米ぬか発酵物、腹部脂肪を減少させる効果を確認
食品・化粧品・医薬品などの原料メーカーである丸善製薬株式会社はこのほど、ヒト試験を実施し、米ぬか発酵物に腹部の脂肪を減少させる効果があることを突き止めたと発表しました。
機能性関与成分「HMPA」を含む米ぬか発酵物を開発
丸善製薬は、米ぬかを発酵させて、「3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)propionic acid(HMPA)」という成分を含む米ぬか発酵物の開発に成功。HMPAは、クルクミンやγオリザノール、ヘスペリジンなどのポリフェノール類を摂取した際に生じる代謝産物の一つです。
代謝産物とは、ヒトの体の中で酵素などを介した化学反応によって生じる物質のこと。これまでのさまざまな研究により、HMPAは健康効果の分子実体であることが示唆されています。今回の研究は、米ぬか発酵物に含まれるHMPAを健康効果に関与する成分(機能性関与成分)と同定し、実施されました。
健康な日本人の成人男性を対象としたヒト試験
では、健康効果を確認するために、どのような試験を行ったのでしょうか。
研究グループは、20歳以上65歳未満の健康な日本人男性を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(RCT試験)を実施。HMPAを含む米ぬか発酵物の摂取により、ヒトの腹部の脂肪に及ぼす影響を検証しました。
RCT試験は信頼性の高い試験方法として、医薬品の効果を確認するために用いられます。食品分野では国の機能性表示食品制度や特定保健用食品(トクホ)制度で、機能性を確認するために必須とされています。
今回の試験では、被験者(試験の参加者)を2つのグループに分けて、一方のグループには米ぬか発酵物100mgを含む食品を摂取してもらい、もう一方のグループには米ぬか発酵物を含まないプラセボ食を与えました。両グループの被験者とも、自分自身がどちらの食品を摂取しているのかは知らされていません。
それぞれ12週間にわたって継続して摂取してもらい、グループ間の腹部脂肪面積の変化を比較しました。
その結果、摂取開始から12週間後に、米ぬか発酵物100mgを含む食品を摂取したグループはプラセボ食のグループと比べ、腹部脂肪面積が有意に低下したことがわかりました。
安全性の問題は見られず
今回の研究では、米ぬか発酵物を含む食品の安全性についても評価しました。
安全性の評価は、問診、身体計測、生理学的検査、血液検査、尿検査の結果と、被験者の生活日誌をもとに試験責任医師が行いました。
その結果、ヒト試験に参加した被験者で副作用は認められませんでした。試験食品(米ぬか発酵物を含む食品)との因果関係が認められる有害事象も見られなかったといいます。また、血液生化学検査などでも、安全性について考慮すべき変化は認められなかったと報告しています。
このように、ヒト試験で問題となる所見や有害事象は見られず、米ぬか発酵物を含む食品を12週間にわたって継続摂取することについては、安全性に問題はないと考えられると指摘しています。
機能性と安全性が確認されたと考察
研究グループは研究結果から、機能性関与成分HMPAを含む米ぬか発酵物の摂取により、腹部の脂肪が低減される効果が示唆されるとともに、長期摂取による安全性にも問題がないことが示されたと考察しています。
査読付き学術誌に研究成果を掲載
今回の研究は、経済産業省戦略的基盤技術高度化支援事業費(JPJ005698)の助成によって実施されました。戦略的基盤技術高度化支援事業は、中小企業や小規模事業者が大学などの研究機関と連携して行う研究開発、試作品開発、販路開拓を支援するというものです。
また、試験の成果については、査読付き論文として学術誌『薬理と治療』に掲載されています(「米ぬか発酵物含有食品の摂取による腹部脂肪への影響―ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験―」)。