有機農産物の魅力とは?注目される理由とは?
これまで日本では爆発的な広がりを見せなかった有機農産物市場ですが、SDGs(持続可能な開発目標)に沿った取り組みとして、社会的な関心が高まっています。消費者が有機農産物に抱くイメージは、従来の「安全安心」「健康的」から「環境保全」へと変化しつつあります。
有機野菜やオーガニック野菜とは、農薬や化学肥料を使わずに栽培したもの。正確には、農林水産省が定めたJAS規格に適合していて、有機JASマークが付いた野菜を指します。
国内の有機農産物市場は拡大傾向に
日本の有機農産物市場は約1,850億円と推計されます。米国の5兆円超、ドイツ・フランス・中国の1兆円超と比べると、まだまだ小規模ですが、日本も拡大傾向にあります。
市場が拡大しているのは、なぜでしょうか。
その1つに、Uターン・Iターンで農業に就く人の増加があります。Uターン・Iターン組の2~3割が、付加価値の高い有機農業に取り組んでいます。
2020年からのコロナ禍も影響しました。自宅で過ごす時間が増え、家庭で食事を作る機会も増加。できれば農薬を使っていない野菜を食べたいというニーズがあり、市場拡大につながったとみられています。
さらに、食品の輸出拡大という国の政策でも、有機農産物は重要品目の1つ。現在のところ、有機農産物を原料に使用した醤油や茶が主力となっています。
農水省、2050年までに有機農業の面積を100万haに
国内有機農業にとって、大きな動きも出ています。農林水産省は、2050年までに有機農業の取り組み面積を100万haに拡大する方針を打ち出しました。これは全体の25%に当たる広さです。
現在の面積を40倍以上に拡大させるわけですから、実現すると“有機大国”として名乗りを上げることになりそうです。
生物多様性や地球温暖化防止に有機農業が貢献
SDGsへの取り組みに有機農業が貢献できることも、有機農産物に対する消費者の関心が高まっている理由の1つです。
有機農業の推進は、生物多様性と地球温暖化防止に一役買います。有機農業の田畑では、農薬を使用する一般的な田畑と比べて、水鳥やカエルなどの生物が多くいます。絶滅種といわれる植物(レッドリスト植物)が多いという報告もあります。
また、有機農業は化学肥料を使用しないため、化学肥料の製造工場で発生する二酸化炭素の削減にもつながります。
有機農産物=「安心安全」「健康的」は間違いだった?!
従来、有機農産物は「安心安全」「健康的」というイメージで販売されてきました。しかし、一般的な栽培方法による農産物と比べて、より安全、より健康的というための科学的根拠は十分でありません。
含有成分を比較した試験も多数行われてきましたが、大雑把に言えば、有機農産物と一般的な農産物とで大きな違いはありません。
ビタミンCの含有量については、一部の野菜で有機農産物の方がより多く含んでいるという調査結果があります。これは、微生物によって土壌中のビタミンCの量が高まることなどが影響していると考えられます。お茶の水女子大学の研究グループが行った試験によると、ビタミンCの含有量が多かったのは、キュウリやダイコンなどでした。
風味についても、さまざまな比較試験が行われていますが、一概にどちらが優れているとは言えないようです。
「エシカル消費」を目指す賢い消費者が有機農産物を支持
前述したように、有機農産物市場が拡大していけば、生物多様性や地球温暖化防止に貢献することにもなります。このため、社会的課題の解決に取り組む事業者を応援する「エシカル消費」を目指す消費者は、有機農産物に関心を寄せています。
現在、有機農産物に対する評価は、SDGsへの貢献という観点から高まっています。「環境保全に何かできることはないかしら?」と思っている方や、子どもの食育の教材を探している方にとって、有機農産物は最適の選択肢となります。