エゴマ(荏胡麻)
シソの仲間のエゴマには、健康に役立つさまざまな栄養素が含まれています。葉も種子も食用に利用され、その栄養価の高さが注目されています。健康志向の食材として消費者の認知が広がってきたエゴマについて解説します。
エゴマはシソの仲間、葉も種子も栄養価の高い食材
エゴマはシソ科の一年草。成長すると1mほどの高さになります。エゴマの葉は「青じそ」にそっくりの姿をしていますが、やや丸みを帯びています。種子はシソに比べて大きく、黒っぽい、または茶色っぽい色をしています。
エゴマは葉も種子も、食用として利用できます。エゴマの葉は、韓国では日常的に料理やキムチに使用されることから、韓国料理を通して日本でも注目されるようになりました。
葉には独特の苦味があるため、そのまま食べるよりも、肉料理や魚料理に添えるのがオススメ。また、サラダや和え物のアクセントとして利用することも多いです。近年、日本でも食品スーパーで売られるようになり、日頃の食事に利用しやすい環境となっています。
エゴマの種子はすりつぶして、薬味として使用したり、みそと混ぜて「エゴマみそ」として使用したりします。
また、種子から搾られるエゴマ油は、健康オイルとして人気があります。エゴマ油は栄養価の高さから、健康の維持・増進の面でも注目され、エゴマ油の健康食品やサプリメントも売られています。
もともとエゴマ油は、平安時代には「灯明油」に用いられていたという記録が残っています。その後、江戸時代までは紙・傘などの塗料としても利用されてきました。
原産地は東南アジア、日本では全国各地で栽培
エゴマの原産地については諸説ありますが、一般的には東南アジアと言われています。アジアでは古くから、インドや中国なども含む広い地域で栽培されてきました。
日本でも各地で栽培され、地域によっては「えぐさ」「あぶらえ」「じゅうねん」などと呼ばれます。
主な産地を見ると、岩手県・宮城県・福島県などの東北地方、広島県・島根県・鳥取県といった中国地方をはじめ、全国各地に散らばっています。やせた土地でも育てやすいことから、過疎化によって発生した耕作放棄地を活用して、エゴマを栽培するケースも見られます。
エゴマの栄養的な特徴
α-リノレン酸、βカロテン、カルシウム…
エゴマの葉には、βカロテンやビタミンEなどが多く含まれています。ミネラル類はカルシウムや鉄などが豊富です。
一方、エゴマの種子の主成分は脂質。その内訳を見ると、n-3系脂肪酸のα-リノレン酸が60%前後、n-9系脂肪酸のオレイン酸が15%前後、さらにn-6系脂肪酸のリノール酸も多く含んでいます。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、エゴマ油100gあたりにα-リノレン酸が58g、オレイン酸が16g、リノール酸が12g含有されています。このうち、α-リノレン酸とリノール酸は「必須脂肪酸」で、人の体内で合成できないため、食品から摂取する必要があります。エゴマ油ならばスプーン(小さじ)1杯で、1日に必要なα-リノレン酸を摂ることができます。
エゴマの健康効果
高めの血圧や悪玉コレステロール対策に
エゴマの健康効果の研究は、主に健康食品業界を中心に進められてきました。そうした研究成果を基に、機能性表示食品(消費者庁が所管)として、エゴマ油に含まれるα-リノレン酸を機能性関与成分とした商品が登場しています。
機能性表示食品として販売するには、企業が安全性と機能性を証明して消費者庁へ届け出ることが必要で、一定レベルの科学的根拠が求められます。今のところ、「血圧が高めの方の血圧を下げる機能」と「血中の悪玉(LDL)コレステロール値を低下させる機能」を訴求した商品があります。
ところで、どのような試験によって効果を証明しているのでしょうか。例えば血圧の場合、α-リノレン酸を含む食品の摂取グループと、含まない食品(プラセボ食品)の摂取グループを比較して調べます。α-リノレン酸のグループはプラセボ食品のグループと比べて、収縮期血圧と拡張期血圧が有意に低くなったと報告しています。
現時点では機能性表示食品として存在していませんが、これまでの研究によって、血流改善作用や抗アレルギー作用、認知機能に対する作用なども期待されています。ただし、これらの作用については科学的根拠が十分ではないため、今後の研究の進展が待たれるところです。
エゴマ油はサラダやみそ汁などにも
エゴマの葉は食品スーパーの店頭に並ぶようになり、日頃の料理に利用する方も増えています。焼肉やハムを巻いたり、冷奴やサラダに添えたりするなど、さまざまな用途があります。
また、エゴマ油はサラダをはじめ、みそ汁、和え物、野菜ジュースなど幅広く使えて、手軽にα-リノレン酸を摂取できます。
あなたの健康の維持・増進に役立つエゴマ。ぜひ、毎日の食事に活用してみましょう。