが深部の体温です。
深部の体温はよほどのことがない限り前後はしないと言いましたが、ゆっくり時間をかけて行うことで徐々に上昇し、一度上昇するとなかなか落ちないという特徴があります。この“ゆっくり時間をかけて”というのがだいたい15〜20分。学生時代に部活をされていた方は思い出してほしいのですが、部活のウォーミングアップってだいたい15〜20分くらいじゃなかったですか?この時間には実はちゃんと意味があったのです。
深部体温がしっかり上昇することで体温が落ちにくくなり、結果として筋温も高いまま下がりにくい状態をキープできるということです。
関節の動きが滑らかになる
関節には滑液という粘り気のある液体が存在し、骨の摩擦を軽減したり、関節の動きを滑らかにする潤滑油のような役割があります。この滑液は温度によって状態が変化するのが特徴で、温度が低い状態ですと粘りっこく、高くなるにつれてサラサラになります。
ウォーミングアップを行うことで滑液の粘性が低下して、関節の動きが滑らかになり動きやすくなります。寒い冬の時期は関節がこわばっていると感じる方も多いと思います。まさにこれは滑液の状態によるものであり、ウォーミングアップを入念に行わないと関節がスムーズに動かずにケガをしやすくなったり、思ったようなパフォーマンスを発揮できないということになりやすいです。
筋肉のパワー発揮が上がる
心拍数の高まりとともに交感神経優位の状態となり、脳から筋肉への指令が届くスピード(神経―筋伝達速度)が向上すると言われています。
そうなることで筋肉の最大パワーが10~16%も上昇することがわかっており、パフォーマンス向上につながります。
呼吸や循環系の機能を適応させる
私たちは平均60回くらいの心拍数で生活しており、運動時には120以上まで上昇し、急なダッシュなどを行うと150を超えることも珍しくありません。心臓が何も準備していない状態からいきなりここまで心拍数を上げてしまうと心臓に大きな負担がかかってしまい命の危険も伴います。
そうならないためにもゆっくりと心拍数を高めて血液の流れを良くしていく必要があります。特に冬は心筋梗塞や脳卒中といった血管系のトラブルが起きやすい時期でもあるため注意するようにしましょう。
心臓へのリスクを減らすだけではなく、酸素を体内に取り込む能力も向上するためパフォーマンス向上にもつながります。
冬のウォーミングアップで気をつけること
夏の時期は気温が高いため、少し動くだけでも体温は上昇しやすくウォーミングアップの時間を少なくしても問題ありません。ところが冬はもともとの気温が低いだけでなく乾燥していることもあり、夏よりも入念に時間をかけて行うようにしましょう。
暖かい服装で行う
冬のウォーミングアップで一番気をつけることは、しっかりと上着を身につけて行うこと。せっかく動いていても外気温が低いとなかなか体温を上昇させることができません。特に深部まで温めようとすると防寒対策を行わないとウォーミングアップの効果を実感しにくいのも事実です。
ベンチコートなどを羽織って動き出し、体が温まってきたら少しずつ動きやすい服装に身軽になっていくというようにしておきましょう。喉が乾燥しやすいと感じるようでしたらネックウォーマーなどで喉を温めておくこと、手袋や帽子なども身に着けておくと温度が逃げにくくなります。
いきなりピッチをあげすぎない
冬はなかなか体が温まらないからといきなり動きを強くしすぎても、体は準備できていないので疲れるだけです。心拍数100~120前後のジョギングなどからゆっくりスタートするように意識しておきましょう。
ダイナミックストレッチなどがおすすめ
ひと昔前ですとその場で行うスタティックストレッチがウォーミングアップとして行われていました。夏ですと体温が上がりやすくそれだけでも何とかなるかもしれませんが、特に冬の寒い時期にスタティックストレッチだけですと筋温は上がりません。
筋肉の温度を上げて関節の動きを滑らかにし、心拍数を落ち着かせるためには、関節を大きく動かしながら行うダイナミックストレッチがおすすめです。
特に肩まわりや股関節まわりなど大きく動かす関節を中心に、関節の可動域を徐々に広げていくようにしてアップを行うと心も体も準備が整います。