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美容と健康の大敵「ゴースト血管」と対策〜高倉先生に聞く〜

カラダ
YOKARE編集部
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美容と健康の大敵「ゴースト血管」と対策〜高倉先生に聞く〜

体のすみずみまで張り巡らされる血管。なかでも血管の9割を占める毛細血管が細くなる、あるいは劣化して減少すると見た目の老化や、思わぬ病気を引き起こすことが近年わかってきています。血管が体内で果たしている役割や、“ゴースト血管”化を抑えるための対策を、血管生物学の専門家である高倉伸幸先生におうかがいしました。

高倉伸幸 大阪大学 微生物病研究所教授

医学博士。三重大学医学部卒業後、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。2001年、金沢大学がん研究所教授に着任。2006年より現職。2014年より2018年まで日本血管生物医学会の理事長を務める。専門は血管形成、幹細胞など、血管治療に対する薬剤開発や生活習慣病やがん治療に役に立つような研究に従事している。

血管の9割を占める毛細血管 生命維持の重要装置のワケ

最近、テレビや情報誌などで“ゴースト血管”という言葉を目にするようになりました。”ゴースト血管”とは、どんな血管のことを指すのでしょうか?

 

 

高倉先生 “ゴースト血管”のお話をする前に、まずは、血管の基本情報からご説明しましょう。私たちの体は37兆個の細胞から構成されています。血管は全身の細胞に酸素や栄養を届けるために欠かせない器官です。私たちの体の80%が血管で、成人の血管をすべてつなげるとその長さは数万キロメートルにもなります(諸説あり)。また、全血管のうち95~99%が毛細血管であるという特徴があります。 この毛細血管をさらに細かく見てみると、毛細血管は「血管壁細胞」(以下、壁細胞)と、さらにその内側に「血管内皮細胞」(以下、内皮細胞とする)が二重構造になっています。 いわゆる「ゴースト血管」とは、この内皮細胞と壁細胞が何らかの原因でダメージを受けることで起こります。ダメージにより血管の構造が不安定になり、血液の中の酸素や栄養分のほか血液そのものが漏れてしまい、血液をうまく流すことができなくなった状態、これが「ゴースト血管」です。 わかりやすい例として、ホースで考えてみましょう。ところどころ穴の開いたホースに水が流れているとします。穴が小さければ勢いよく水が穴の部分から吹き出て、周囲に水をまけますが、大きく穴が開いた場合、破れた部分から水が大量に漏れてしまい、出口まで水が流れなくなってしまいますよね。血管の構造が不安定になり壁に穴があいてしまい、水浸しが起こっている状態です。ホース(血管)の先端部分は虚脱して水がまけなくなってしまいます。 このようにゴースト血管化が進むと毛細血管の数が低下し、組織に酸素や栄養が運ばれなくなります。酸素・栄養不足の状態が続くと、組織細胞や血管細胞の劣化や細胞死が起こり、体の様々な器官に影響が出ることにつながります。

ゴースト血管のはじまる年代と関連する症状

ゴースト血管化がはじまる年代というのはあるのでしょうか?

高倉先生 一般的に、加齢とともに徐々に血管は衰えてゆきます年代の目安としては30代です。特に、女性の場合は、エストロジェンの分泌が減る更年期がターニングポイントです。エストロジェンは、血管保護作用があるのですが、それが分泌されなくなってしまうため、血管が一気に弱くなります。 加齢だけでなく、生活習慣も血管にダメージを与える原因のひとつです。血糖値が高かったり、コレステロール値が高いといった生活習慣病の原因となるものは血管の健康にもよくありません。 ゴースト血管は、見た目の老化、シミやしわ、むくみなどの原因となります。皮膚だけではありません、肝臓など臓器においては、アルコール分解能が落ちて、それまで飲めていたお酒が飲めなくなるといったように日常生活にも影響が出てくる可能性があります。もちろん、肺や、筋肉や、どこの組織でも同じです。 血管は全身の生命維持に関与しているので、血管が衰えることで全身の機能にも影響を及ぼします。ゴースト血管が、いくつかの疾患とか関わっていることもわかっています。 そのひとつが骨粗鬆症です。骨粗鬆症は毛細血管が完全に弱って、本来であればターンオーバーで新しく骨細胞を作るのが、それができなくなって骨幹端(骨の関節よりの部分)にある網目状の部分である海綿骨の部分が作られなくなり、自分の体の重さを支えることができなくなり骨折してしまいます。 もうひとつ、有名なのが認知症です。認知症は脳内で作られるアミロイドβと呼ばれる物質が蓄積することが引き金で生じます。アミロイドβは血管を保護する作用もありますが、一方で、輩出されず脳内に蓄積されると、タウ蛋白など神経伝達に悪影響を及ぼす物質の蓄積を亢進させてしまうのです。

「ゴースト血管」になりやすいのはどんな人?

見た目の老化やお酒が弱くなることにもゴースト血管が関わっているのですね。では、ゴースト血管化しやすい人の特徴とはどのような人でしょうか?

高倉先生 先ほども少し出ましたが、生活習慣の悪い方、あまり運動をしていなかったり、こってりとした食事ばかりとっていたり、喫煙があったりという方々は毛細血管へのダメージも大きいでしょう。 お酒は嗜む程度であれば問題ありませんが、過剰に摂取すると高血糖が起こり、血管に影響を及ぼすことが知られています。今の所毛細血管の状態を簡単にチェックできるツールはないのですが、上記について少しでも心当たりのある方は、気をつけるようにしましょう。ちなみに、毛細血管のケアをすれば2週間程度で、毛細血管の状態に変化が現れるといいます。

ゴースト血管化を防ぐための対策とは?

では、日常生活などで、ゴースト血管にならないようにするには、どうすればいいか教えてください。

高倉先生 先程、申し上げたように、日常生活の改善が前提とはなりますが、血管のアンチエイジングに積極的に働きかける上で鍵となる物質があります。「Tie2(タイツー)」と呼ばれる物質です。 血管の構造の安定化には、「アンジオポエチン1」と呼ばれる物質と「Tie2」の活性化が深く関わっています。いずれも生体内の生理物質ですが、「アンジオポエチン1」については、加齢とともに分泌されなくなってしまいます。一方、「Tie2」は加齢の影響を受けずに発現を続けます。 加齢とともに分泌されなくなる「アンジオポエチン1」の代わりに、「Tie2」を活性化させるものを摂取するという考えにたち、現在、有効と考えられているのが、「ヒハツ」や「桂皮(ケイヒ)です。

ヒハツは東南アジアを中心に自生するコショウ科の植物で、別名「ナガコショウ」や「ロングぺペッパー」とも言われ、古くから香辛料として用いられています。

桂皮は葛根湯エキスなどに入っている物質で、日本の香料名では「シナモン」とも呼ばれます。ヒハツや桂皮を体内に摂取することで、Tie2を活性化できると言われています。

桂皮以外にも、「ルイボスティー」の摂取も同様にTie2を活性化する効果があると言われています。 体の外側から働きかけるというのは、今の所エビデンスはありません。しかし、アーユルヴェーダのように、シナモンをオイルに混ぜてマッサージするといったことはインドなどでは行われているようです。エビデンスの検証はされていませんが、皮膚の老化を防ぐことが経験則的にわかっており、そういった施術が行われているのではないかと考えられます。

 

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