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腸内細菌が認知症に関与する?口腔内の菌と脳の関係も研究が進む

カラダ
YOKARE編集部
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腸内細菌が認知症に関与する?口腔内の菌と脳の関係も研究が進む

Tie2(タイツー)・リンパ・血管研究会は10月22日、第12回学術集会「血管・リンパ管バリアからの未病対策」をコモレ四谷タワーコンファレンスで開催した。

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 佐治 直樹先生が登壇し、「腸脳相関と口腔機能」と題して講演を行った。
臨床現場で認知症の治療と予防に取り組んできた佐治先生は、腸内細菌と脳の関係に加え、歯周病と脳の関係について、研究成果をもとに認知症の予防に向けた今後の可能性について解説された。

これまでは、細菌といえば善玉か悪玉かといったことが注目された。一方、近年は腸と脳が互いに影響を及ぼしあっていることから「腸脳相関(gut-brain axis)」という概念が提唱されるようになり、注目を集めている。

「腸脳相関」はテレビでも取り上げられて、視聴者からの関心度の高いトピックスとなっているそうだ。

認知症は中年期の対策が世界的にも注目されている

佐治先生が所属するもの忘れセンターの診療圏は、車もしくは電車で1時間くらいの愛知県内で、年間1000人くらいの新規の患者が訪れるという。

認知症は、記憶障害もあり日常に困っている状態を指す。その前段階にMCI(軽度認知障害:Mild Cognitive Impairment)がある。MCI(軽度認知障害)は、物忘れの認識がある状態だが、日常生活は送れる。MCI(軽度認知障害)の段階で抗体療法が導入されるため、早期の発見がカギとなる。軽度認知障害の前段階は健常な状態となるが、健康な状態でも脳の中では変化が起きている。

「健康な状態でも脳の中にはアミロイドβやタウたんぱく質が溜まっています。健康な段階で異常なたんぱくの蓄積を遅らせたいということが話題になっています。また、生活習慣病がある人はアミロイドβが蓄積していることもあり、生活習慣との関係も研究が盛んになっています。どういった人が認知症のハイリスクになるかといったことも研究が進められています。」と佐治先生は説明する。

WHOも「認知機能低下および認知症 のリスク低減ガイドライン」を公開している。

WHOガイドラインで示された12の認知症の要因は、下記の通りである。

  1. 身体活動による介入
  2. 禁煙による介入
  3. 栄養的介入
  4. アルコール使用障害への介入
  5. 認知的介入
  6. 社会活動
  7. 体重管理
  8. 高血圧の管理
  9. 糖尿病の管理
  10. 脂質異常症の管理
  11. うつ病への対応
  12. 難聴の管理

「認知症への寄与度としてはアミロイドβの蓄積がかなりの存在感をはなっていますが、著名な科学雑誌「Lancet」からも、修正可能な認知症のリスクについての論文が出版されています。2017年版は中年期のリスクは3つだったが、2020年版になると5つになり、2024年版では高LDLコレステロール血症と視力障害が新しい因子として追加され10項目となっています。」と世界的に中年期のリスクが注目されていることを説明した。

中年期(18歳~65歳)の危険因子が取り除かれた場合の認知症の症例の割合減少
危険因子 寄与危険割合
難聴(Hearing loss) 7%
LDLコレステロール値の高さ(High LDL cholesterol) 7%
うつ病(Depression) 3%
外傷性脳損傷(Traumatic brain injury) 3%
運動不足(Physical inactivity) 2%
糖尿病(Diabetes) 2%
喫煙(Smoking) 2%
高血圧(Hypertension) 2%
肥満(Obesity) 1%
過剰なアルコール摂取(Excessive alcohol consumption) 1%

年齢や遺伝的な要因そのものを変えることは難しい。しかし、健康状態のうちに生活習慣などで改善できる部分に早くから取り組むことは、認知症リスクの低減につながる可能性がある。

「認知症の診療領域では、いかに早く未治療の方を見つけ、抗体薬を導入するかが一つの鍵になっています。症状が進んでしまうと抗体療法の適用からも外れてしまうこともあるので、気がついた時にいかに早く診療につなげるかが今の課題です。」と佐治先生は話す。

腸内細菌や歯周病菌は脳にも影響する?

「腸脳相関」は、腸から脳への伝達と、脳から腸の伝達の両方があり、腸から脳という観点では、パーキンソン病、精神疾患との関係が報告されている。大阪大学の研究では脳動脈瘤との関与も報告され、細菌と疾患との関連性は研究が広がっている。

腸内細菌や歯周病菌は、ニューロインフラメーション(神経炎症)を引き起こし、全身の炎症として脳へつながる。認知症との関連としては、腸内細菌が変化を起こすことで、炎症を起こすバイオマーカーが増加し、炎症を起こして、脳内にアミロイドβが蓄積されるという研究も報告された。

5年前の2021年、科学誌『Nature』の「How gut microbes could drive brain disorders」という論説では、腸内細菌が脳のコントローラを持っている印象的なイラストが掲載された。

腸内細菌がどう脳を変化させるのかーー神経を介した伝達、ホルモンなどの内分泌系、腸内細菌が代謝する代謝産物などの経路があり、経路が特定できることで、疾患への対策が取れるようになるため、研究が盛んになっている。

佐治先生の研究チームも、腸内細菌と認知機能との関係を調べている。

佐治先生が率いる研究チームでは、もの忘れ外来を受診した方を対象に認知機能検査や頭部MRI検査などを実施し、検便を収集して分析を行った[※1]。
「アンモニアなどいくつかの代謝産物は認知症と強い相関があり、乳酸は逆相関がありました。」と佐治先生は腸内細菌の代謝産物は認知機能と関連が研究からわかったと言う。

さらに、食事内容と腸内細菌、認知症との関係についても研究が行われた[※2]。認知症のない人は認知症の人より日本食スコアが高く、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取していた。

認知症のない人の食事

歯周病の菌が腸に流れてつくのではないかと考えられている。
歯周病は、ストレス、タバコ、食習慣、歯石、歯並び、歯磨きなどの要因で悪化する疾患だ。歯周病と糖尿病、心血管疾患などとの関連が研究されており、脳血管疾患や認知症との関係にも注目が集まっている。

特徴的な歯周病の菌「ジンジバリス菌」があると脳血管障害になるリスクが高いこともわかっていて、研究対象になっているそうだ。

私たち生活者においてポイントとなるのは、歯の定期的な検診だ。
「小学生くらいまで歯科検診があり、若年期は定期的な検診の機会がなくなり、中年期になると歯周病の検診が定期的にやってきます。定期的な検診がない若い人に歯周病が増えていることが課題になっています。」と歯周病になる前の若年期に働きかけが必要ではないかと話した。

歯周病があると、菌が血管へ侵入し、炎症を起こして脳血管障害などの脳リスクを高める、あるいは炎症を活性化して 脳内のアミロイドβの蓄積を形成するという報告もある。こうした研究から、歯周病の予防・治療が認知症リスクの低減につながる可能性が示唆されている。


参考資料

※1 もの忘れセンターの佐治直樹 副センター長らが、腸内細菌が代謝する物質(代謝産物)と認知症が関連することを見出しました 特に糞便中の乳酸は認知症において低値を示しました

※2 もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連を見出しました

 

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