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オムツがたい肥に、バス停で藻類を培養……「サーキュラースタートアップ東京」の成果発表会が開催

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オムツがたい肥に、バス停で藻類を培養……「サーキュラースタートアップ東京」の成果発表会が開催

サステナビリティ支援事業などを手がけるハーチ株式会社は、サーキュラーエコノミー分野に特化した創業支援プログラム「サーキュラースタートアップ東京」の成果発表会を2024年3月7日に開催しました。今回はその発表会の中から面白い取り組みをピックアップしてご紹介します。

サーキュラーエコノミー分野における創業支援プログラム「サーキュラースタートアップ東京」

「サーキュラースタートアップ東京」はハーチ株式会社が展開しており、40 名以上のメンター・アドバイザー(起業家や投資家 、大学教授、企業のサーキュラーエコノミー専門家)らによる講義や面談を通じた支援など、サーキュラーエコノミー分野における創業支援プログラムです。

2024年4 月から開催した第1期プログラムの参加チーム(16組24名)からは新規創業に加えて、複数の事業提携、自治体実証実験、資金調達、助成金獲得などの具体的成果が生まれているそう。2024年11月から2025年3月までの第2期プログラムには、東京や千葉、大阪、福岡などが所在地の「ごみ堆肥からコスメ・スイーツ開発」、「AI でごみリユース促進」、「屋外広告を服に再生」など、多彩な循環型ビジネスを手がける、もしくは創業・事業化を目指すスタートアップ企業や大学などのチームが参加しています。今回はこのチームが関連企業や投資家、研究機関向けのプログラム成果発表会を行いました。

多くのプレゼンテーションでは、「コンポスト」について語られていますが、「コンポスト」とは「堆肥(compost)」や「堆肥をつくる容器(composter)」のことです。

使用済オムツが果物や野菜を育てる?株式会社Gaiapost「堆肥化できる生分解性の幼児用オムツ」

最初に登壇したのは昨年11月に創業した株式会社Gaiapostの八神実優さん。同社はゴミをなくして土を作る生分解性の幼児用オムツの開発に取り組んでいます。

幼児用オムツ

幼児用オムツを生分解性の素材で作り、コンポストを通じてたい肥にし、その土を野菜や果物を育てるときに利用していく循環を目指しています。

コロナ禍前に湖の水辺に生えている草をかやぶき屋根に使うなど自然の営みと人間が密接に繋がっている佐渡の暮らしに感銘を受けた八神さん。都市にいても人は自然の一部だと感じられるよう、人間の排泄物も循環の輪に入れるのではないかと考え、本商品の開発をスタートしました。

八神さん自身も1歳の娘さんがおり、毎日大量のオムツを廃棄している現実に直面しています。使用済オムツの排出量は約230万トン(2021年)で社会問題にもなっています。使用済オムツは水分を含んでいて重たいこと、複合的な素材でできていること、排泄物と分離が必要なためリサイクルが困難などさまざまな課題があります。オムツゴミの多さに負担や申し訳なさを感じる親御さんも多く、保育園でも1日約100枚もオムツを廃棄しておりコストを懸念する園も。そこで同社はオムツのたい肥化により、新たな処理方法を開発。大阪大学の生分解性高吸水性ポリマー技術を活用し、布おむつカバーとセットで使う生分解性のオムツパッドを作っています。

ターゲット像としては環境への意識があり、ゴミの多さにストレスを抱えていたり赤ちゃんの肌に優しいオムツを探している親御さん、オーガニック思考やコンポスト設置に取り組む保育園、焼却施設の閉鎖・合併を検討していたり離島などでごみの処分場所が限られていたりする自治体を想定していると話しました。実際に事前ヒアリングでは循環型社会への取り組みをオムツという日常生活に組み込めるため、子どもの教育にもよく、親御さんの関心は非常に高いことがわかったそうです。

ビジネスモデルとしては親や保育園に対して月額のサブスクリプションでオムツパッドの提供や、配送と同時に回収を行う仕組みの実現化などを検討しています。2025年は試作品の使用や実証実験を重ね、来年には量産化の準備や回収・たい肥化のオペレーション構築などを経て商品化を目指していると締めくくっていました。

都市部で余る食品コンポストのアップサイクルを教育現場へ

次の登壇したのは、都市部で発生する食品コンポストを新たな資源として活用するアップサイクル事業を手掛ける李哲揆さん。都市部の食品廃棄物問題は深刻で、食品廃棄物の3割が都市圏から出ており年間処理コストが年間2450億円。生ごみは燃えづらいので油と一緒に燃やすため環境負荷が高く年間排出CO2は300万トンだとも言われています。

そこで雑多な食品廃棄物はコンポスト化して微生物の発酵や完熟を経て安定したたい肥にする方法が主流になっています。しかし都市部ではコンポストを作っても活用先がないことが現実

都市部には農地が少ないため配布先が確保できなかったり運搬にコストがかかったり原料が様々なので成分が不安定だったり。立川市でも学校給食と剪定枝を混ぜたコンポストを市民に無料配布をしても大量に余っているとか。

李さんが検討しているのは都市部におけるコンポストのアップサイクル事業。これまで「土に撒くもの」という認識だったコンポストを、「都市から出てくる有償な有機物資材」と再定義し、さまざまな取り組みに活用しようと考えています。そもそもコンポストは木質バイオマスと類似していることから木として使える可能性があることから、コンポストとプラスチックを混合・溶解して融合物とすることで新たなプロダクトに再活用することを考えています。さらに生分解性プラスチックを用いることで再生可能な資材にすることもできます。

李さんはこうした食品コンポストを使って教育事業に参入することを目指しています。たとえば小学校1年生時に作るアサガオの栽培キット。食品コンポストと生分解性プラスチックを混ぜたものをポットや支柱に、食品コンポストを成分調整したものを培土として活用すれば100%食品コンポスト由来の栽培キットが完成するのではないかと考えています。今後はコンポストが他のことにも使えることを教育現場で発信し、コンポスト由来のプロダクト使用に拡大していきたいと締めくくりました。

「MORACK BUS STOP」はバスを待ちながら藻類を培養しながら電気も自給!

「藻類」を活用した CO2 削減、タンパク質の利用、堆肥化、循環型農業の実現、藻類オイルを使った化粧品原料の開発を手掛けるGMG コーポレーションの長末雅慎さんが登壇しました。持続可能な社会の実現に向け、藻類が持つ可能性を最大限に活かすプロジェクト「MoRack」を行っています。

出典:GMGコーポレーション

「MoRack」は藻類を培養するシステムですが、藻類の出口を作って可能性を広げるプラットフォームの役割を担いたいと考えています。2050年の循環型未来への実現に対して3つのフェーズに分けて目標設定をしており、フェーズ1となる「MORACK BUS STOP」では、バス停に藻類の水槽とソーラーパネル、そしてデジタル広告パネルの設置を考えています。

CO2を回収しながら電気の自給、さらに情報共有の場にもなり、さらに災害時の避難拠点にもなり得ます。バス停で夜間の明かりやスマホの充電、情報共有やコミュニティの醸成、CO2吸収や災害対策などさまざまなメリットになる可能性を秘めています。

同社では黒字化に向けてメンテナンス費用や初期費用、広告収入の目標額を試算。黒字化に向けて関連企業や投資家の方々に開発費用の資金調達やバス会社への協力、デザインや広告などをお願いしていました。

今回の成果発表会ではこのほかにもAI で粗大ごみのリユースを促進、粗大ごみを削減できるプラットフォームの構築や洗浄・配送・回収をフルサービスで行う使い捨てと変わらない体験で環境貢献につながるリユーザブルカップ、マッチングサービスによる持続可能な水産業の実現など環境課題解決のためのユニークな事業構想がたくさん発表されていました。今回の発表の中から商品化や具体的な施策に繋がるのか、期待したいところです。

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