痙攣やこむらがえりに芍薬甘草湯
芍薬甘草湯とは?
「芍薬」と「甘草」だけで構成されているシンプルな漢方薬です。 古くから、痛みを止める頓服薬として比較的多く使われています。 「傷寒論(しょうかんろん)」という中国・漢代の医学書に載っている処方で、昔から速効性があるということで知られています。
芍薬
牡丹科の多年草で、高さ約60㎝ 葉は、二回三出複葉です。 芍薬は、「立てば芍薬、座れば牡丹」と言われるように牡丹と並んで高貴な美しさを漂わせ、豪華でエレガンスな花を咲かせます。
5月ごろ、ボタンに似た径10センチメートル内外の花を一個つけます。 花色は淡紅・紅・白などで雄しべは時に弁化して扇咲きや八重咲になります。 日本へは古くから中国から薬草として渡来しました。 生薬では、芍薬の根を乾燥したものです。 根には、配糖体であるペオネフリン、アルカロイドであるペオニンが含まれます。
甘草
マメ科の多年草で高さ1メートル内外。 中国東北部から中央アジアおよび南ヨーロッパの乾燥地に分布します。 ショ糖のおよそ150倍の甘味を有すると言われており、グリチルリチン酸を多く含み、文字通りの「甘い草」です。
甘草は、紀元前から薬として用いられています。 生薬としては、根や根茎を乾燥したものを用います。
漢方の歴史
かつて日本ではさまざまな文化と技術を中国から輸入してきました。医学もその一つです。 6世紀頃には、朝鮮半島を経て、中国の医学が伝えられたと言われています。 7世紀以降には、中国の文化とともに様々な医学書が輸入されていました。 当初、日本では中国医学をそのまま受け入れていました。 次第に、診断方法や漢方処方の選び方などをもっとわかりやすくして日本人の体や日本の気候や環境に合わせて改良するようになりました。 これが、日本の「漢方」です。 漢方薬の原料は、草や木、動物など自然にあるものです。 植物などに備わった力を一つ一つ、確かめ組み合わせていってできたのが漢方薬です。 漢方の治癒原則とは、
- 熱ければ冷まし
- 冷たければ温める
- 足りないものは補い
- 多すぎるものは取り除く
といったように体が本来もつバランスを整えていきます。 また、漢方は一つの症状だけを見るのではなく、体全体さらにその人そのものを診ます。心と体は繋がっているという考えから心の働きも一緒に考えます。
芍薬甘草湯の効果・効能
- 手足のつり
- こむらがえり
- 筋肉のけいれん
- 尿路結石による腰痛
- 腹痛
- 急性胃炎
芍薬甘草湯が足のつり、こむらがえりしやすいに効く理由
芍薬甘草湯は、特に、足のつりやこむらがえに効果があるとして知られています。 足のつり(こむら返り)は筋肉が過剰に収縮してしまうことで局部的に痛みが発生する現象です。 芍薬と甘草、この2種類の生薬の総合的な働きで、筋肉組織細胞のイオンバランスを正常にすることで過剰な神経伝達を遮断し、筋肉の過剰な収縮を抑え、足のつりを改善します。 そして、短時間で効果を発揮します。 なんと、効果発現時間で平均6分と言われています。 効果持続時間は、4~6時間ですので、夜間に足がつる方は、就寝前に服用し朝方につった時に頓服でも十分効果を発揮します。 ただ、こむらがえりを起こしやすい方は、常日頃から水分補給や塩分・ミネラルの補給もマメにすることを心掛けるようにしてください。 芍薬甘草湯は、不足してしまった「気」と「血」を補い、筋肉の急なけいれんを鎮める漢方です。 筋肉がつった状態は、漢方でいうと「気」と「血」が一時的に不足している状態です。つまり 動力と栄養分が足りなくなった状態と言うのが漢方の考え方です。 就寝中に足がつる(こむらがえり)、激しい運動をして汗をかいた等のときには、不足した動力と栄養分を補給することで対処します。 体力に関わらず、使用できます。
「気」「血」「水」
では、「気」「血」とは、具体的にどのようなどのような事なのでしょう。 漢方で考えられる身体を巡る3つの要素をみていきます。 漢方の物差しとしてカラダを支える3つの大黒柱があります。 それが、「気」「血」「水」です。
「気」の柱
目にはみえないが、一種のエネルギーが全身を巡って基本的な生命活動を維持していると考えられています。 また、人の体を支える全ての原動力のようなものとされています。 漢方では、「気」の要素に異常が起きた時イライラや気分の高ぶり、不眠などの症状が現れると言われています。
「血」の柱
全身を巡る栄養素などの循環や、血液の流れのことなどで、全身の器官や組織に栄養を与えるものです。 漢方では、「血」の要素に異常が起きた時、血行障害によって血が滞った「瘀血」や生理不順、貧血などが現れると言われています。
「水」の柱
血液以外の水分や体液を指すものです。 飲食物中の水分を消化吸収によって、人間の体に必要な形にして体を潤すものです。 漢方では、水」の要素に異常が起きた時、水分や体液のバランスによりむくみや、排尿障害などを引き起こすと言われています。 この、3つの大黒柱をしっかり整えることが、大切です。 芍薬甘草湯は、不足してしまった「気」と「血」を補うことができるため、改善も大きく期待されます。