国立がん研究センターの研究で浮かび上がる「食事と健康」の関連性とは?
「健康のためにこの食品がオススメ」といった情報が氾濫しています。その中には科学的根拠が不明なものもあり、どの情報を信じてよいのかよくわかりません。国立研究開発法人の国立がん研究センターでは、「多目的コホート研究」によって日本人の食事と健康の関連性を研究しています。膨大なデータを基に分析し、信頼度の高い研究として注目されています。ここ数年の主な研究成果を紹介します。
野菜・果物、発酵性大豆食品の摂取量が多いと死亡リスクが低下
コホート研究とは、特定の集団を追跡して行う観察研究。例えば、特定の地域に住む5万人を10年間にわたって観察し、その間にどのような病気に罹ったか、または死亡したかを把握して、1人ひとりの食事内容や飲酒習慣などからその要因を分析します。
国立がん研究センターによるコホート研究のうち、食事と健康に関する研究結果を見ていきましょう。
まず、「果物・野菜摂取と死亡リスク」の関連性はどうでしょうか。全国11地域の約9万5000人を20年間にわたり追跡した結果、果物については、摂取量が少ないグループに比べて多いグループでは死亡リスクが約8~9%低いことがわかりました。野菜については、摂取量が多いグループで死亡リスクが約7~8%低かったと報告しています。
果物や野菜をしっかり食べることが健康に大切と言われていますが、それを裏づけるデータですね。
次に「大豆食品、発酵性大豆食品と死亡リスク」について。総大豆食品摂取量と死亡リスクの明らかな関連性は認められませんでしたが、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多い場合、死亡リスクが下がる傾向が見られました。また、納豆の摂取量が多いほど、循環器疾患による死亡リスクが低くなることもわかりました。
男性は乳製品の摂取量が多いと死亡リスクが低下
「乳製品と死亡リスク」の関連性も報告しています。約9万3000人の男女を平均19.3年間にわたり追跡。その間、男性が約1万4,200人、女性が約9,500人亡くなりました。研究結果によると、男性の場合、乳製品の摂取量が多いグループでは、死亡リスクが低いことが明らかになりました。
一方、女性ではそうした関連性が見られませんでした。この背景として、女性は男性と比べて喫煙者や過度な飲酒者が少なく、健康的な生活習慣の方が多いことによって、乳製品の摂取量と死亡リスクの関連性が見えにくかった可能性を挙げています。
「健康のために食物繊維をしっかり摂りましょう」と言われていますが、このことはコホート研究でも明らかにされています。「食物繊維の摂取量と死亡リスク」を分析したところ、男女ともに、摂取量が多いほど死亡リスクが低下する傾向にありました。既に欧米では同様の研究結果が報告されていましたが、日本人にも当てはまることが確認されたわけです。
コーラやジュースなどの「甘味飲料」はほどほどに!
ここからは、多く摂取すると死亡リスクが高まるケースを紹介します。
国立がん研究センターのコホート研究では、「甘味飲料」(コーラ、100%リンゴジュースやオレンジジュース、缶コーヒーなど)に焦点を当てた研究も実施しています。約7万人の男女を17年間にわたり追跡した結果、甘味飲料の摂取量が多いほど死亡リスクが高くなることがわかりました。さらに、循環器疾患や心疾患による死亡リスクについても、同様の傾向が見られました。
食の西洋化が問題視されていますが、コホート研究でもそれを裏づける結果が報告されています。「肉類摂取と死亡リスク」についての研究結果によると、男性の場合、肉類の摂取量が最も少ないグループと比べて、最も多いグループでは死亡リスクが高いことが判明。一方、女性ではそうした関連性は見られませんでした。
コホート研究が裏づける「食事が基本」
健康であり続けるために日々の食事が基本となりますが、国立がん研究センターの研究結果を見ると、まさにその通りだと感じませんか?
長生きするためには、果物・野菜をはじめとする多種多様な食材をバランス良く摂ることが重要です。ぜひ、毎日の食事内容を見直してみてはいかがでしょうか。