肌の皮膚常在菌、進む研究。菌数が多いほど肌が粗い?!
19世紀後半、ドイツの医師ロベルト・コッホは、皮膚表面に常在する細菌を観察し、皮膚にも細菌の集団が存在することを明らかにしました。
これが、細菌叢(マイクロバイオーム)研究の始まりと言われています。その後、20世紀初頭には、フランスの細菌学者ルイ・パスツールによって、腸内にも様々な細菌が存在することが発見されました。
肌の常在菌より発見されるのは遅かった腸内細菌叢(腸内フローラ)ですが、20世紀後半から急速に進歩しました。世界各国で、腸内細菌叢の研究が進み、腸内環境が私たちの健康に大きく影響していることが明らかになりました。
現在では、皮膚の常在菌も皮膚の健康や美容に重要な役割を果たしていることと、注目されています。今回は皮膚に存在する常在菌叢について取り上げます。
ニキビも菌のバランスの起因するもの
身近な皮膚の常在菌について、わかりやすいのはニキビ。例えば、アクネ菌がニキビの元凶と考えられています。通常は、アクネ菌は主に皮脂腺のある毛包(毛穴)に生息し、皮膚を弱酸性に保つ働きがあり、通常は皮膚を保護する働きをしています。
皮脂の過剰分泌、毛包の閉塞により、アクネ菌が増殖しやすくなります。増殖したアクネ菌が皮脂を分解する過程で生じる脂肪酸やその他の代謝産物が、周囲の組織に炎症を引き起こします。
つまり、皮膚の常在菌は、皮膚の健康を維持するための重要なバリアとして機能します。正常な皮膚の微生物叢は、病原菌の侵入を防ぎ、炎症を抑える役割があります。
菌数が多いほど肌が粗い
コーセーの研究では、皮膚常在菌の数が多い人は少ない人に比べて「肌が粗い」、「毛穴が多い」、「赤みが強い」など、一部の肌状態と菌数に相関が確認されました。
皮膚常在菌は健常な皮膚ではその人特有の比率を保った皮膚細菌叢を形成されています。常在菌比率は人ぞれぞれで安定しているため、常在菌比率で肌状態を説明するには限界があると考えられていました。
今回のコーセーの研究では、皮膚常在菌の数に着目しました。
研究から、菌数は1cm2あたり数百個から数十万個と人によって幅広く、多い人と少ない人では100倍以上の菌数の差があることが分かりました。
菌数が多かった上位53名を、少なかった下位53名の肌状態と比較したところ、肌の粗さのスコアが大きく、毛穴が多いことが分かりました。これは肌の凸凹や毛穴が多い肌の方が、常在菌が住みやすいためである可能性があります。また、菌数が多い人の方が、肌の赤みが大きいことも分かりました。
常在菌が多いとなぜ赤みや毛穴が多くなるのか?
常在菌やその代謝産物によって肌の炎症が引き起こされやすいためではないかと考えられます。皮脂量についても、菌数が多い人の方が数値は大きく、皮脂が常在菌の栄養源になっていることなどが示唆されました。皮脂量は加齢とともに減少することが知られていますが、年代別の解析においても菌数が多い方が、皮脂量が多い傾向が認められました。