最適な睡眠時間は?遺伝子レベルで決まっている睡眠タイプ
人は、その生涯の約3分の1を眠って過ごします。人生を約75年とすると、一生で実に25年間もの時間を睡眠に費やすことになります。
睡眠時間は、食事に費やす時間と比較してもずっと長い時間です。しかし、近年では生活の多様化により睡眠に与えられる時間も時間帯も不規則になり、睡眠不足、不眠など睡眠にまつわる様々な問題が出てきています。
ここでは、睡眠に目を向け、睡眠の本質と睡眠タイプをご紹介して行きます。
人はなぜ眠るのか?
「人はなぜ眠るのか?」「眠らなくてはならないか?」ということを理解していきましょう。人だけではなく、動物はみんな眠ります。ただし、脳を持った動物または神経節という脳に近い器官をもった動物に限ります。
魚類は外敵から身を守るために脳を左右交互に休ませ常に警戒しています。ちなみにキリンは外敵からの警戒で20分~1時間ほどしか睡眠をとらないそうです。
動物によって、睡眠のとり方は異なりますが、眠らないと死んでしまうということは共通のようです。
現在、睡眠は身体を休息させるのみではなく、脳の休息、さらには能動的に脳のメンテナンス作業と、情報の整理をする役割りがあると考えられています。
例えば、脳では老廃物の処理は血流だけでなく、脳脊髄液と呼ばれる細胞間隙を満たす液体の流れによって行われています。そして、脳の老廃物の処理は、ほとんどがノンレム睡眠中に行われるという結果も示されているそうです。
最適な睡眠時間
「人は一体何時間眠れば良いのか?」ということに関しては、絶対的な基準はありません。
睡眠時間の必要性は個人によって大きな差があります。そして、個人が感じる眠気は睡眠不足のバロメーターの役割りを果たします。
健康な人であれば、眠気は脳が質的または量的な睡眠不足を訴えているということ。しかも、睡眠の必要性にはかなりの柔軟性があります。
例えば、どうしても成し遂げないといけない仕事があれば、人は眠りを犠牲にして働くでしょう。眠りを犠牲にした状況でもかなりの能力を人は発揮することが可能です。
つまり、睡眠には融通が利くということ!
もちろん、無理したあとで埋め合わせる必要があり、長く覚醒が続いた時ほど次の睡眠は普段よりも深く、長くなるのが通常です。
これを、睡眠の恒常性(一定の状態に保ちつづけようとする傾向のこと)と言います。こうしたことを含めて「翌日、眠気を感じずに、すっきりと過ごせるだけ眠れば良い」というのが、専門家の見解です。
「何時間寝なくちゃ!」と考えることは、逆に睡眠に不安を持ちこみ、眠りに悪影響を及ぼしかねないので、あまりこだわらない方が良いでしょう。
ノンレム睡眠とレム睡眠
睡眠には、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があり、この2つの睡眠はまったく異なるものです。
睡眠時間の2割はレム睡眠で、8割がノンレム睡眠です。
ノンレム睡眠は、一般的に脳の休息の時間だと考えられています。脳のエネルギー消費と神経細胞の活動は一日のうちで最低になります。体温、血圧、心拍数は下がり、消化器系の機能が亢進します。
一方、レム睡眠時の脳は、覚醒時より活発に活動しています。それも難しい数学の問題を解くなど知的な活動をしている時よりも活発に活動しているそうです。
夢を見るのはこの時期で夢が記憶に残るのは、レム睡眠時に脳が活動しているからだと考えられています。
正常な人の睡眠では、まずノンレム睡眠に入り、深い睡眠まで一気に達し、1時間半から2時間後にレム睡眠へと移行します。このサイクルを一晩の間に4~5回繰り返します。
一番、深い睡眠が取れるのは1、2セット目です。3サイクル目から浅く、時間が短くなります。そのため、寝入りばなの3時間で深い2セットがきちんと取れれば脳はかなり休まります。
遺伝子レベルで決まっている睡眠タイプ
睡眠について少し理解できたところで、実は人は通常、昼に活動的で夜に休息(睡眠)をとる動物ですが、そのタイミングは人によって少しずつ違うのです。
体内時計によって朝が得意な人と夜が得意な人がいます。
研究者によって少しずつ定義が異なりますが、この違いをクロノタイプといい、50%程度は遺伝的に決定されています。
クロノタイプは個人が生まれつき持っている体内時計の特徴を反映したものです。主なクロノタイプは朝型、夜型、昼型、超・夜型の4つに分けられます。
この分類は眠気が大きく関わっています。では、睡眠タイプの特徴をそれぞれ見ていきましょう。
昼型(中間型)タイプ
- 全人口の15~20%がこのタイプになります。
- このタイプの方は昼に能力が最大限に発揮されます。
- お昼に眠気がなく、昼寝が必要ない。睡眠時間は7時間程度で大丈夫。
- 就寝時間は22時くらいで起床時間は5時半~6時くらいがベスト
- 運動など体を動かすのに適した時間帯は17時~18時くらい
- 集中力を必要とする難しい仕事には8時~12時の間に取り組むのが良い
- 特徴的な性格は、楽天的かつ、現実的で前向きな思考の持ち主ですが、現実的に物事を見ている。現実逃避や自己否定が少ないタイプ。
朝型タイプ
- 全人口の50%以上がこのタイプです。
- 朝から昼にかけて1番能力を発揮する時間帯です。
- 午後から少し眠くなってくるため、昼寝を挟むのが効果的
- 睡眠時間は7時間以上必要で、それ以下だと日中眠くなってしまう
- 基本的に親切でオープンな性格、明るく楽しいことが大好き
- その反面で、意外と人見知りで緊張しいな面がありますが、仲良くなるとよくしゃべるタイプ
- 就寝時間は23時くらいで起床時間は7時くらいがベスト
- 運動など体を動かすのに適した時間帯は午前中
- 集中力を必要とする難しい仕事には10時~14時の間に取り組むのが良いでしょう。
- 夜は頭が働かないので、仕事では無駄に残業せず早めに寝て翌朝取り組む方が効率的です。
夜型タイプ
- 全人口の15%~20%がこのタイプです
- 夜行性で、朝はぼんやりしてますが、夜になるにつれ集中力が上がってくるのがこのタイプ
- 睡眠時間は7時間程度必要です
- 気分屋、感情で行動しがちな面があります
- 創造性が高いクリエイティブな一面も持ち合わせています。
- 就寝時間は0時前後、起床時間は7時~8時くらいがベストです
- 運動など体を動かすのに適した時間は18時くらい
- 集中力を必要とする難しい仕事には17時~0時の間に取り組むのが良いです。夜にかけてパフォーマンスが上がってきます。
- このタイプは、無理に朝活しようとしてもエンジンがかかりません。朝はあまり重要な仕事や取り組みはしない方が良いでしょう。
超・夜型タイプ
- 全人口の10%程度しかいない希少なタイプです
- 天才肌の人に多いタイプ
- かなりの夜型なので、睡眠時間は6時間程度で十分
- 睡眠時間が少なくても平気なのがこのタイプの大きな特徴です
- 神経質で内向的な面が強く、注意深いです。
- 職人気質で完璧主義、頭を使った知的な仕事を得意とします
- 非常に希少なクロノタイプで、自分で事業を起こしたり、研究者など好きなことを突き詰めていくような職が向いています
- 就寝時間は23時過ぎ、起床時間は6時過ぎくらいがベスト
- 運動など体を動かすのに適した時間帯は8時過ぎくらいの午前中
- 集中力を必要とする難しい仕事には15時~21時の間に取り組むのが良いです
人にとって、とても重要な睡眠についてご紹介しました。
ご自身の睡眠タイプに合わせ、最大限のパフォーマンスが出来るよう、質の良い睡眠をとるよう心がけてみてはいかがでしょう?