花祭りでお釈迦様の像に甘茶をかける理由とは
みなさんは「花祭り」というのを聞いたことがあるでしょうか。お花が一面に咲き揃う花の祭典や、なんだか可愛らしいお祭りを想像しがちですが、花祭りはお釈迦様の誕生を祝う行事のことです。花祭りでは「甘茶」というお茶が使われているのが特徴です。
花祭りの起源から、花祭りで使われる甘茶の意味について紹介します。
花祭りとは
冒頭でも紹介したように、花祭りとはお釈迦様の誕生をお祝いする行事です。花祭りはおもにお寺でおこなわれ、お堂を花で飾った「花御堂」を置き、そこに立つお釈迦様の像に、柄杓を使って甘茶をかけるのが特徴です。甘茶の意味を紹介する前に、まずは花祭りについて説明していきましょう。
花祭りはいつおこなわれる?
花祭りは、一般的にはお釈迦様の誕生日である4月8日に行われます。旧暦の4月8日や月遅れの5月8日に花祭りを開催するお寺もあります。主に関東地方では4月8日、関西地方では5月8日に開催されるのが特徴です。
花祭りの正式名称は「灌仏会(かんぶつえ)」と言います。他にも「降誕会」、「仏生会」、「浴生会」、「龍華会」、「花会式」という名称が使われています。
キリスト教ではイエス・キリストの誕生を祝うように、仏教でもお釈迦様の誕生を祝う日が設けられているのです。
花祭りの起源
もともとはインドで行われていた灌仏の式が由来とされています。
インドの西暦1~2世紀ごろの仏教詩人で、アシュバゴーシャという僧侶の書いた釈迦伝記叙事詩「ブッダチャリタ」の詩句に由来していると言われています。
インドでは八大龍王が天界の飲料である「ソーマ・アムリタ」の雨を灌いで香華を焚き、香水で沐浴灌水する「灌仏の式」が行われていたそうです。インドの「灌仏の式」が後に中国や日本にも伝わったと考えられています。
日本での花祭り
花祭りは灌仏会が正式名称とされていて、「花祭り」という名前は日本特有の言い回しです。華やかな色や香りを持つ花によって、仏を供養するという意味が込められています。
花祭りが最初に始まったのは仏教伝来の頃。飛鳥奈良時代には「仏生会(ぶっしょうえ)」として行われていた行事が、現代は庶民のお祭りとして「花祭り」という名前に変わったと言われています。
花祭りは840年の4月8日に清涼殿ではじめての花祭りが行われたとされ、「承和七年四月八日に、清涼殿にしてはじめて御灌仏の事を行はしめ給ふ」との記録が残っています。
1901年(明治34年年)には、浄土真宗の僧侶・安藤嶺丸が新暦4月8日を「花祭り」と称したという記録があり、のちに庶民のお祭りとして広がっていったとされています。
日本では主にお寺などでおこなわれている行事で、おもに花御堂に立つお釈迦様に、甘茶をかけてお釈迦様の誕生日をお祝いするのが目的ですが、厳格な作法などは特にありません。
お釈迦様の誕生祝い以外にも健康祈願や子供の成長を願うなどのさまざまな意味が込められて行われます。
お寺によっては白い象の置物が見られることもあります。
お釈迦様の母である摩耶夫人が、夢の中で6本の牙を持つ白い象を見たことで、お釈迦様を解任したという言い伝えがあるため、象は神聖な動物として扱われているのです。
また、白い象は雨の意味を表し、祭りで使うことで五穀豊穣を祈願しているとも言われています。
なぜ甘茶?その意味は?
花祭りではお釈迦様の像に甘茶をかける風習がありますが、そもそも甘茶とはなんでしょうか?ここからは甘茶の意味について解説します。
甘茶とは
甘茶とは、ガクアジサイやヤマアジサイに似た「アマチャ」という植物で作ったお茶のことを表しています。
落葉低木であるアマチャは、アジサイ科アジサイ属の植物で、見た目はヤマアジサイに似ていますが、分類学上はヤマアジサイの変種(亜種)となります。
アマチャの木は寺院の庭先などによく生えていますが、実はアマチャについては詳しいことはわかっていません。自然界で自生はしていないという説と、わずかに自生しているという説があるのです。
甘茶はこの「アマチャ」という植物の葉を乾燥させて茶葉にし、煎じて作ります。甘い紅茶のような味わいが特徴で、甘味料としても使われています。
甘茶が使われている意味とは?
なぜ花祭りでは甘茶が使われているのでしょうか。まずお釈迦様の誕生から辿っていきましょう。
お釈迦様の誕生
お釈迦様は紀元前463年の4月8日にインドのルンビニーという場所で誕生しました。お釈迦様はこのとき、「天上天下唯我独尊 三界皆苦我当安之」という言葉を唱えたと言われています。
ルンビニーは仏教の四代聖地とされている場所であり、灌仏会が「花祭り」という名前で呼ばれているのは、お釈迦様がルンビニーの花園で生まれたことが由来とされています。
甘茶が使われている意味
お釈迦様が誕生したときには、9匹の竜が現れ、甘露の雨を降らせたと言われています。この甘露で産湯を満たし、お釈迦様の母である摩耶夫人の手助けをしたという伝説があるのです。
花祭りで「甘茶」が使われている理由は、甘茶をこの甘露に見立てたことから始まったとされています。
江戸時代までは五色水という香水を使っていたのですが、徐々に甘茶を使うのが主流となりました。
お釈迦様の誕生を祝い、供養するために使われる甘茶ですが、甘茶にはさまざまな用途があります。甘茶は、民間療法や厄除け、お供え物として使われてきた歴史もあります。花祭りで甘茶が使われるようになった背景には、人々にとっても良い効果をもたらしてくれることにも起因しているのです。
花祭りは、お釈迦様の誕生を祝うとてもおめでたい行事です。厳格なイメージの強い行事ですが、花祭りは健康祈願や厄除けなどの意味合いもあり、子供たちが行列を作って並んだりするとても明るくにぎやかなお祭りです。
花祭りを通して仏教に気軽に参加することができるので、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか?