話題の美容トレンド「フリーフロム」を知っていますか?
余計なものはいらない、入れない
日本の化粧品会社で今、「フリーフロム(free from)」の考え方を取り入れた商品が多数、販売されるようになってきました。
フリーフロムとは、成分に余計なものはいらない、入れない、シンプルに、という考え方。
たとえば、フリーフロムの考え方を取り入れたスキンケア化粧品が、7つのフリー処方として、「界面活性剤、防腐剤(パラベンなど)、エチルアルコール(エタノール)、シリコン、鉱物油、合成香料、着色料」のフリー(無添加)を実現しています。
肌への優しさを追求し、安心・安全に使える成分の処方を目指した化粧品です。
スキンケア化粧品を探すときに、意識して見回してみると、フリーフロム化粧品を目にすることがあるのではないかと思います。
海外では、「動物由来原料」フリー、「遺伝子組み換え(GMO)」フリー、さらには成分以外に「動物実験の実施」フリーなども、フリーフロムの考え方の中にすでに入ってきています。
フリーフロムで急成長した米国ブランドが日本へ
2012年、米国のテキサス州で誕生したフリーフロムの代表的なブランド「ドランクエレファント(DRUNK ELEPHANT)」が、2020年、資生堂に買収されたことも話題になっています。
ドランクエレファントは、2019年に売上高100億円を突破。北米で急成長した話題のスキンケアブランドです。
ドランクエレファントのホームページに紹介されている創業者ティファニー・マスターソンさんのブランド哲学(世界観)では、「疑わしき6原料」として、「精油(エッセンシャルオイル)、エタノール、シリコン、紫外線吸収剤、香料/染料、界面活性剤」をあげていて、肌によくないと思った成分を徹底的に排除しています。配合成分にも、動物実験の実施フリーを宣言。
フリーにする(入れない、いらない)ことで、肌がリセットされて、回復していくのだと言います。ダイエットと同じかもしれませんね。
このドランクエレファントの化粧品は、「クリーンスキンケア」「クリーンビューティ」などとSNS上でも話題となっていて、肌トラブルを改善するためのものづくりを根幹とした、商品開発を行っています。
フリーフロムが注目される背景には、今、私たち消費者が、商品の背景にある哲学やストーリーを重視する傾向にもあるではないでしょうか。
オーガニック、ナチュラル食品が選べる時代だから
食品についても、同じです。
農薬や化学肥料などを使用しない有機栽培を行って、公的なオーガニック認証を受けている商品。化学合成された薬品や飼料の使用を可能な限り抑えて、生産、飼育されたナチュラルな商品、に注目が集まっています。
ヘルス&ウエルネスの分野は、世界的に急成長しています。日本でも健康やエコに関心の高いナチュラル志向の人は増えていて、「オーガニックの商品」「添加物の入っていない食品」の要望が高まっています。
2020年は、それが化粧品にも浸透してきた年と言えるでしょう。怪しい成分、余計な成分を使わないフリーフロムが美容のトレンドとなってきています。
自分のニーズと地球環境を考える「コンシャスな美」へ
さらに、化粧品業界の調査会社のレポートでは、2021年は「コンシャスビューティ」の流れがあるとの指摘もあります。
コンシャスとは、意識的、自覚的、という意味。「意識的で自覚的な美」へ、という流れです。
この流れは、私たちに与えた新型コロナのインパクトの強さが要因ではないか、と思います。
コロナ禍で、地球上の人類がこれまでにない高水準の健康意識をもつようになりました。その影響で、さらにサスティナビリティ(持続可能性)を追求する視点も高まっています。
将来に渡って、持続可能な消費行動をとることの重要性を肌で感じているのです。
私たちは、自分の肌タイプに合ったケアを探すだけでなく、自らの商品購入によって生じる倫理的、環境的な影響と、自分にもたらす利益を同時に考えて、選択するようになっています。
多すぎる商品の選択肢、認証基準の不明確さ、わかりにくい表記、疑わしい成分をできるだけ排除するフリーフロムの考え方がさらに一歩進んで、自分自身のニーズと地球環境のバランスを考える「コンシャス(意識的)な商品」を選ぶようになっていくのではないでしょうか。
フリーフロムから、コンシャスビューティ(意識的に選択する美)へ。これが、新型コロナを経験した私たちの美容トレンドです。
増田美加/女性医療ジャーナリスト
エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。
女性誌『婦人画報』『GINGER』『MyAge』、女性WEBマガジン『MYLOHAS』『GINGER web』『女子カレLOVABLE』『講談社現代ビジネス FRaU』ほかで女性のヘルスケアや医療の連載を行う。テレビ、ラジオにも出演。乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)、『後悔しない歯科矯正』(小学館新書)ほか多数。新刊(2021年4月2日発売予定)『もう我慢しない! おしもの悩み ~40代からの女の選択』(オークラ出版)が話題。