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食ロス減、必要な人のもとへ食料を届ける"海外のフードバンクの取組"

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YOKARE編集部
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食ロス減、必要な人のもとへ食料を届ける"海外のフードバンクの取組"

包装の破損や過剰在庫、印字ミス、食べ残し、売れ残りや期限が近いと理由で食べることができる食品を大量に廃棄してしまう「食品ロス」。一方で、十分な食糧を入手できずに飢えと隣り合わせで生きる人がたくさんいます。「フードバンク」はそんな課題を解決するための活動を行う団体です。近年広まりを見せるフードバンクにはどんな団体があるのか、海外の例を交えて紹介します。

食品ロス問題とフードバンク

食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまっている食品のこと。包装の破損、印字ミスなどの規格外商品や売れ残りなど工場や店舗で発生する食品ロス、食べ残しなど飲食店の食品ロス、購入後に期限切れを迎えてしまう家庭の食品ロスなどがあります。

2011年に国際連合⾷糧農業機関(FAO)が発⾏した「Global Food Losses and Food Waste」によると、途上国よりも先進国の方がムダにされる食料が多いことが示されています。

このような問題を解決するため、食べられるのに販売できない規格外品などを食品企業から引き取り、福祉施設などへ無料で提供する活動を行う「フードバンク」と呼ばれる団体が存在します。フードバンクの活用によって、食品を提供する企業側は廃棄処理コストや環境負荷を低減できる他、社会貢献による企業イメージや従業員のモチベーション向上といったメリットを享受することができます。一方、食品の寄贈を受ける施設や個人は、食品確保によって健康的な生活を送れるようになる、食費を抑え生活費を捻出できるようになるといったメリットに与ることができます。

フードバンクの広まり

日本では2000年以降からフードバンクが設立されはじめました。2019年11月時点で110団体が活動しており、その数は直近の4年で倍増しています。しかし団体数の増加ほど食品取扱量は増えておらず、増えるニーズに対応しきれていません。その背景あるのは人手や運営費の不足、事務所や倉庫、配送用車両などのインフラ整備の問題、行政との連携が取れていないことなどの要因があります。

 

日本では「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が2019年5月31日に公布、10月1日に施行されました。この法律では食品ロスの削減を推進の指針などが定められ、国や都道府県、地区町村の責務が示されるとともに、⾷べられる⾷品については、廃棄することなく、できるだけ⾷品として活⽤するようにしていくことが明記されています。これにより今後日本のフードバンク活動はさらに活発化していくことが予想されます。

海外のフードバンク

アメリカやヨーロッパにおけるフードバンク活動は日本のその歴史よりも長く、実績も多くあります。海外の代表的な活動や、最近の事例を見てみましょう。

「Feeding America - アメリカ」

最初のフードバンクは1967年のアメリカ・アリゾナ州で生まれました。ジョン・バン・ヘンゲルという一人の男性が店から出る廃棄食品を求めるシングルマザーと会話したことがきっかけで、捨てられてしまう大量の食品を必要とする人が受け取れる場所を作ろうという意識が芽生え、フードバンク活動がはじまりました。現在はFeeding Americaとして全米約200のフードバンク団体を統括。毎年4,000万人以上の人がFeeding Americaのネットワークを利用しています。2017年にはGoogleとのパートナーシップで無料アプリ「Meal Connected」をローンチ。このアプリ内で食料品店などが廃棄予定の食材を掲載すると、独自のアルゴリズムで最適な食料倉庫や支援先を選定しマッチングされるというもの。現在2,500以上の組織がこのアプリを定期的に利用しています。

「FareShare - イギリス」

FareShareは1994年にホームレス支援団体を母体にイギリスで設立されたフードバンク。現在はイギリス国内に12拠点を置いて活動中。食品製造企業やスーパーマーケットなど小売店から食品の提供を受けています。学校の朝食クラブ、高齢者の昼食クラブ、ホームレスのシェルター施設など、約11,000のコミュニティや施設、93万人以上の人に食品を届けています。FareShare は活動の主目的に「食の貧困対策」と「食品ロス削減」を掲げ、イギリス国民への啓発活動も実施。また研修施設を設け、食品衛生に関する知識の教育やフォークリフトの取り扱いに関する職業訓練も行うことで、調理する料理の栄養価を高めたり、フォークリフトの資格を得て職を得たりする機会を創出しています。

「Scholars of Sustenance - タイ」

東南アジアでは毎月1億食以上もの食事が廃棄されているといいます。中でも観光・ビジネスの中心地として栄えるタイには多くのホテルや飲食施設がありますが、購入された食品の35%が処分されています。2000年にタイの首都バンコクで創業したScholars of Sustenanceは、2016年にインドネシアでも事務所を設立し、東南アジアのフードバンク活動を牽引する存在です。2019年は食料再分配の量を2倍に増やすこと、物流のキャパシティを増強することを目標に掲げて活動し、その結果、ホテルビジネスや小売店など105の事業者が食料ドナーとして参加し、31トン以上の食品が必要なコミュニティに再配布されました。またこれにより約60トンのCo2排出量削減にも貢献しています。

フードバンクの活動を応援することは、持続可能な未来に近づく一歩

最近では世界的に新型コロナウイルスの影響を受ける中、米ディズニー社が地元フードバンクへ未利用食品の寄付を行うニュースなどが話題になりました。日本でも農林水産省が中心となり、小中学校の一斉休校で学校給食がストップしたことにより発生する未使用食品を有効活用するため、フードバンクへの寄付を促進する動きがみられました。2030年にゴールが設定されているSDGsでも、飢餓をゼロにすることや、人や国の不平などをなくすことなど、食品ロスに深く関わる目標が掲げられています。世界中の国が目指す持続可能な2030年の世界まであと10年。食品ロスを減らすと同時に食べものに困っている人へ届けるフードバンクの活動を応援することは、持続可能な未来に近づく一歩です。

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